Comet LakeマイクロアーキテクチャCoreプロセッサ

最終更新:2020/08/20

次期メイン・ストリーム向けCPUであるComet LakeマイクロアーキテクチャのIntel Coreシリーズ・プロセッサ、及びIntel 400シリーズ・チップセットについて。

Comet Lake-S/T デスクトップ・プロセッサ

2020年4月30日、Comet Lake-S/Tことデスクトップ向け第10世代Coreプロセッサが発表された。これでComet Lakeマイクロアーキテクチャのプロセッサの第一弾はすべて出揃った。この後に追加される可能性もあるけど、ラインナップを見たところCore i3にK型番がないくらいで、第9世代にあったナンバーはほぼすべて揃っているように見える。しかも、そのK型番であったi3-9350Kも日本にはまとまった数が輸入された形跡はなく、日本市場への影響は皆無と言っていい。

トピックとしては、すべてのグレードでハイパー・スレッディング(HT)化されたこと。一旦はHT化されながらもHTが廃止されたi3もHTが復活することになった。第9世代のi9-9900Kがi7-10700Kに横滑りし、第9世代では高嶺の花だった8コア/16スレッドCPUが$374で手に入るようになる。そして、i9-10900Kが新たに物理10コア/20スレッドCPUとして追加された。

第9世代までの流れだと、製造プロセスが14nmで変わっていないので、物理コアが増えると価格も同じくらいスケールアップしていて、ハイエンドCPUほど高騰する傾向にあった。i9-9900Kの日本での売り出しは6.8万円くらいだったと記憶している。ところが、i9-9900Kの$488~$499という価格に対し、i9-10900Kの価格は$488で据え置きとなり、実質の値下げだ。実際の日本市場での価格は7.2万円からスタートだったけど、売り出し4千円アップくらいで物理コアが2つ増えるなんていうのは少し前のインテルだったらありえなかったことだ。

これには、AMDがCPUコアとメモリ・コントローラを独立させてチップレット構成にするという離れ業を使いながらも7nmプロセスの製造に成功し、Intelと同価格帯で4コアも多い製品を投入してきたことが大きいだろう。Ryzen 9 3900Xの12コア/24スレッドやRyzen 9 3950Xの16コア/32スレッドの衝撃は自作PC界隈を大いに賑わせた。今回のIntelの思い切った価格設定から、第8世代まで支配していた一般消費者市場を奪われつつある危機感が伝わってくるようだ。

やはり、開発や価格の健全な競争が起きないと消費者にとって安くて良い製品は生まれてこないという現代経済の法則を改めて証明した格好だ。

  • 共通仕様
    • Intel UHD Graphics 630(F型番除く)
    • DDR4-2933(i9、i7)、DDR4-2666(i5、i3)×2ch 最大128GB
Comet Lake-S/T デスクトップ・プロセッサ
プロセッサ
ナンバー
ベース
クロック
TB 2.0
シングル/オール
TB 3.0 TVB
シングル/オール
コア/
スレッド
TDP
i9-10900K 3.7GHz 5.1/4.8GHz 5.2GHz 5.3/4.9GHz 10/20 125W
i9-10900KF
i9-10900 2.8GHz 5.0/4.5GHz 5.1GHz 5.2/4.6GHz 65W
i9-10900F
i9-10900T 1.9GHz 4.5/3.7GHz 4.6GHz N/A 35W
i7-10700K 3.8GHz 5.0/4.7GHz 5.1GHz N/A 8/16 125W
i7-10700KF
i7-10700 2.9GHz 4.7/4.6GHz 4.8GHz 65W
i7-10700F
i7-10700T 2.0GHz 4.4/3.7GHz 4.5GHz 35W
i5-10600K 4.1GHz 4.8/4.5GHz N/A N/A 6/12 125W
i5-10600KF
i5-10600 3.3GHz 4.8/4.4GHz 65W
i5-10600T 2.4GHz 4.0/3.7GHz 35W
i5-10500 3.1GHz 4.5/4.2GHz 65W
i5-10500T 2.3GHz 3.8/3.5GHz 35W
i5-10400 2.9GHz 4.3/4.0GHz 65W
i5-10400F 2.9GHz 4.3/4.0GHz
i5-10400T 2.0GHz 3.6/3.2GHz 35W
i3-10320 3.8GHz 4.6/4.4GHz N/A N/A 4/8 65W
i3-10300 3.7GHz 4.4/4.2GHz
i3-10300T 3.0GHz 3.9/3.6GHz 35W
i3-10100 3.6GHz 4.3/4.1GHz 65W
i3-10100T 3.0GHz 3.8/3.5GHz 35W
  • TB:Turbo Boost
  • TVB:Thermal Velocity Boost
  • TDP:Thermal Design Power(熱設計電力)

Comet Lake-H 高性能モバイル・プロセッサ

Comet Lake-Hはモバイル用ながら物理8コアを備え、デスクトップ用プロセッサと遜色ない処理能力を持っているので、デスクトップPCを設置するスペースがなく、出先で作業することも多いクリエイターにとっては重宝するだろう。ただ、ラインナップとしては第9世代と同じで、あまり変わり映えはしない。トピックとしては、ターボ・ブースト・マックス3.0やサーマル・ベロシティ・ブースト(Thermal Velocity Boost)が実装されたことだろうけど、体感するほどの差はないかもしれない。

発表された時には、i9-10980HK以外のプロセッサにはターボ・ブースト・マックス3.0やサーマル・ベロシティ・ブーストは使えないということになっていたけど、現在のIntel Arkを調べると、i7も使えると記載されている。

  • 共通仕様
    • Intel UHD Graphics
    • DDR4-2933×2ch 最大128GB
Comet Lake-H 高性能モバイル・プロセッサ
プロセッサ
ナンバー
ベース
クロック
TB 2.0 TB 3.0 TVB コア/
スレッド
TDP
i9-10980HK 2.4GHz 5.3GHz 5.1GHz 5.3GHz 8/16 45W
i7-10875H 2.3GHz 5.1GHz 4.9GHz 5.1GHz 45W
i7-10850H 2.7GHz 5.1GHz 4.9GHz 5.1GHz 6/12
i7-10750H 2.6GHz 5.0GHz 4.8GHz 5.0GHz
i5-10400H 2.6GHz 4.6GHz N/A N/A 4/8 45W
i5-10300H 2.5GHz 4.5GHz
  • TB:Turbo Boost
  • TVB:Thermal Velocity Boost
  • TDP:Thermal Design Power(熱設計電力)

Comet Lake-U 省電力モバイル・プロセッサ

便宜上、「省電力」としたけど、いわゆる一般的なモバイル・プロセッサのラインナップ。既に実装されたノートPCや小型PC(Intelの商品名では「NUC」)のベアボーンが各社から発売されている。Ice Lakeとの差別化が難しいところだけど、内蔵グラフィックスがUHD Graphicsのままで、その映像能力に特段の進歩がなく、過去の筐体設計を流用できるために価格を控え目にできることがメリットといったところか。

より先進的で洗練されたグラフィックスを搭載したモバイルCPUを使いたいということであれば、Intel初の量産型10nmプロセスで製造され(過去にCanon Lakeで少量生産されたことはある)、Iris Graphicsを搭載するIce Lakeを選ぶとよいだろう。もっとも、10nmプロセスCPUの量産の足がかりという色合いも濃く、今のところはこだわりの問題という部分はあるのだけれど。

  • 共通仕様
    • Intel UHD Graphics
    • DDR4-2666、LPDDR3-2133×2ch 最大64GB
Comet Lake-U 省電力モバイル・プロセッサ
プロセッサ
ナンバー
ベース
クロック
TB 2.0
シングル/オール
コア/
スレッド
TDP
i7-10710U 1.1GHz 4.7/3.9GHz 6/12 12.5/15/25W
i7-10510U 1.8GHz 4.9/4.3GHz 4/8
i5-10210U 1.6GHz 4.2/3.9GHz
i3-10110U 2.1GHz 4.1/3.7GHz 2/4
  • TB:Turbo Boost
  • TDP:Thermal Design Power(熱設計電力)

Comet Lake-Y (Amber Lake) 超省電力モバイル・プロセッサ

ナンバリングは第10世代のものに変わっているけれども、14nm+プロセスのAmber Lakeをベースにしているので、第8世代の焼き直しという感は否めない。デスクトップ向け全モデルが、消費電力増加につながるHTへ舵を大きく切ったので、超省電力プロセッサは方向感を失った感もある。今後はHTを省略するなどしてタブレットPCなどで長時間駆動を目指したほうがよいのかもしれない。

  • 共通仕様
    • Intel UHD Graphics
    • LPDDR3-2133, DDR3L-1600×2ch 最大16GB
Comet Lake-Y 超省電力モバイル・プロセッサ
プロセッサ
ナンバー
ベース
クロック
TB 2.0
シングル/オール
コア/
スレッド
TDP
i7-10710Y 1.2GHz 4.5/3.2GHz 4/8 4.5/7/9W
i5-10310Y 1.1GHz 4.1/2.8GHz 5.5/7/9W
i5-10210Y 1.0GHz 4.0/2.7GHz 4.5/7/9W
i3-10110Y 1.0GHz 4.0/3.7GHz 2/4 5.5/7/9W
  • TB:Turbo Boost
  • TDP:Thermal Design Power(熱設計電力)

Intel 400シリーズ・チップセット

Comet Lake-S/Tが発表されたと同時に、400シリーズ・チップセットの情報も開示され、まずはフラッグシップであるZ490マザーボードが各社から発表された。全体的には300シリーズ・チップセットと大きく変わってはいないけど、2.5ギガビット・イーサネットやWi-Fi 6(IEEE 802.11ax)への対応など、着実に歩みを進めている。しかし残念ながら、PCI Express 4.0の対応は見送られ、AMDのX570チップセットに水をあけられたままという形になった。

Z490/Q470/W480

まず、フラッグシップであるZ390とZ490を比較してみる。HSIOのマップに変更はなく、300シリーズ・チップセットとほぼ同じと考えていいようだ。Q470はエンタープライズ向けのオーバークロック非対応版チップセット。今回初めて登場したW480はXeonを運用するワークステーション用チップセット。おそらく、これまでサーバー向けC246チップセットが担ってきた役割をコンシューマ向けに変更したものだろう。

USB 3.1がUSB 3.2に変わっているけど、USB 3.2 Gen1x1はUSB 3.1 Gen1、つまりUSB 3.0と同じで、転送速度は5Gbps。USB 3.2 Gen2x1はUSB 3.1 Gen2と同じで転送速度は10Gbps。呼び方の違いだけで転送速度そのものは変わっていない。ただ、運用方法が変わり、それぞれUSBを2本束ねることでそれぞれUSB 3.2 Gen1x2、Gen2x2となり、転送速度の倍加が仕様化された。

Z390とZ490チップセットのHSIO割り当て比較
HSIO Z390/Q370 Z490/Q470注1 W480注1 PCIe
1 USB 3.1 Gen1/Gen2 #1 USB 3.2 Gen1x1/Gen2x1 #1 USB 3.2 Gen1x1/Gen2x1 #1
2 USB 3.1 Gen1/Gen2 #2 USB 3.2 Gen1x1/Gen2x1 #2 USB 3.2 Gen1x1/Gen2x1 #1
3 USB 3.1 Gen1/Gen2 #3 USB 3.2 Gen1x1/Gen2x1 #3 USB 3.2 Gen1x1/Gen2x1 #1
4 USB 3.1 Gen1/Gen2 #4 USB 3.2 Gen1x1/Gen2x1 #4 USB 3.2 Gen1x1/Gen2x1 #1
5 USB 3.1 Gen1/Gen2 #5 USB 3.2 Gen1x1/Gen2x1 #5 USB 3.2 Gen1x1/Gen2x1 #1
6 USB 3.1 Gen1/Gen2 #6 USB 3.2 Gen1x1/Gen2x1 #6 USB 3.2 Gen1x1/Gen2x1 #1
7 USB 3.1 Gen1 #7 PCIe 3.0 #1 USB 3.2 Gen1x1 #7 PCIe 3.0 #1 USB 3.2 Gen1x1/Gen2x1 #1 x2 x4
8 USB 3.1 Gen1 #8 PCIe 3.0 #2 USB 3.2 Gen1x1 #8 PCIe 3.0 #2 USB 3.2 Gen1x1/Gen2x1 #1
9 USB 3.1 Gen1 #9 PCIe 3.0 #3 USB 3.2 Gen1x1 #9 PCIe 3.0 #3 USB 3.2 Gen1x1 #9 PCIe 3.0 #3 x2
10 USB 3.1 Gen1 #10 PCIe 3.0 #4 USB 3.2 Gen1x1 #10 PCIe 3.0 #4 USB 3.2 Gen1x1 #10 PCIe 3.0 #4
11 PCIe 3.0 #5 GbE (LAN) PCIe 3.0 #5 GbE (LAN) PCIe 3.0 #5 GbE (LAN) x2 x4
12 PCIe 3.0 #6 PCIe 3.0 #6 PCIe 3.0 #6
13 PCIe 3.0 #7 PCIe 3.0 #7 PCIe 3.0 #7 x2
14 PCIe 3.0 #8 PCIe 3.0 #8 PCIe 3.0 #8
15 PCIe 3.0 #9 GbE (LAN) PCIe 3.0 #9 GbE (LAN) PCIe 3.0 #9 GbE (LAN) x2 x4
16 PCIe 3.0 #10 PCIe 3.0 #10 PCIe 3.0 #10
17 PCIe 3.0 #11 SATA #0a PCIe 3.0 #11 SATA #0a PCIe 3.0 #11 SATA #0a x2
18 PCIe 3.0 #12 SATA #1a GbE (LAN) PCIe 3.0 #12 SATA #1a GbE (LAN) PCIe 3.0 #12 SATA #1a GbE (LAN)
19 PCIe 3.0 #13 SATA #0b GbE (LAN) PCIe 3.0 #13 SATA #0b GbE (LAN) PCIe 3.0 #13 SATA #0b GbE (LAN) x2 x4
20 PCIe 3.0 #14 SATA #1b PCIe 3.0 #14 SATA #1b PCIe 3.0 #14 SATA #1b
21 PCIe 3.0 #15 SATA #2 PCIe 3.0 #15 SATA #2 PCIe 3.0 #15 SATA #2 x2
22 PCIe 3.0 #16 SATA #3 PCIe 3.0 #16 SATA #3 PCIe 3.0 #16 SATA #3
23 PCIe 3.0 #17 SATA #4 PCIe 3.0 #17 SATA #4 PCIe 3.0 #17 SATA #4 x2 x4
24 PCIe 3.0 #18 SATA #5 PCIe 3.0 #18 SATA #5 PCIe 3.0 #18 SATA #5
25 PCIe 3.0 #19 PCIe 3.0 #19 PCIe 3.0 #19 SATA #6 x2
26 PCIe 3.0 #20 PCIe 3.0 #20 PCIe 3.0 #20 SATA #7
27 PCIe 3.0 #21 PCIe 3.0 #21 PCIe 3.0 #21 x2 x4
28 PCIe 3.0 #22 PCIe 3.0 #22 PCIe 3.0 #22
29 PCIe 3.0 #23 PCIe 3.0 #23 PCIe 3.0 #23 x2
30 PCIe 3.0 #24 PCIe 3.0 #24 PCIe 3.0 #24

注1:Intel 400 series chipset family Platform Controller Hub (PCH) – Datasheet, volume 1 Rev. 002(Intel)

H470/B460/H410

Z490がZ390のマップと変わらないことが判明したので、H470、B460、H410チップセットも300シリーズ・チップセットのマップからある程度推測できる。B460のみ、PCH(チップセット)配下のPCIeレーンの最大数が12から16に増強されているため、B360で使われていなかった9番、10番、25番および26番の4本のHSIOレーンが、PCIe 3.0になっている。また、7番および8番レーンがUSB 3.2 Gen1x1(USB 3.0)に変更され、USBも増強されている。

H410は、マップだけ見ると変化に乏しいけど、H310チップセットではDMI2(5GT/s)だったCPUとのI/OがDMI3(8GT/s)に改められた。この変更は、拡張性を求めない小規模・省スペースのPCシステムをi9-10900のような高性能デスクトップ・プロセッサで構築したい人にとっては力強い味方になりそうだ。もっとも、H410搭載のマザーボードは価格を抑えるために電源回路が小規模になりがちなので、消費電力が軽く150Wには達するi9-10900を全開で動かせるかどうかはまったくの別問題なんだけど。i9-10900を使いたいなら電源回路もそれなりにリッチなH470あたりのマザーボードが無難なところか。

400シリーズ・チップセットのHSIO割り当て
HSIO H470注1 B460注2 H410注2 PCIe
1 USB 3.2 Gen1x1/Gen2x1 #1 USB 3.2 Gen1x1 #1
USB 3.2 Gen1x1 #1
2 USB 3.2 Gen1x1/Gen2x1 #2 USB 3.2 Gen1x1 #2
USB 3.2 Gen1x1 #2
3 USB 3.2 Gen1x1/Gen2x1 #3 USB 3.2 Gen1x1 #3
USB 3.2 Gen1x1 #3
4 USB 3.2 Gen1x1/Gen2x1 #4 USB 3.2 Gen1x1 #4
USB 3.2 Gen1x1 #4
5 USB 3.2 Gen1x1 #5 USB 3.2 Gen1x1 #5
N/A
6 USB 3.2 Gen1x1 #6 USB 3.2 Gen1x1 #6
N/A
7 USB 3.2 Gen1x1 #7 USB 3.2 Gen1x1 #7 N/A x2 x4
8 USB 3.2 Gen1x1 #8 USB 3.2 Gen1x1 #8 N/A
9 PCIe #3 PCIe #3 N/A x2
10 PCIe #4 PCIe #4 GbE (LAN) GbE (LAN)
11 PCIe #5 GbE (LAN) PCIe #5 GbE (LAN) PCIe #5 GbE (LAN) x2 x4
12 PCIe #6 PCIe #6 PCIe #6
13 PCIe #7 PCIe #7 PCIe #7 x2
14 PCIe #8 PCIe #8 PCIe #8
15 PCIe #9 GbE (LAN) PCIe #9 SATA #0a GbE (LAN) GbE (LAN) x2 x4
16 PCIe #10 PCIe #10 SATA #1a N/A
17 PCIe #11 SATA #0a PCIe #11 PCIe #11 x2
18 PCIe #12 SATA #1a GbE (LAN) PCIe #12 GbE (LAN) PCIe #12 GbE (LAN)
19 PCIe #13 SATA #0b GbE (LAN) SATA #0b GbE (LAN) SATA #0b GbE (LAN) x2 x4
20 PCIe #14 SATA #1b SATA #1b SATA #1b
21 PCIe #15 SATA #2 SATA #2 SATA #2 x2
22 PCIe #16 SATA #3 SATA #3 SATA #3
23 SATA #4 SATA #4 N/A x2 x4
24 SATA #5 SATA #5 N/A
25 PCIe #19 PCIe #19 N/A x2
26 PCIe #20 PCIe #20 N/A
27 PCIe #21 PCIe #21 N/A x2 x4
28 PCIe #22 PCIe #22 N/A
29 PCIe #23 PCIe #23 N/A x2
30 PCIe #24 PCIe #24 N/A

注1:Intel 400 series chipset family Platform Controller Hub (PCH) – Datasheet, volume 1 Rev. 002(Intel)
注2:Intel B460 and H410 chipset Platform Controller Hub (PCH) – Datasheet, volume 1(Intel)

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StarTech.com USB3HDCAP HDビデオ・キャプチャ

最終更新:2020/07/29

HDMIの映像出力信号をPCにキャプチャする機器を長らく探していた。主な目的はデジタル家電のシステム操作画面やOSD(On Screen Display)のスクリーン・ショットを撮るためだ。

これまではデジカメを三脚に据え付けてテレビの正面に置き、マニュアル・フォーカスとタイマーを使って手ぶれがないように慎重に撮影していた。画素にピントが合っていると画像にモアレが生じるため、その後、Photoshopなどで少しブラーをかけて修正していた。控え目に言っても手間がかかる。

Windows PCならば、キー操作ひとつでのウィンドウのスクリーン・ショットを撮れるように、デジタル家電の画面もワンタッチで撮影できればいいのに、と考えていたのだ。

機器の選定

ビデオ・キャプチャ・ユニット

当初はI-O DATAのHDMIキャプチャ・ユニットを軸に検討していたんだけど、入力インターフェースがHDMIのみのうえ、電子暗号化された信号はキャプチャできない。他にもAVerMediaやElgatoのビデオ・キャプチャも有名だけど、暗号化されていない信号しか記録できない点は同様。

そもそも、著作権法等の法令順守の観点から、暗号化されているHDMI信号を直接キャプチャできるデバイスは存在しない。そのため、信号に電子暗号であるHDCP(High-bandwidth Digital Content Protection)がかかっていた場合、それを復号(解除)する機器が別途必要となる(後述)。

HDMI入力にこだわっているのかと言われれば、こだわってはいない。デジタルのほうが画質がいいのは当たり前だけど、画面表示がなんとなく伝わればいいのでそんなに高画質は必要としていない。よって、怪しげで不確かな方法でなければ、特にデジタル信号である必要もない。極論、フルHD解像度相当でありさえすれば、アナログ信号からのキャプチャでも問題ない。

デジタルが電子暗号に阻まれてダメならアナログで記録すればいいじゃない!

ということで急浮上してきたのが、StarTech.comのビデオ・キャプチャ・ユニット「USB3HDCAP」。StarTechはマニアックなニッチ需要を拾い上げるPC周辺機器をよく作っているメーカーだけど、一般消費者向けだけでなく、産業用機器も手掛けているため全体的に品質は良く、それほど悪い噂を聞いたこともない。

USB 3.0接続ビデオキャプチャデバイス – HDMI、DVI、VGA | ビデオアダプタ | StarTech.com

USB3HDCAPは4K解像度には対応していないものの、フルHD 1080pまで対応しており、入力信号はHDMI及びDVI-Dのデジタル信号はもとより、VGA(D-Sub)、コンポーネント、コンポジットのアナログ信号にも対応している。そのため、出力側デバイスをほとんど選ばないのが最大の特徴。

もともとは、業務用情報機器やそのソフトウェアの操作方法などのチュートリアル動画を作ることなどを目的に設計されているものだ。

StarTech.com USB3.0接続HDMI/DVI対応ビデオキャプチャー USB3HDCAP
posted with AmaQuick at 2020.04.30
参考価格: ¥27,095 (2020-04-30)
スターテック(STARTECH.COM) (2014-11-18)

HDMI信号VGAコンバータ

上述したHDCPを復号(解除)する機器というのが、ゲーム実況配信などの界隈ではよく知られている「HDMIスプリッタ(分配器)」と呼ばれるもの。入力信号の分配時にHDCPを復号化したうえで、生の信号にHDCPをかけ直さないでそのまま出力側に流すという仕組み。

DVI、HDMI及びDisplayPortのHDCPは、出力側(パソコン、ゲーム機等)と入力側(モニタ、ディスプレイ、テレビ等)を1対1で接続することを前提としており、お互いの機器情報を交換することで信号を暗号化し、ケーブルの途中から信号の内容を盗み見ることができないようにする。したがって、HDMIは、USBと同様に、電源タップのような単純な仕組みのたこ足配線はできないようになっていて、信号線を分岐させるだけでは画面は表示されない。分配、つまり信号を複製する前にHDCPを一度復号することが必要になる。

ただし、この「HDCP解除」という機能は信号分配という主目的のために必要になる副次的なものであるうえ、著作権や商標権、肖像権を含む他者の権利の侵害を助長しかねないものであるため、仕様におおっぴらに書いてあることはまずない。言ってみれば「裏技」のような機能なのだ。

そのうえ、この種の製品は品質管理に問題があることも多く、最初はまともに動いていたようでも、数ヶ月で不調になるなんてこともある。当たり外れも多く、まともに動作する良品が届くまで何度も返品・交換を繰り返すのも覚悟で手を出すものだ。

VGAでビデオ・キャプチャ「USB3HDCAP」に入力するにしても、HDCPに対応しているコンバータが必要になる。そこで、サンワサプライから発売されているHDMI信号VGAコンバータ「VGA-CVHD1」を選んだ。

VGA-CVHD1【HDMI信号VGA変換コンバーター】HDMI信号をミニD-sub(HD)15pinアナログ信号(VGA)と音声信号に変換できる(HDMI to VGA)コンバーター

他にもHDMIをVGAに変換する機器やケーブルはたくさんあるけど、HDCPに対応していないものがほとんどのため、「HDCP対応」とちゃんと書いてあるインテリジェント変換のものを選ぶ必要がある。インテリジェント変換のため、HDMIからVGAに変換することはできるけど、VGAからHDMIに逆変換することはできない。

サンワサプライ HDMI信号VGA変換コンバーター VGA-CVHD1
posted with AmaQuick at 2020.05.01
参考価格: ¥3,330 (2020-05-01)
サンワサプライ (2013-10-01)

導入

USB3HDCAP ビデオ・キャプチャ・ユニット

梱包は非常に簡素で、ボール紙の箱に本体と付属品が無造作に入れてある。USB 3.0ケーブルと、VGAをDVIに変換するアダプタが付属している。USB 3.0の縦に長いタイプBコネクタは初めて見た。S端子コンポーネント端子コンポジット端子を接続するためのケーブルも付属しており、自分で用意しなければならないのはディスプレイのケーブル(HDMI、DVI-DまたはVGA)くらい。

ドライバはアップデート推奨

今時のデバイスにしては珍しく、次の画像のようなドライバやソフトウェアのメディアが付属している。

メーカーのWEBサイトからダウンロードもできるけど、キャプチャ・ソフトウェアの「Stream Capture」だけアップデートしてしまうと調子が悪くなる。具体的には、USB 3.0で接続しているのにUSB 2.0と誤認識されてしまい、映像信号の取り込みが強制的に終了してしまう。

これを回避するには、ドライバを先にアップデートして、PCを再起動してからStream Captureをアップデートする。USB接続とはいえ、汎用機器ではないので、接続すればすぐに使えるというわけではない点には注意。

付属のCDからインストールしたソフトウェアで機能的には必要十分なので、無理にアップデートしないというのもひとつの手だ。高機能なキャプチャ・ソフトウェアが必要ならドライバだけアップデートしてOBSなどのサードパーティ製ソフトウェアを使ったほうがいい。

古いドライバだと、映像出力がフルHDの1080pでも、720pとして識別されてしまう問題(後述)があったけど、最新のドライバに更新すると改善するようだ。メディアに入っているドライバではなく、インターネットからダウンロードしたものを最初からインストールしてもいいだろう。

VGA-CVHD1 HDMI信号VGAコンバータ

次の画像は、HDMI信号VGAコンバータのパッケージ。「変換コンバータ」という語は「変換変換器」と言っているようなものなので、やや引っかかるものがあるけど、横文字を覚えるのが苦手な人もいるのでメーカーもその辺は承知のうえだろう。

5cm四方の小さなデバイスで、入力専用のHDMI端子と、出力専用の映像用VGA端子と音声用3.5mmピンジャックが備えられているだけの簡素な外観。USB 2.0 Mini-B端子もついているけど、これは給電専用でデータの入出力には用いない。更に言えば、HDMIから電源が供給されていればUSBからの給電も実は必要ない。

項目仕様
入力端子HDMI Type A(19pin)×1
USB 2.0 Mini-B×1(給電用)
出力端子ミニD-sub15pinメス×1
3.5mmステレオミニジャック×1
HDCP対応
対応解像度・
対応リフレッシュレート
1920×1080(FHD/1080p)(60Hz)
1600×1200(60Hz)
1680×1050(60Hz)
1440×900(60Hz)
1440×1050(60Hz)
1360×768(60Hz)
1280×1024(60Hz)
1280×960(60Hz)
1280×800(60Hz)
1280×768(60Hz)
1280×720(HD/720p)(60Hz)
1152×864(75Hz)
1024×768(60/70/75/85Hz)
800×600(60/72/75/85Hz)
640×480(60/72/75/85Hz)

接続試験

HDMIをVGAに変換してしまえば、キャプチャの画面にまったく映らないということはまずないだろうとは思ったけど、この種の機器に想定外の出来事は付き物。まずはセオリーどおりに次の画像のとおりに接続して試験してみた。

HDDレコーダ/Blu-rayレコーダからVGAコンバータを経由した接続
(図はあくまでも接続方法を模式化したものであり、コネクタの物理的配置とは異なる。)

キャプチャ・ソフトウェアに表示させてみたら、画面の左端に黒い余白が表示される。「不具合発生?」と思って仕様をよく確認してみたら、HDMI信号VGAコンバータの能力の限界のようで、不具合ではないようだ。

東芝製HDDレコーダ D-M470 のメイン・メニュー
左端に黒い線が映り込んでいる。

パッケージやWEBサイトの仕様の説明には次のような注意書きが書いてあった。黒い余白が出てしまうのはどうやら仕方ないことのようだ。

  • 液晶テレビ、プロジェクター、パソコン用ディスプレイも上記解像度・リフレッシュレートに対応している必要があります。
  • 解像度1920×1200ドット(WUXGA)には対応していません。
  • 上記対応解像度でもリフレッシュレートが異なると正常に表示できないのでご注意ください。
  • パソコン、タブレット以外のHDMI信号入力は正常に出力されない場合があります。(DVDプレーヤー、Blu-rayプレーヤーなど)
  • HDMI信号からアナログVGA信号への信号変換の際にタイミングがずれることで上下左右に黒枠が出る場合があります。
  • 全ての機器で動作を保証するものではありません。

DBR-M3009

まず、東芝製BDレコーダ「DBR-M3009」で試してみた。レコーダの出力は基本的に1080pなので、フルHD(1920×1080)で表示されるものと思っていた。ところが、キャプチャ・ユニットに接続すると、どういうわけか、720pとして識別される。接続している機器はすべて1080pに対応しているので、どこかの経路のデフォルト値が720pになっていることが予想される。細かく切り分けをしてみないと、どこの問題なのかはわからないけど、とりあえず、この接続方法ではいきなり1080pで表示されるわけではないことがわかった。

そこで、キャプチャ・ソフトウェアのプレビューを見ながらBDレコーダのHDMI解像度設定を変更してみることにした。メイン・メニュー > 設定 > 本体設定 > HDMI接続設定 >HDMI解像度設定と選んでいって、「1080p」を選択する。すると、キャプチャ・ソフトウェアでも入力信号が「1920×1080」であることが表示された。

DBR-M3009の設定画面

取扱説明書を共通化できるくらいなので、DBR-M4008やDBR-M2008でもファームウェアはほぼ同じと推測され、挙動は同様のはず。

ドライバ更新推奨
この問題は、ビデオ・キャプチャ・ユニットのドライバをアップデートすると改善することが判明した。ドライバの更新を強くお奨めする。記事執筆時点での最新のドライバ・バージョンは1.1.0.185。

D-M470

次に、東芝製HDDレコーダ「D-M470」でも試してみた。挙動としては、DBR-M3009と同様で、「HDMI解像度設定」をあらかじめ1080pに設定しておいても720pになってしまい、キャプチャのプレビュー画面を見ながら「1080p」に設定しなおす。

本当は他社製のレコーダを使って検証したほうが記事の価値は高まるんだろうけど、機器間の通信の相性や連携機能の都合などもあるので同社製品を選んでしまいがち。他社製のレコーダを購入することがあったら別に検証したいところだけど、VGAに変換してしまえばどこのメーカーでも変わらないような気がする。

ドライバ更新推奨
この問題は、ビデオ・キャプチャ・ユニットのドライバをアップデートすると改善することが判明した。ドライバの更新を強くお奨めする。記事執筆時点での最新のドライバ・バージョンは1.1.0.185。

D-M470の設定画面

HDCPはどこまで有効か

ビデオ・キャプチャ環境を手に入れると、やはり気になってくるのが、HDD/BDレコーダのHDMI出力はどこまでHDCPで暗号化されているのか、ということだ。

考え方にもよるけれど、録画リストや番組表などのタイトル等は単なる文字列でしかなく、放送局と視聴者が共有してこそ初めて意味のあるものであるため、著作性は極めて低く、暗号化する必要はないとも言える。DiXiM PlayのWindows版を使うと、HDCPに対応していない液晶モニタでも番組タイトルくらいは表示されるのがその証左。

そこで、次の画像のようにHDMI信号VGAコンバータを挟まずにレコーダをビデオ・キャプチャに直接接続してみた。

HDDレコーダ/Blu-rayレコーダからVGAコンバータを経由しないで直接接続
(図はあくまでも接続方法を模式化したものであり、コネクタの物理的配置とは異なる。)

結果としては、まったく何も出なかった。レコーダのシステム画面や番組表には著作権で保護されるべき部分は少ないように思えたので、もしかしたら枠くらいは表示されるかもしれないと思っていた。

結果は次の画像のとおりで、レコーダから出力されるHDMI信号はシステム画面かコンテンツ画面かに関わらず、すべてHDCPがかかっていると考えたほうが良いようだ。

キャプチャ例

極力著作権などに問題なさそうな(まったくないわけではない)画面を選んでキャプチャしてみた。遠目に見るとわかりにくいけど、H.264/AVC 5.0~5.7くらい(おおよそ3~4倍モード)で圧縮しているため、動きのある画面ではノイズが相当出ている。

デジタルをアナログに変換した際の劣化も多少はあるだろう。テレビで見る分には鮮やかな白に見える背景も少し青っぽくなっている。画質を調整したくらいではほとんど変化がないので、アナログ入力の限界といったところか。

なお、以下の2例の画像は、Photoshopでトリミングをして黒い余白を切り取り、解像度を半分に落としたうえでJPEGで不可逆圧縮をかけているので、ビデオ・キャプチャの出力そのままではない。

『とある科学の超電磁砲T』 ©2018 鎌池和馬 / 冬川基 / KADOKAWA / PROJECT-RAILGUN T

でも、ビデオ・キャプチャの最大の利点は、デジカメでテレビ画面を撮影した時のように画素がはっきり写ってしまったり、それによってモアレを起こしたり、窓から入った環境光が映り込んだりはしないこと。

後で修正できるとはいえ、画像が斜めにならないようにカメラの画角に気を遣ったりするのも、実際にやってみると結構楽ではない。文字で書くとそれほどでもなさそうに見えるかもしれなけど。

これがケーブルの接続を変更し、プレビューで確認後クリック1回で済んでしまうのだから、それだけでもビデオ・キャプチャを買った価値はあるというものだ。もっとも、デジタル家電のライター稼業でも始めようというのであれば必要経費だけど、個人的な趣味の範囲でやるにはお金のかかる代物ではあるんだけど。

最後におまけ。ファイナルファンタジーVIIリメイクが発売された時期だったため、流れていたTVCMをキャプチャしてみた。ほぼ静止画に近いような画面では当初想定していたよりもかなり綺麗な画面を得られる。

『ファイナルファンタジーVII リメイク 』 ©1997, 2020 SQUARE ENIX CO., LTD. / スクウェア・エニックス・ホールディングス

本記事はハードウェアの性能や使用法が想定どおりかを検証する目的のものであり、テレビ番組や映像ソフトウェアを複製又は録画して違法にインターネット等に公開したり、海賊版を配布したりするなど、著作権や商標権を侵害する意図は一切ない。もし、権利者から指摘があれば当該画像は速やかに削除する。

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参考記事

旧メインPCのリフレッシュ後の性能

最終更新:2020/08/01

リフレッシュしたPCの性能を計測した。性能に関する記述がふたつの記事に分かれてしまったので、ひとつの記事にまとめなおした。

LightWave 2015

例によってLightWave2015でレンダリング時間を計測した。無限五の冷却性能に期待して、長期間電力制限を200Wに設定してコアクロックが4.6GHzで張り付くように設定してみたところ、サーマル・スロットリングも発生することなく、70℃台で完走した。

ハイパー・スレッディングはないものの、物理8コアの性能をいかんなく発揮していて、旧PCでは11分25秒かかっていたものが2分28秒で終わった。なんと、i9-9900Kを搭載したマウスのBTOパソコンの2分12秒にあと16秒まで迫る性能を示した。

LightWave 2015
CPU 総レンダリング時間 ラジオシティ時間 パフォーマンス 備考
Core i7-860 685.2秒(11分25秒) 91.2秒(1分31秒) 1.00倍 DDR3-1333
Core i9-9900K 132.4秒(2分12秒) 21.7秒 5.17倍 DDR4-2666
Core i7-9700K 148.9秒(2分28秒) 21.9秒 4.60倍 DDR4-3600

i9-9900Kは定格95Wで計測したもので、コアクロックは4.2GHzまでしか上がらなかった。マウスのBTOパソコンはCPUクーラーが非力で、コアクロックが4.7GHzになるように設定するとあっという間に90℃を超えてしまい、サーマル・スロットリングが働いてしまうので本来の性能を発揮できていないことが予想される。

BTOパソコンはパーツ交換を前提としていないので、CPUクーラーひとつ交換するにもマザーボードを取り外さなければならなかったり、分解するのは少々面倒だけど、CPUクーラーを風魔弐あたりに換装しようと心に誓った。

3DMark

もはや説明の必要もない3DMarkによるベンチマークのスコア。5954というネットに出回っている6000強というスコアより若干低い結果が出たけど、おそらく画面の解像度が1920×1200だったからか、ELSA製品は速度重視のオーバークロックではないからだと思われる。

PCでゲームはしないので、ベンチの結果は本当に参考程度。3DMarkは色々なベンチを計測できるけど、GeForce GTX 1660 Tiそのものが最新製品というわけでもないのであれこれとベンチを試して他製品と比較したりはしない。

仮想暗号通貨マイニング

3DCGをふんだんに使ったゲームを快適に遊べるかという尺度ではなく、ひたすら単調な計算を繰り返す単純な演算能力(いわゆるGPGPUの能力)を測るのであれば、仮想暗号通貨のマイニングをさせてみると3DMarkとは違った意味でシビアな結果を得られる。ここではイーサリウムで例示している。

MSI Afterburnerを使ってVRAMのメモリ・クロックを+750MHz(DDRなのでクロックの立ち上がりと立ち下がりの両方でデータを転送できるため、データレートは+1.5GHz)ほどオーバークロックし、13GHzにしたうえで消費電力を70%まで絞り、84W(定格120W)くらいでおおよそ28.5MH/sという速度を得られる。

これは1秒間にどのくらいのデータの塊を処理してハッシュ値を算出できるかの効率を示し、ハッシュレートと呼ばれる。「MH」は「メガハッシュ」と読み、暗号化や復号化の計算量のこと。データの塊の具体的な容量はアルゴリズムによって異なるため暗号通貨が異なると同じGPUでもハッシュレートの値は異なるし、同じ通貨でも演算の難易度は変動する。

Quadro P2000はオーバークロックできないので、75Wで15MH/sくらい。それと比較すれば、そこそこ速く、ワット・パフォーマンスも良い。

GeForce GTX1080が同様の設定をして126W(定格180W)くらいで36MH/sほどなので、GPUの数をいとわないマイニング・リグを組むならGTX 1660 Tiのほうがワット・パフォーマンスは良く、効率的に採掘できる。

ただし、日本国内では電気料金が安くなく、ワット・パフォーマンスの良いGPUを選んだとしても2020年現在ではマイニングをすればするほど赤字になるので、ベンチマーク程度に試すくらいにしたほうがいいと思う。

金銭が絡むと厄介事も多く、「あなたも簡単にマイニングできますよ」という甘い言葉で誘惑しておき、実際には演算能力の大半を盗み出し、自分は電気料金や器材に投資することなく仮想通貨だけを詐取するトロイの木馬が組み込まれたマイニング・ソフトウェアをインストールさせる悪質なユーザーもいるので注意が必要だ。

通貨というそれ自体に価値のあるものではなく、自分にも回り回って利益があるものとしては、治療法の確立していない病原体(ウィルス、細菌等)の遺伝子情報から薬剤の効果を分散コンピューティングでシミュレーションして新薬を開発することを目指したプロジェクトのほうが長い目で見ると有益だろう。

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Chromeリモートデスクトップを別ウィンドウで表示する

最終更新:2020/04/28

いつもやり方を忘れてしまうので、備忘録的に。この記事を書いている時点でのChromeのバージョンは81.0.4044.122。

Chromeリモートデスクトップはローカル・アプリケーション版が終息した。リモート・デスクトップがChromeに統合され、ローカル・アプリケーションを起動しようとすると次のような画像が表示されてしまってまったく操作できなくなる。

ローカル・アプリケーション版はChromeブラウザとは独立したインターフェースで動作していたので、Windows標準のリモート・デスクトップのような感覚で使えて便利だった。また、ホスト側が必ずしもWindows 10 Proである必要はなく、Win 10 Homeをホストとして接続できるのも利点だ。

そこで、ひとまずChromeリモートデスクトップの拡張機能を追加したうえで、次の画像のとおりに通常どおりにChromeリモートデスクトップをタブ・ブラウザの中に起動する。

次に、Chromeの右上にある「︙」をクリックし、設定メニューを開く。その中の「Chrome Remote Desktop で開く」を選択する。

すると、Chromeのブラウザからリモート・デスクトップのウィンドウだけが独立し、タイトルバーのデザインが変わる。アプリケーション版Chromeリモートデスクトップと似たようなインターフェースで使用できるようになる。

旧メインPCのリフレッシュ (2)

最終更新:2020/05/19

2019年6月からパーツを集め始め、7月に組み換えたリフレッシュ済み旧PCも半年ほどが過ぎた。古くていつ壊れてもおかしくないような電源を交換し、グラフィックス・カードを追加した。

グラフィックス・カードはなくてもCPUの内蔵グラフィックスで画面は映るのでともかく、電源は不具合を起こした場所によっては過電流や過電圧を吐き出して主要パーツを巻き込んで故障がPC全体に波及してしまうため、交換は急務と言えた。

それほど大きく見た目は変わっていないけど、グラフィックス・カードを追加したのでケース内の密度が増した。グラフィックス・カードのバックプレートの裏側にデザインされた「ELSA」のロゴがLEDに照らされてぼんやり見えるのが格好いい。

電源

電源は自作PCユーザーの間では定評のあるSeasonicのラインナップから、セミモジュラー・プラグイン電源のFOCUS GOLDの650W(SSR-650FM)にした。日本国内の輸入代理店はオウルテック(Owltech)。

AntecのNeoECO Goldシリーズが実はSeasonicのOEMだというのは有名な話で、1万円前後で750W電源が買えるというお得さも手伝って大人気なのは知っていた。

でも、電源ユニット本体はSeasonicグレードなのかもしれないけど、安価なスリーブ・ベアリングのファンを使っていたり、プラグイン用のケーブルの出来があまり良くなかったり、SATA電源プラグの向きが反対だったり、安いのには安いなりの理由があるらしかった。電源にこだわりだすとキリがないんだけど、SSR-650FMはまだ安いほう。

Seasonic FOCUS GOLD 650W(SSR-650FM)の外箱。電源を撮影してもあまり面白くないので、中身の撮影まではしなかった。

電源を替えたところで何か変わるとは思えなかったんだけど、明確に変わった点がひとつあった。

旧電源を使っていた時はCPUクーラーのファンから時々擦れるような音がして結構耳障りだったんだけど、ファンのベアリングがぶれてるのかな、と簡単に考えていた。ところが、Seasonicの電源に交換してからはまったくその音がしなくなったのだ。

旧電源が作られた頃にはまだPWM制御のファンが一般的でなかったせいもあるかもしれないし、交流を整流して直流を出力する電源の電圧には少なくとも揺らぎがあり、やはり品質の差が出る。その辺はさすがSeasonicのGold電源といったところだろう。

次の画像は、取り外した今まで使っていた電源。OVP(Over Voltage Protection)、OCP(Over Current Protection)、OPP(Over Power Protection)、SCP(Short Circuit Protection)といった保護回路を備え、2020年現在も現役として使うには必要最低限の能力を持っている。古くて12Vが2系統ある電源の割には、Core i7-9700Kのオールコア5.0GHzオーバークロック(定格は4.6GHz)に耐えるなど、意外と優秀だった。

mouse computerのネズミの尻尾が出ている旧ロゴが入った500W電源。「Model: MCH500AT」と大きく書いてあるけど、それで通用するのはマウスの中だけ。実際の型式番号は左下に小さく「HEC-500TE-2WX」とちゃんと書いてある。製造会社は存在しているようだけど、日本ではHECの電源は聞かなくなった。一応、80PLUS(Standard)電源。
ATX12V ver2.3 電源供應器::HEC COMPUCASE Enterprise Co., Ltd

Fractal DesignのDEFINE R6は電源が底面配置でファンを上向きにするので気が付いたんだけど、移植当時からファンの回転が不安定だった。いつの間にか、ファンがまったく回らなくなり、さすがに寿命を迎えたと思い、旧メインPCにはあまり電源を入れないようにしていた。

80PLUS GOLD認証取得 高効率高耐久電源ユニット NE650 GOLD
posted with AmaQuick at 2020.04.26
参考価格: ¥9,980 (2020-04-26)
Antec (2017-12-23)

グラフィックス・カード

グラフィックス・カードのメーカーにも色々あるけど、個人的にはELSAの製品が好きで、可能ならばELSAから選ぶことにしている。価格は安くないけど、品質管理が徹底しているため不良品が少なく、安定性に優れているからだ。Quadroで慣れていて信頼しているからというのもある。

他社製品は選別チップを使って最初からオーバークロックしてあるものも多いけど、トリプル・ファンでマザーボードの幅よりも長かったり、2.5スロット厚だったりと大型製品が多い。ELSAはオーバークロックは仕様に含まれていない代わりにファンはハイエンド・モデルでも基本的にデュアル・ファンで2スロット厚以下とコンパクトに設計されているのも自分好みの点だ。

ついでにELSAはLEDで光ったりしないのもありがたい。イルミネーションをつけると電飾が地味な割に点灯を制御できるマザーボードを選んでしまったり、あまり良いことがないのでGPUを光らせることにあまり魅力を感じない。グラフィックス・カードにイルミネーションをつけるなら、SAPPHIREくらいやって欲しいところだけど、ファンそのものが光るグラフィックス・カードというのは驚くほど少ない。

とはいえ、ELSAのGPUは少々価格が高めなのは事実なので、中古で良い物が出ていないか定期的に調べていた。中古というと、新しいものでも大抵GeForce GTX 1050からGeForce GTX 1080あたりのものが多いんだけど、根気よく待っていたらGeForce GTX 1660 Tiの中古が入荷したので他のユーザーが購入する前に注文した。価格的には無印のGeForce GTX 1660の新品よりも安く手に入ったので良い買い物ができた。

中古なので、外箱は少々くたびれている。比較的新しい製品のはずだけど、空き箱の保管方法があまり良くなかったのかもしれない。最近のグラフィックス・カードのドライバはダウンロードが前提で、メディアがついていないので基本的に本体だけあればよく、付属品が欠品していても問題ない。

日本人は中古品が嫌いな人もいるけれど、中古ということはまともに動いていたことは証明済みだとも言えるし、ショップでも動作確認をしているので、初期不良の心配が新品よりも少ないという利点がある。開封したら中古になってしまうので、新品の動作確認はしないのが普通だからだ。

次の画像は、グラフィックス・カード本体を取り出してみたところ。全面真っ黒で直角という潔さと渋さがいい。デザインは性能にあまり関係ないけど、他社製品のような突起の多いデザインは好きではない。見た感じは非常に綺麗で、中古でもまったく問題ないように思える。直角デザインというとあとはSAPPHIREくらいだけど、AMDのGPUしか採用していないのが非常に残念だ。

グラフィックス・カード本体。バックプレートには大きく斜めにはみ出すくらいに「ELSA」と書いてあり、それがなかなか格好良かったりする。ASUSの鋭い目や、MSIのドラゴンのデザインより自分好みだ。
ELSA エルザ GeForce GTX 1660 Ti S.A.C グラフィックスボード VD6979 GD1660-6GERTS
posted with AmaQuick at 2020.04.24
参考価格: ¥37,609 (2020-04-24)
エルザ (2019-06-07)

HDD

ついでにHDDも交換した。DiskStation DS218j(NAS)を8TBまで増強した時に余ったWD Blue(WD40EZRZ)に変更。NASを経由してデータ・ドライブを同期する際に、従来のWD Blue 500GBだとさすがに心許ないので、DAIVに搭載されているHDDと同じ4TBまで増強しておいた。

日立の250GB HDDと、そのバックアップ用に使っていたIDE接続の250GB HDDはそのうち退役させようと思う。さすがに3.5インチにしては容量が少なすぎて他に転用しようがないし、中古で売りに出すには古すぎる。ビックカメラに持っていくとHDDを物理的に破壊してくれるらしい。

Western Digital HDD 4TB WD Blue PC 3.5インチ 内蔵HDD WD40EZRZ-RT2 【国内正規代理店品】
posted with AmaQuick at 2020.04.25
参考価格: ¥8,310 (2020-04-25)
Western Digital (2018-01-01)

新構成

変更後、構成は次のとおりになった。若干古いパーツも混じっているけど、旧メインPCから格下げされたサブPCなので2.5″ SATA SSDでも特に困ってない。

新構成一覧
項目 メーカー 品名 仕様 備考
マザーボード ASRock Z390 Extreme4 Z390チップセット
Intel I219V GbE
Realtek ALC1220
NCT6791D
CPU Intel Core i7-9700K SRELT (P0)
CPUクーラー Scythe Mugen 5 TUF SCMG-5100TUF 無限五 Rev.B
RGB LED仕様
メモリ G.SKILL Trident Z RGB
F4-3600C19Q-32GTZRB
DDR4-3600 UDIMM
19-20-20-40
SK Hynix C-die (18 nm)
グラフィックス1 Intel Intel UHD Graphics 630 DisplayPort 1.2×1
HDMI 1.4×1
VGA×1
グラフィックス2 ELSA GeForce GTX 1660 Ti S.A.C
GD1660-6GERTS
DisplayPort 1.4a×3
HDMI 2.0b×1
新設
SSD crucial BX200
CT240BX200SSD1
2.5″ 240GB SATA3 旧PCから移設
HDD1 Western Digital WD40EZRZ-RT2 4TB SATA3 5,400rpm 交換
HDD2 HGST HDT725025VLA380 250GB SATA 3Gbps 7,200rpm 旧PCから移設
光学ドライブ LG HL-DT-ST GH24NS50 SATA
DVDスーパーマルチ
旧PCから移設
電源 Seasonic FOCUS 650W SSR-650FM 650W 80PLUS Gold
ATX Ver.2.4
EPS Ver.2.92
セミモジュラー
交換
PCケース Fractal Design DEFINE R6 USB-C BKO TG

性能

3DMark

もはや説明の必要もない3DMarkによるベンチマークのスコア。5954というネットに出回っている6000強というスコアより若干低い結果が出たけど、おそらく画面の解像度が1920×1200だったからか、ELSA製品は速度重視のオーバークロックではないからだと思われる。

PCでゲームはしないので、ベンチの結果は本当に参考程度。3DMarkは色々なベンチを計測できるけど、GeForce GTX 1660 Tiそのものが最新製品というわけでもないのであれこれとベンチを試して他製品と比較したりはしない。

仮想暗号通貨マイニング

3DCGをふんだんに使ったゲームを快適に遊べるかという尺度ではなく、ひたすら単調な計算を繰り返す単純な演算能力(いわゆるGPGPUの能力)を測るのであれば、仮想暗号通貨のマイニングをさせてみると3DMarkとは違った意味でシビアな結果を得られる。ここではイーサリウムで例示している。

MSI Afterburnerを使ってVRAMのメモリ・クロックを+750MHz(DDRなのでクロックの立ち上がりと立ち下がりの両方でデータを転送できるため、データレートは+1.5GHz)ほどオーバークロックし、13GHzにしたうえで消費電力を70%まで絞り、84W(定格120W)くらいでおおよそ28.5MH/sという速度を得られる。

これは1秒間にどのくらいのデータの塊を処理してハッシュ値を算出できるかの効率を示し、ハッシュレートと呼ばれる。「MH」は「メガハッシュ」と読み、暗号化や復号化の計算量のこと。データの塊の具体的な容量はアルゴリズムによって異なるため暗号通貨が異なると同じGPUでもハッシュレートの値は異なるし、同じ通貨でも演算の難易度は変動する。

Quadro P2000はオーバークロックできないので、75Wで15MH/sくらい。それと比較すれば、そこそこ速く、ワット・パフォーマンスも良い。

GeForce GTX1080が同様の設定をして126W(定格180W)くらいで36MH/sほどなので、GPUの数をいとわないマイニング・リグを組むならGTX 1660 Tiのほうがワット・パフォーマンスは良く、効率的に採掘できる。

ただし、日本国内では電気料金が安くなく、ワット・パフォーマンスの良いGPUを選んだとしても2020年現在ではマイニングをすればするほど赤字になるので、ベンチマーク程度に試すくらいにしたほうがいいと思う。

金銭が絡むと厄介事も多く、「あなたも簡単にマイニングできますよ」という甘い言葉で誘惑しておき、実際には演算能力の大半を盗み出し、自分は電気料金や器材に投資することなく仮想通貨だけを詐取するトロイの木馬が組み込まれたマイニング・ソフトウェアをインストールさせる悪質なユーザーもいるので注意が必要だ。

通貨というそれ自体に価値のあるものではなく、自分にも回り回って利益があるものとしては、治療法の確立していない病原体(ウィルス、細菌等)の遺伝子情報から薬剤の効果を分散コンピューティングでシミュレーションして新薬を開発することを目指したプロジェクトのほうが長い目で見ると有益だろう。

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JettoBevel – LightWaveプラグイン

最終更新:2020/05/03

オブジェクトの角の面取りや丸めについてはかなり前に触れたことがあるけど、ラウンダー(Rounder)ツールや、LW 11で追加された面取り(Chamfer)ツールでは思ったような加工や正確な加工ができないことがある。

オブジェクトの形状が単純なうちはいいけれど、かなり複雑になってからラウンダーやチャムファーを使うと座標の演算中に処理不能に陥ってモデラーがクラッシュしてしまうことも珍しくない(ミドルレンジの3DCGソフトウェアの限界というか、宿命のようなもので、欠陥とまでは言えない)。

そこで、ネットを調べていたら、JettoBevelというプラグインを知った。最近はYouTubeで使い方の解説動画がアップロードされていることも多く、プラグインの機能をイメージしやすくなった。なお、「Jetto」というのは作者のニックネームのようなもので、特に深い意味はないようだ。

JettoBevelの概要

ベベル(標準機能)

標準機能のベベル(Bevel)では、一度に1段階しかセグメントを増やすことができない。しかも、複数のポリゴンを選択した場合、各ポリゴンごとにベベルがかかってしまうため、実用的でない部分があった。インターフェースが簡便で理解しやすいのは長所。

ベベル・ツール
ベベルツールの数値入力画面。シンプルで解りやすいインターフェースを持つ。シフトとインセットは説明するまでもないだろうけど、その間にある「+ / -」という設定項目はシフト量やインセット量をランダムで増減する範囲を指定するためのもの。機械のようなモデリングよりも、植物のような長さが一定でないものを作る時に使う。

マルチシフト(標準機能)

複数ポリゴンをベベルしたい場合はマルチシフト(Multishift)ツールを使うことになるけど、パラメータが多く難解なうえ、一度に1段階しかセグメントを増やせない特徴は同じ。複数段追加したければ、プロファイルを自分で作成しなければならないなど非常に扱いづらい。

マルチシフト・ツール
マルチシフトの数値入力画面。インセット量とシフト量はベベルと同じなのでまだ理解できるけど、その他のパラメータはいまひとつ理解できていない。

JettoBevelの特徴

LightWaveのモデラーはサブパッチ(キャトマル)によるモデリングに都合が良いように進化してきた部分があり、機械のようなかっちりした形状のモデリングに弱いという問題がある。でも、機械のモデリングをしていると、ベベルを複数セグメントにわたって連続してかけたいという事態や欲求というのは往々にして起こる。

このJettoBevelでは、マルチシフトをベースとして、ベベルのように単純なパラメータを設定するだけで半自動的に複数セグメントのベベルを再帰的に一度に追加可能なうえ、ベベルをかけたポリゴンに更にベベルを続けてかけられるようにインターフェースが工夫されている。

LightWaveは今ではBlenderなどに押されてマイナーな3DCGソフトウェアになってしまったけど、過去には多くのユーザーに支持されていたものなので、ユーザー・プラグインが多数開発されていて、資産として今でも公開されている。

LightWave Assets : Plugins – JettoBevel

JettoBevelを使った角の丸め

まずは簡単な角の丸めをやってみる。次の画像のような直径1mの円柱を用意してみた。

JettoBevelを起動すると、次の画像のようなパネル・ウィンドウが表示される。ここで、ベベルの「Type」を「Circle」に、「Shift」と「Inset」に100mm、「Segment」に「4」と入力する。セグメントの右にある円弧状のボタンはベベルをどちら側に膨らませるかを指定する。

入力が終わると、プレビューで完成後の状態が確認できる。次の画像のように4段階のセグメントを持つ丸みを持ったベベルが追加されているのが判る。

このくらいなら、ラウンダーでも同じことはできる。そこで、先ほどベベルをかけたポリゴンに更にJettoBevelを適用する。設定はほとんど同じで、円弧を反対向きに変えただけ。

適用すると次の画像のようになる。想像どおりの結果なので驚くべきところはないように思えるけど、この時点でラウンダーで同じことを行うのは厳しくなってくる。ラウンダーはあくまでも選択したエッジを丸めるものなので、ラウンダーを適用済みのセグメントをベベルのように追加できるわけではない。

更に2段階、JettoBevelでセグメントを追加して、普通のベベルで円柱を伸ばした状態。棒に溝を切ったような、一見簡単なように見えるオブジェクトではあるんだけど、これと同じようなことを行いたければ、標準機能では回転体ツールなどを利用するなどして、セグメント数などをあらかじめ綿密に決めておかなければならない。

回転体ツールというのは、意外と曲者で、半分の形から最終形を予測しながらモデリングしなければならないため、やってみたら思ったような形にならなかった、というのも珍しくなく、面白いツールではあるんだけど、それほど出番は多くない。

ひとまずディスク生成ツールでセグメントだけ切っておいて、ストレッチ(Stretch)や拡大縮小(Scale)ツールなどを使って直径を調整して綺麗な半円形の溝を作るというのも人間には辛い作業だ。いちいち三角関数を使って電卓で計算しながら縮小率を求める労力を考えるとぞっとしない。できればそういう計算はコンピュータにやってもらいたいところだ。

LightWaveのモデラーは行き当たりばったりモデリングができるのが良いところという部分もあるため、あらかじめ出来上がりを決めてからモデリングを始めるというスタイルがそもそもソフトウェアの特性とマッチしていない。

JettoBevelによる穴の刳り貫き

JettoBevelは、オブジェクトの角をあらかじめ丸めておきたいという目的を叶えるのに十分な能力を持っている。でも個人的には、その真価はおそらく、複雑な形状の穴を開けたい時に発揮されると思っている。

次の画像のように、少し複雑で、複数のポリゴンにわたる範囲に穴を開けたいとする。普通ならば、拡張プラス(Extender)を使ってマイナス方向にシフトさせることで実現するくらいしかないわけだけど、角が鋭角になってしまう。

機械部品の角というのは旋盤やフライス盤で特注で切削したとかでなければ、直角や90度未満の鋭角というのはほとんどありえない。量産性を考慮すると、型ばなれのいいように直角以下の角を作らないようにするのが一般的。鋭角がない部品は同時に安全性にも優れている。したがって、鋭角が多いモデルはいかにも現実に存在しそうにないものになる。

余談
その昔、携帯電話のauが「au design project」という名称でデザイナーズ・ケータイを作っていたことがあり、他のケータイが曲線を多く取り入れた貝殻のような二つ折りデザインを採用していた時代に直角デザインを採用したことがあった。
そのデザインを見たメーカーの担当者がauに「本当に直角で作るんですか? いや、そうですよね、それに意義があるんですよね…」と趣旨には理解しつつも直角加工に難色を示したことが逸話として残っている。
上でも書いたように、直角の部品はプラスチック射出成形機の金型からの型ばなれが悪く、量産性が極めて悪くなるのでメーカーとしては本当は勘弁して欲しかったはず。実際には、メーカーの努力によって直角デザインのケータイを量産することに成功した。その方法は企業秘密にあたるため、今でも明らかにされていない。
その後、それらのauケータイは工業デザインとしての優秀さが高く評価され、MoMAの愛称で知られるニューヨーク現代美術館に永久収蔵品として所蔵されるまでに至っている。

これにJettoBevelを使って、4段階ほど適用してやると、穴の周囲を丸めることができるばかりか、内側に入ったところで底に向かって広がっていく複雑な穴を実現することができる。

こういった形状は昔のF1マシンやジェット戦闘機のエア・インテークによく見られた。過去の自動車や飛行機は操縦系統のほぼすべてを油圧で制御していたため、オイルを冷やすための空気の取り入れ口が数多く必要だった。

現在では操縦系の電子化が進み、燃焼系と冷却系で2~3つ大きい穴が開いているくらいになった。自動車はオイルを冷やす需要が減ったことと空力特性の向上が理由だけど、飛行機には別の事情がある。

エア・インテークは対空レーダーにとても映りやすいため、ステルス性の向上を目的として空気取り入れ口を極力減らし、レーダーの電波がエア・インテークに入り込まないようにする方向に進化している。近年のステルス戦闘機の表面が凹凸が少なくのっぺりしていたり、直角がなく、45度くらいの角が多いのはすべてレーダーに映りにくいようにするため。ただし、空力特性は劣悪で、電子制御であるフライ・バイ・ワイヤがなければまともに飛ぶことすらできない。油圧で代替することもできないため、電子制御系に故障が発生すると即座に墜落してしまうという極めて危ういバランスで成り立っている。民間機の場合はフライ・バイ・ワイヤが三重系統になっているうえ、単位面積あたりの翼面荷重が低いため、滅多なことでは墜落はしない。

上の例のように、単純な円柱などなら三角関数を駆使すればいつかは完成するかもしれないけど、標準機能だけでこのような穴を作ろうとしたら、どうしたらいいのか見当もつかない。少なくとも、電卓で座標を計算していたのではいつになっても終わりそうな気がしない。

作例

まだ完成はしていないけど、JettoBevelを使うきっかけになった作品。ティレル・P34(当時の発音では「タイレル」)というF1史上空前絶後の6輪マシン。投入直後にワンツー・フィニッシュを飾るなど一定の成果を修めたため、F1のレギュレーションに「車両の車輪は4輪まで」という項目を加えさせた伝説が残っており、その強烈なシルエットも手伝って幅広い世代に知られている。スケール・モデルで知られる田宮模型が実車を保有していることでも有名。

基本的に角をとるのが目的なのでどこに使われているのかはわかりにくいかもしれないけど、直角以下の鋭角が目に見えて目立つようでなければJettoBevelの効果は出ていると言える。

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参考記事

VAIO type T (VGN-TT50B) をSSD化

最終更新:2020/05/29

前回の記事ではVAIO type T (VGN-TT50B) にWindows 10がインストールできることを確認した。HDDからのOS起動の遅さも再認識した。

しばらく運用してみたけど、OSの起動の遅さだけはどうにも許容できない。

分解・換装は自分には敷居が高いように思えたので、ネットでSSD搭載のノートPCを探してみたけど、中古でも3~4万円はする。調べた限りではLenovoのThinkPadシリーズがメンテナンス性が高い構造のうえ、分解や部品交換の手順を記したサービス・マニュアルが公開されているため、メモリやストレージの増設や故障時の延命がしやすいらしい。

絶対価格としては決して高額ではないけど、3~4万円でも支払う効果や必要性が十分にあるのか悩んでしまった。要は使う場所を選ばない「可搬端末(コンソール)」が欲しいわけで、高い処理能力や何でもこなせる汎用性を求めているわけではない。

ノートPCの分解にはやや不安があるけれども、10年以上前のPCということで、もし壊してしまってもそれほど惜しくはないし、このまま放置していてもゴミになるだけのものだ。うまくいけばそれはそれで自分の苦手を克服してスキルも上がるというわけで、予算1万円でVAIO type TをSSD化することに決めた。

mSATA SSD

VAIO type Tのストレージは1.8インチのフォーム・ファクタなので、できるだけ小型の規格である必要がある。M.2 SSDでもいいんだけど、Type 2280(22×80 mm)がもっとも普及しているので、Type 2230 / 2242 / 2260といった小型のものは最新規格の割には入手性が良くなく、容量に対して割高なこともある。

そこで、mSATA規格のSSDから選ぶことにした。大きさもおよそ30×50mmと1.8インチHDDよりも十分小さい。メーカーの選択の余地はほとんどなく、メジャーなところではKingstonかTranscendしかない。Amazonの商品検索では聞いたことのないブランドの製品も見つかったけど、価格が安い代わりに性能や既存機器との相性に問題があるようで、選択肢にはなりそうになかった。

Kingstonは無難な製品を作っているという印象があったので、価格が手頃だったこともあり、当初はKingstonで考えていたけど、レビューなどを読むといまひとつ評判が良くない。

TranscendはSDRAMなどでよく聞くブランドではあるんだけど、たまたま使う機会がなかったため自分の中で実績がなく、積極的に選ぶ理由がなかった。ところが、Transcend製のmSATA SSDは非常に評判が良く、Kingstonで問題があった人がTranscendに替えてみたところ問題が解消したため、Transcendを推奨すると断言している記事もあった。

Transcend mSATA SSD 256GB SATA-III 6Gb/s DDR3キャッシュ搭載 3D TLC 採用 TS256GMSA230S
posted with AmaQuick at 2020.04.09
参考価格: ¥6,980 (2020-04-09)
トランセンドジャパン (2019-06-28)
キングストンテクノロジー SSD 240GB mSATA SATA3 3D NAND搭載 UV500 SUV500MS/240G
posted with AmaQuick at 2020.04.10
参考価格: ¥5,920 (2020-04-10)
キングストンテクノロジー (2019-06-28)

現在は後継のM.2に取って代わられてしまったため、mSATAソケットを標準搭載しているマザーボードも見かけなくなった。主な需要は修理用部品くらいしかないマイナーなジャンルの商品になってしまったのでおのずと通販になる。

Amazonから注文したところ、こんな感じのパッケージに入ったmSATA SSDが届いた。内容物が損傷しない程度の強度を持ちながらも簡易的な包装で、裏面にミシン目をつけてあって開封もしやすいように工夫されている。

TranscendのmSATA SSDのパッケージ。日本のPC関連パーツは大きすぎる樹脂製のパッケージをシールで封印したり、ホチキスのような硬い針で固定されていたりして厳重すぎるうえに開封がしにくい傾向があるので、このような工夫を施したパッケージを作っていくといいんじゃないかと思った。使い捨てのプラスチック包装は世界的に削減する方向にもあるわけだし。

mSATA – MicroSATA変換アダプタ

通常、1.8インチ・フォーム・ファクタのHDDやSSDはMicroSATA(μSATA)を採用しているため、mSATAをMicroSATAに変換する基板が必要になる。この種の変換基板は意外に需要があるため数多く出回っているけど、粗悪品が多いのも事実。

この種のパーツは主に中国製で、「Made in China」と書かれているだけで敬遠されてしまう傾向があるけど、有名ブランドのマザーボードやグラフィックス・カードなども今や中国で製造されているものがほとんどなので、ブランド品であるかノーブランド品であるかを問わず、中国製を避けるのはほぼ不可能。要は、品質管理をちゃんとやっているかどうかが重要なわけで、Amazon以外で販売されているところの情報も調べると効果的だ。

いくつかあった変換基板の中で、「NFHK」という聞いたことのないブランドが目に付いた。中国版Amazonとも言えるアリババ社のAliExpress.comで調べてみたところ、インターフェース規格を変換する製品で著名なブランドらしく、かなり手広く手掛けているようだった。

US $1.5 |MSATA ssd 1.8 インチマイクロ SATA mSATA ssd 1.8

ただ、本家では本体が1.5~2.0ドルで売られているもので、日本への配送料は5.0ドルとなっているので、Amazonでの価格の500円分くらいは送料だと考えていいようだ。

mSATA(Mini SATA)→1.8インチmicro SATA変換アダプタ
posted with AmaQuick at 2020.04.10
参考価格: ¥785 (2020-04-10)
mind pc parts

MicroSATAには5 Vの電源入力があるけど、mSATAには3.3 Vの電源入力しかない。mSATAには次の表に示すMini PCIeと共通の52ピンの端子があるけど、フルサイズのSATAでも22ピン(データ 7ピン+電源 15ピン)しか必要としないため、未接続の「NC(Not Connected)」が目立つ。

mSATA及びmini PCIe Cardのピンアサイン
Pin mSATA mini PCIe Card Pin mSATA mini PCIe Card
P1 NC WAKE# P2 +3.3V +3.3V
P3 NC Reserved P4 GND GND
P5 NC Reserved P6 NC +1.5V
P7 NC CLKREQ# P8 NC UIM_PWR
P9 GND GND P10 NC UIM_DATA
P11 NC REFCLK- P12 NC UIM_CLK
P13 NC REFCLK+ P14 NC UIM_RESET
P15 GND GND P16 NC UIM_VPP
P17 NC UIM_C8 P18 GND GND
P19 NC UIM_C4 P20 NC Reserved
P21 GND GND P22 NC PERST#
P23 SATA Differential TX+
based on SSD
PERn0 (RX-) P24 +3.3V +3.3Vaux
P25 SATA Differential TX-
based on SSD
PERp0 (RX+) P26 GND GND
P27 GND GND P28 NC +1.5V
P29 GND GND P30 NC SMB_CLK
P31 SATA Differential RX-
based on SSD
PETn0 (TX-) P32 NC SMB_DATA
P33 SATA Differential RX+
based on SSD
PETp0 (TX+) P34 GND GND
P35 GND GND P36 NC USB_D-
P37 GND Reserved P38 NC USB_D+
P39 +3.3V Reserved P40 GND GND
P41 +3.3V Reserved P42 NC LED_WWAN#
P43 GND Reserved P44 NC LED_WLAN#
P45 Vendor Reserved P46 NC LED_WPAN#
P47 Vendor Reserved P48 NC +1.5V
P49 DAS/DSS Reserved P50 GND GND
P51 Presence Detection Reserved P52 +3.3V +3.3V

このような電源仕様の相違のため、変換基板には降圧用のレギュレータが実装されている。このレギュレータが基板の表に実装されていたり、裏に実装されていたり特に決まりがない。そのうえ、商品写真では表に実装されているように見えるのに、送付されてきた変換基板には裏にレギュレータが実装されていて購入者の不評を買うことも日常茶飯事だ。レギュレータが裏に配置されていても機能上は問題ないけれど、レギュレータの高さの分だけスペースをとるため、設置場所によっては致命的な問題になる。

そのへん、NFHKは誠実なメーカーらしく、届いた変換基板は商品写真とまったく同じものが届いた。基板の端に書かれている型式番号が「N-1831V1」か「N-1831V2」となっていれば、NFHKの製品と見て間違いないようだ。もちろん、基板の印刷もすべて巧妙にコピーしている模倣品がないとも言い切れないんだけど。

基板右上に見える黒い素子が降圧用レギュレータ。mSATAのソケットやMicroSATAのコネクタがそれなりに高さのあるものなので、表側にあったほうが何かと有利。どういった理由かはわからないけど、裏面にレギュレータを設置している変換基板も多い。

次の画像は変換基板にmSATA SSDを組み付けたところ。M.2と似ていて、斜め上から押し込んでSSDのネジ穴のあるほうの端を押し、コネクタをソケットの奥まで挿入させてからネジ留めする。ネジはとても小さいので、+0か+00の細軸のドライバーがあると便利。

分解・換装

分解は基本的に、次のブログの記事を参考にすればそれほど苦労しない。

キーボードを外す時に無理なテンションがかかっているな、と感じる時はほぼ100%ネジの外し忘れが原因。外し忘れを防ぐコツとしては、ネジは分解の解説画像をよく見ながら端から順序よく数を数えつつすべて外してからキーボードを取り外すようにする。おそらく分解が初めてでも30分くらいで分解できる。

ただ、ひとつだけどうやって分解したらいいのかわかりにくかったところがあったので、記録しておく。次の写真はキーボード・ユニット(緑色の部分)を取り外して手前に裏返したところだけど、本体と切り離す方法で悩んでしまった。

青色の矢印で示した透明の板の下にあるコネクタに木製か樹脂製のヘラを差し込んでテコの原理で剥がしてやれば簡単に外れるんだけど、そんなところにコネクタがあるとは知らなかったので、キーボード・ユニット側をいじってしまった。

キーボード・ユニット側のコネクタはZIF(Zero Insertion Force)といって、ケーブルを差し込む力が必要なく、カバー(レバー)を押し下げることで固定する一種の圧着端子になっている。ただ、ちゃんとケーブルがささっているのか見た目でわかりにくいのが欠点。VAIOのZIFはフリップロック方式で、カバーを回転させるタイプのもの。挿入確認のためにケーブルを引っ張ったりしてしまうとカバーが回転軸から外れたりしてコネクタを損傷させてしまうこともあるため、非常に苦手なコネクタのひとつ。

次の画像は取り外した1.8インチHDD。HDD本体に衝撃が伝わりにくいようにラバー製のクッションが両側(画像では上下)に取り付けられていた。

取り外した1.8インチHDD。当時は小型HDDで業界最高水準の技術を持っていた東芝の製品だった。現在ではタブレットPCというジャンルが登場したことで光学ドライブが必須ではなくなったり、M.2をはじめとするSSDが一般化したこともあり、ノートPCの内部に余裕ができた。そのため、2.5インチHDDでも実用上問題なくなり、無理にHDDを小型化する必要性も薄れたため、一般用途では1.8インチHDDの出番はほぼなくなった。

効果

VAIO Type Tが発売された頃のSATA規格はSATA 2だったので、転送速度は3Gbps。SATAは8b/10bエンコードでデータをシリアル転送するため、1バイト(= 8ビット)の論理データを送るために10ビットの物理データを送る必要がある。なので、物理転送速度が3Gbpsの場合、送れる論理データの理論上の最高転送速度は300MB/sとなる。

CrystalDiskMark 7.0.0で計測してみたところ、シーケンシャル・リードで284MB/sと十分な性能を引き出せた。mSATA – MicroSATA変換アダプタも問題なく動作しているようだ。OSの起動も目に見えて速くなり、CPUやメモリが同じ物を使っているとは思えないくらいになった。

換装する前のHDDの計測を忘れてしまったので今から比較するのは難しいけど、そもそもHDDとSSDを比較する意味があるのかどうかはかなり微妙。

HDDが遅いのは単にデータの転送速度だけの問題ではなく、ファイルの先頭を頭出しする時間である平均シーク・タイムが無視できないくらいに長いからだ。それに対し、SSDはシーク・タイムをHDDの1000分の1以下のオーダー、つまりほぼ無視できるくらいに短くできることに最大のメリットがある。

5,400 rpmのHDDの場合、平均シーク・タイムは約5 msになる。5 msは1秒の200分の1なので人間にとっては十分短いけど、1.0 GHzで動作するCPUにとっては500万回のクロックを刻めるだけの時間であり、最短のマシン・サイクルを持つ命令であれば500万の命令を処理できる時間。最近は4.0GHz以上で動作するCPUも珍しくないので、CPUの尺度からするとHDDのシーク・タイムは気が遠くなるほど遅い。特にファイルへのアクセスが集中するOS起動時は絶望的な遅さになる。

何はともあれ、当初の目的であったSSD化には無事に成功したので、あと1年くらいは可搬端末として使えるだろう。その間に可搬端末の有用性はいかほどのものか判断がつくだろう。また、今の仕様では不満な点が出てくれば、その時こそ、より新しい型の高性能ノートPCを購入すべきか考える時だろう。

トラブル発生

2020年5月19日、何気なくVAIOを起動しようとしたら、Windows 10が起動しなくなった。ログイン画面のままフリーズしてしまい、キーボードやタッチパッドの操作も一切受け付けない。BIOS設定画面を呼び出すとキーボードなどはちゃんと動作するので、ハードウェアの故障の可能性は低い。

仕方ないので、Windowsをもう一度クリーンインストールしてみたら、異様にインストールが遅い。CPUがCore2 Duoだからだろうかと軽く考えて辛抱強く待ってみたけど、1時間以上かかった。初期設定も普通は失敗なんて起こりそうにないところで設定失敗が多くなり、異常なまでに時間がかかる。さすがにおかしいと思い始めた。

そこで、CrystalDiskMarkでSSDの速度を測定してみた。

遅い。異常なほど遅い。読み込みは150MB/sあるので百歩譲ってよしとしても、書き込みが0.42MB/sというのはちょっとありえない。HDDと比べても遥かに遅い。

ネットで調べてみたら、原因としては次のようなものが見つかった。どこも同じようなことしか書いてないのであまり参考にならなかった。

  1. BIOSの設定がAHCIモードではなく、IDEモードになっている。
  2. 4Kアライメントがずれている。
  3. SATA3ポートではなく、SATA2ポートに接続している。
  4. サードパーティ製のSATAコントローラに接続している。
  5. SATAケーブルの破損
  6. SSDの故障

1つ目は、そもそもBIOSにそのような設定項目がないので、自動的にAHCIモードが選ばれる。デバイス・マネージャで調べてみても、「SATA AHCI Controller」と表示されるので疑いようの余地がない。仮にIDEモードだとしてもSSDの書き込みが0.42MB/sというのはありえない。

2つ目は、パーティションの開始がSSDの読み書きの単位である4,096バイト(4KB)からずれているという問題のこと。今時のWindowsのインストーラがそんな初歩的なミスをするとは思えないし、実際調べてみたら、4Kアライメントからずれているということはなかった。

3つ目は、そもそもSATA2規格のマザーボードなのでSATA3として使えるコネクタは存在しない。SATA2規格だとしても遅すぎるレベル。

4つ目は、ノートPCなのでサードパーティ製のSATAコントローラを積む余地がないし、積む必要もない。念のため調べてみたけど、Intel製のSATAコントローラとして認識されていた。

5つ目は、可能性としてはなくはないけど、ノートPCなので交換用パーツがなく、リボン・ケーブルのため汎用品がない。修理するためには同型のVAIOのジャンク品でも購入してくるしかなく、現実的でない。

最後に残るのが6つ目のSSDの故障だけど、わざわざ新品のSSDを買い直してまでパフォーマンスを改善したいとは思わない。そもそも、実用レベルとは言いにくいノートPCの再生なので、Core2 Duoで頑張らなければならない理由も特にない。

このような低速状態だと、ちょっとしたユーティリティ・ソフトウェアやWindows Updateをインストールするにしても気が遠くなるような時間がかかるのので、実用に堪えない。

再分解・復旧

SSDが突然低速化してしまったので、ガッカリして、なかば捨て鉢になっていたけれど、凝り性な性分なので、どうにも諦めがつかない。まず、イベントビューアで何かエラーが出ていないか確認する。すると、「ソース」が「disk」の蘭に「イベントID」が「153」の警告が山ほど出ている。それこそ、毎秒から数秒に1回の割合で。これは、I/Oがうまくいかなかったのでやり直しをしているイベントらしい。これは怪しい。

ソース名とイベントIDをもとにしてネットを調べてみる。あまり期待はしていなかったけど、まぁ、大体Windowsの設定の問題とか、SSDに換装した後にレジストリをいじる必要があるとか、SSDやHDDの寿命とか、故障(初期不良)とか、どうも腑に落ちない結論ばかり。ついこの間まで280MB/sの読み込み速度が出ていた新品のSSDが急に遅くなったのだから、設定とかレジストリをいじったところでどうにかなる問題とは思えない。

いくつか記事を拾っていったら、面白い記事に行き当たった。SSDではなくてHDDの話だったけど、同時期に買った2基のHDDのうちの片方が、やはり153のイベントIDの警告を吐き続けていて、データの書き込みが一向に進まないというものだった。で、どう解決したかというと、SATAコネクタに「接点復活スプレー」なる薬剤を塗ってHDDそのものは交換せずに見事に復旧したというのだ。

これは試してみる価値がある。そのスプレーも数百円で買える一般的なものだ。潤滑剤や錆取り剤などで有名な呉工業が作っているというのだから、眉唾物ではなさそうだ。Amazonだと少し高いけど、家電量販店やホームセンターなどなら安く入手できる。

接点復活スプレーを買ってきたので、早速VAIOを再び分解してみたら…。なんと、次の画像のようにSATAコネクタが外れかかっているではないか(青い矢印のところ)。

こんな事態になっているのであれば、書き込みが異常に遅くなるのも無理はない。SATAは全二重通信で、送信(読み込み/リード)と受信(書き込み/ライト)が独立している。考えてみれば当たり前の話で、書き込みだけ極端に遅いという時点で気付くべきだった。むしろ、コネクタが斜め差しの状態になっていながら、隣のピン同士が短絡してSSDが本格的に故障するような事態にならなかったのが奇跡なくらいだ。こんな状態で、よくWindows 10をインストールできたものだ。

思った以上にMicroSATAのコネクタは嵌合が弱く、2.5インチや3.5インチのSATAコネクタと同じと思ってはいけないようだ。接点復活剤を使うまでもなく、コネクタをちゃんと嵌め、今度はSSDがPCの内部で動いてコネクタが緩まないように緩衝材を詰めるのがメインの作業に変わった。

本当はクッション・テープなどを貼って綺麗に作るのがいいんだろうけど、本体のカバーを開けてみるまでこういう事態とは思っていなかったので手持ちがない。そこで応急処置として、梱包に使われていた段ボールをドライブのケージの大きさに合わせて短冊状に切り、5枚ほど重ねてテープで巻いたものを詰めた。5枚も重ねると意外に弾力があって、即席の板バネのようなものになった。

もちろん、応急処置なので、段ボールを使うのはおすすめしない。一般的なハサミやカッターナイフで切れるため、加工が簡単で大きさを調節しやすいのが最大の長所。練習もかねてどのくらいの大きさの緩衝材を用意すればいいのかの目安にする分にはいいと思う。ノートPCの中はかなり熱くなるので、難燃性の緩衝材を使ったほうが無難だろう。紙でも、それも段ボールとなればそう簡単には燃えないんだけど、火災などの原因になっても責任は持てない。

せっかく買ってきたし、接点の防錆効果などもあるので、接点復活スプレーの薬剤も綿棒の先につけてコネクタに塗っておく。どういう理屈かはいまひとつ理解できなかったんだけど、接点復活剤は導電体ではなく、接点の汚れを落とし、人間の目には見えない微細な凹凸がある接点の面積を増やして通電できる場所を増やすというもののようだ。なので、絶縁体をまたいでコネクタのピンにべったり塗ってしまっても薬剤を通じて短絡してしまうといった問題は起こらないそうだ。

カバーを閉じ、バッテリーを接続して起動してみる。CrystalDiskMarkで計測してみると、SSD換装当初と同じくらいまでリード/ライトの速度が回復した。一度悔しい気持ちを味わっているせいか、換装に成功した時よりも、トラブルを解決できた時のほうが気分がいい。

ノートPCというのは、思った以上に過酷な環境で使われているものだということが身に沁みて理解できた。そんなに乱暴に扱ったつもりはないけど、動かして使っていると通常の運用でも内部の部品に相当な衝撃や力がかかっていると今なら想像できる。ましてや、もともと1.8インチHDDが入っていたところに設計よりも遥かに小さい物を入れて詰め物もちゃんとしなかったのだから想定外の事態は当然起こりうる。

何はともあれ、SSDは本来の性能を取り戻した。SSDが故障していないか確認するために、mSATAを9.5mm厚の2.5インチSSDサイズのSATAに変換するアダプタも買ってきたんだけど、無駄になってしまった。むしろ、こちらのほうが高くついてしまった。本当にVAIOを退役させる時にSSDを救出するのに役に立つ、かもしれない(忘れなければ)。

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参考記事

VAIO type T (VGN-TT50B) にWindows10をインストール

最終更新:2020/06/02

2008年か2009年頃に買ったWindows Vista搭載のVAIOが長い間使われずに自宅の隅でホコリを被っていた。最初は旅行先でデジタル一眼レフカメラを使って撮影した写真データをコンパクト・フラッシュから移して一時保管しておくために使っていた。当時はフラッシュ・メモリの容量は多くても数GB程度で、RAW画質で撮影するとあっという間に一杯になってしまったからだ。それでも数千枚の写真を撮りためたのだから、当時の自分のバイタリティを褒めたくなる。

懐かしいVAIO type Tの画面。Windows Vistaなので表示要素が立体的デザインで、古めかしさすら感じる。フラットデザインが主流になるのはiPhoneの登場でAppleがMicrosoftを脅かすほどの復権を果たしてからのことだ。

今ではモバイル・ノートPCは数万円程度で手に入るものになっているけど、まだ「モバイル・ノート」というコンセプト自体が目新しかったもので、当時は小型化に高い技術力を必要としたためスタンダード・ノートPCとそれほど変わらない20万円ほどもした。

CPUはCore2 Duo U9300@1.20GHzで、メモリはDDR3-800の3GBしかない。32ビット オペレーティング・システムというのも時代を感じる。

CPUは今では懐かしいCore2 Duoで、ストレージは当然HDDだった。WindowsをはじめとするソフトウェアはDVDメディアからインストールするものだったため、どんなに小さくしても幅と奥行きが12cm以上になってしまう光学ドライブも搭載しなければならず、ストレージを搭載するスペースは限られていた。SSDそのものは既に存在していたけど、「SSD」という言葉はまだなく、「HDDの代わりにフラッシュ・メモリを搭載」と言われていた。安価なTLCが登場する前のMLCタイプだったこともあり高嶺の花で、SSD搭載オプションを選ぶと価格が跳ね上がった。少しでも安くあげるにはHDDを選ぶしかなかったのだ。

ところが、一生懸命使っていたのは最初の1年間くらいなもので、Windows 7の登場でWindows Vistaが廃れてしまうとまったく使わなくなってしまった。普段使いのために購入したデスクトップPCにSSDを導入してからはHDDから起動するVAIOは動作がひどく遅く感じられるようになってしまい、一眼レフのロートル化に伴い出番も減り、これといった使い道もないままVistaのサポートも終わってしまった。

今では結局Core i9-9900Kを搭載したデスクトップPCをメインに使っているわけだけど、モニタとキーボードやマウスの場所に拘束される作業スタイルが楽ではないと感じることもある。ブログの記事を書くくらいならノートPCで楽な姿勢でやれたらいいのにな、と自堕落な考えを起こしていた。それならばいっそのこと、リモート・デスクトップを使って無線LAN経由でメインPCに接続して有り余るリソースを使えばいいのではないかと思いついた。

ところが、新品のノートPCを買おうとすると、CPUをモバイル向けCeleronまで妥協しても5~6万円はする。小さくてもフルHDの液晶モニタを搭載していて、最新アーキテクチャのCPU、DDR4メモリ、システム用SSD、IEEE 802.11acクラスの無線LAN、Bluetooth 5など必要なものはひととおり揃っているので当然といえば当然の話。数年前の型落ちCore i5を搭載しているスタンダード・ノートPCの中古品を買ったほうが安いくらい。

そこで、Core2 Duoでも画面表示出力とキーボードやマウス入力のデータをやりとりするだけのリモート・デスクトップくらいなら動かせるんじゃないかと考えて、再び候補にのぼってきたのがVistaのまま放置されていたVAIOというわけだ。

調べてみると、古いVAIOのストレージをSSDに換装したりしながら大事に使っている人が結構いる。当時としては先進的だったアイソレーション・キーボードを採用していたり、妙な空白地帯を作ってしまって野暮ったくなりがちだった内蔵バッテリーセルを独特な曲面筐体の一部に組み込んでいたりなど、今見ても古さを感じないほどデザインは優れている。iPhoneをはじめとするスマートフォンのおかげで今では当たり前になったBluetooth接続のワイヤレス・マウスを標準装備しているなど未来を先取りしていた。当時はPCの周辺機器は有線接続が当たり前だったので、「Bluetoothのような近距離無線通信なんて一体何のために存在するの?」という感覚だったのだ。

VAIOには時代を超えて愛される要素は確かにたくさんある。今のモバイル・ノートが価格や重量を抑えるために金属の部品を使わなくなっているのに対し、ヒンジなど最も負荷がかかる部分にはケチらずに金属部品を使っていて単純に丈夫だという理由もあるだろう。使用頻度は低かったとはいえ、10年前のPCがまだどこも故障していないのだ。

パソコンの修理や近代化改修を請け負う仕事をしている人のブログを読むと、VAIO type TにもWindows 10がインストールできると書かれている。

VAIOノート VGN-TT50Bにwindows10をインストール 不明なドライバー情報 – パソコンりかばり堂本舗

これは面白い。10年以上前のモバイル・ノート黎明期のノートPCが最新OSをインストールできてちゃんと動作するというのだ。そんなに古いCPUでさえサポートしているMicrosoftがすごいのか、拡張命令を追加しながらも64ビット命令セットがちゃんと動く設計を頑なに守り続けてきたIntelが偉いのか、どっちかはわからないけど、とにかく古くても64ビット命令セットを処理できるCPUならばWindows 10は動くのだ。

Windows Vistaをバックアップする

Windows Vistaの頃にはパソコンを買ってもリカバリ・メディアが付属してこなくなった。付属していた製品もあったかもしれないけど、少なくともVAIO type Tには付属してこなかった。Windows 10を試すこと自体は無償でできるけど、色々不都合がわかってシステムをWindows Vistaに戻したいとなると話がややこしくなってくる。何せサポートの終了したOSなので、Vistaのメディアを入手する正規の手段はもうない。仮にあったとしても今更Vistaに投資はしたくない。

面倒ではあるけど、他に手段もないので、はやる気持ちを抑えつつ、VAIOにインストールされているVistaのリカバリ・メディアを作成する。本当は購入してすぐ作成するものなんだけど、10年以上を経て初めてリカバリ・メディアを作成することになった。

リカバリ・メディアを作成するためのソフトウェアはプリインストールされており、手順は非常に簡単。画面の指示に従ってブランクDVD-Rを入れていくだけ。

リカバリ・メディアがなんたるかを説明する文章。恥ずかしながら、10年以上経って初めて目にした。おそらく、もう目にすることはないと思うので、スクリーンショットを撮っておく。

Windows Vistaの時代でも、リカバリ・メディアの作成にはDVD-R(1層)が2枚必要になる。光ディスクによるソフトウェアの販売にはもう限界が見えてきた頃だったのだ。

最初は念のためベリファイを指示しておいたけど、ベリファイに失敗してDVD-Rを1枚無駄にしたので、2回目はベリファイを指示しなかった。リカバリ・メディアは念のため作成しているだけであって、Windows 10へのアップグレードが失敗したら、このVAIOももう日の目を見ることはないので最悪のケースの保険でしかない。

Windows 10をインストールする

Windows 10のインストール・メディアを用意する

VAIO以外のインターネットに接続できるPCでWindows 10のインストール・メディアを用意する。この種の手引きはネットに溢れているので今更説明するまでもないだろうけど、VAIO type Tにインストールする場合限定で記録を残しておく。

言わずと知れたWindows 10のダウンロード・ページ。

https://www.microsoft.com/ja-jp/software-download/windows10

ここでMediaCreationTool1909.exeをダウンロードする。実行するとどのPCにWindows 10をインストールしたいか選ぶことになる。今回はVAIOにインストールしたいので、「別のPCのインストール・メディアを作成する」を選ぶ。

くどいようだけど、Core2 Duoは64ビットCPUなので、Windows 10は64ビット版を選択する。32ビット版を選んでしまうとメモリが4GBまでに制限されてしまうので、後のメモリ増設のためにも64ビット版を選んでおくのには意義がある。

インストール・メディアを作成する媒体を選ぶ。ここでちょっと迷うかもしれない。新しいPCならUSBメモリからインストーラをブートできることはよく知られているけど、10年以上前のPCとなるとちょっと微妙になってくる。PCのBIOSがUSBにネイティブに対応しているかどうかにかかっているからだ。OSが起動してからUSB汎用ドライバを読み込んでいるようでは間に合わない。

USBブートができないPCの場合、DVDを選ぶしかないけど、DVD-Rがもったいないし、USBブートができれば越したことはないので、まずはUSBメモリでチャレンジ。

使用可能なUSBメモリの一覧が表示される。ストレージの配置の都合でEドライブになっているけど、メディア・クリエイション・ツールが使用可能であると判断しているのであればドライブ・レターは何でも良い。ただし、複数のUSBメモリを同時に使っている場合、間違ってデータを消したくないUSBメモリを選んでしまうとすべてのデータが消えてしまうので、不要なUSBメモリは外しておくか、間違えないようなわかりやすいボリューム名をつけておく。

VAIOをいったんシャットダウンし、できあがったインストール・メディアをVAIOのUSB端子に挿入して電源を入れる。VAIOのロゴが表示されているうちに「F2」キーを押してBIOS設定画面を呼び出す。

非常にシンプルな設定画面なので、設定項目は必要最低限しかない。当然ながら、近年のマザーボードのようなオーバークロック関連の項目などは一切ない。

「Boot」メニューの「Boot Configuration」を変更する。「External Device Boot」を「Enabled」に変更し、「Boot Priority」にカーソルを移動させてブートの優先順位を変更する。「External Device」にカーソルを合わせ、「F5」キーを押して最優先(一番上)に移動する。「Exit」タブを選択し、「Exit Setup」で変更した設定を保存し、再起動する。

BIOS設定の変更がうまくいっていれば、USBメモリからブートされ、Windows 10のセットアップが開始される。あとは画面の指示に従って進めていくだけだけど、今までVistaが入っていたパーティションを一度解放しないとインストールできないので、ここでVistaと別れを告げる。

実はVistaのリカバリ領域がHDDの一部に残っているんだけど、消してしまってもいいし、残しておいてもいい。リカバリ領域を削除することは後でもできるので、HDDの容量が逼迫していないのであれば、とりあえず残しておくことをおすすめする。

動作確認

Windows 10のインストール中の画面は省略するけど、VAIO type Tに無事にWindows 10をインストールできた。UIがモダンになるだけで、CPUがCore2 Duoであることを忘れてしまうくらい普通に動いている。

ドライバ不明のデバイス問題

正常に入力デバイスの操作に反応しているし、画面も正常に表示されているので、ぱっと見でも、CPUは期待どおりに動いているし、チップセット内蔵グラフィックのドライバは正しくインストールされている。タッチパッド、キーボード、無線LAN、Bluetooth、HDD、光学ドライブ等、必要最低限のドライバは正常に適用されている。

他の記事を読んで予想できていたことではあるけれど、デバイス・マネージャを起動すると、いくつかのデバイスで正常にドライバがあたっていないことがわかる。

VAIOに実装されているハードウェアには64ビット版OS用のドライバが非公式に用意されていて、SONYのサポート・サイトからダウンロードできる。

32ビットOSから64ビットOSへの本格移行が始まりかけていた時期だったのでこういったドライバを用意しているのだろう。でも、とっくに生産も修理対応も終息してしまっている製品のドライバをいまだに配布し続けているということは、Vistaがとっくに廃れた10年以上先の2020年現在もVAIOを使い続けて欲しいとSONYが願っていたと考えることもできる。もしそうならば、SONYのVAIOへの思いやりの深さには頭が下がる。

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Sony Firmware Extension Parser Device

デバイス・マネージャではACPI¥SNY5001で始まる「不明なデバイス」となっているのはSony Firmware Extension Parser Deviceというものらしい。具体的に何をするものなのかは不明。

Memory Card Reader/Writer (Ricoh(MS))

PCI¥VEN_1180&DEV_0592&SUBSYS_9047104D&REV_11で始まる「基本システムデバイス」というデバイスは、SONYが独自規格路線を邁進していた頃の代表的デバイスだったメモリー・スティック(MS)用リーダー/ライター。

SONYはまだメモリー・スティック規格の製品を販売しているけれど、SDカード等のメモリ・カードに比べると大容量化は進んでおらず、主要な規格とは言い難くなってしまった。Windows 10の標準ドライバも現在では用意されていない。

1seg Tuner (Sony)

USB¥VID_054C&PID_0279¥5で始まる「CXD9192 Controller」というデバイスは、地上波デジタル放送のいわゆるワンセグ用チューナー。日本語の地上波デジタル放送は日本ローカルなので、Microsoftが標準ドライバを用意していないのも当然だろう。

Memory Card Reader/Writer (Ricoh(SD))

PCI¥VEN_1180&DEV_0822&SUBSYS_9047104D&REV_21で始まるデバイスは、「SDA標準準拠SDカード・ホスト・コントローラー」ということになっているけど、上のメモリー・スティック・リーダー/ライターのすぐ隣りに実装されているSDカード・リーダー。SDカード・リーダーであることは認識できているようだけど、Windows標準ドライバでは正常に動作しないようだ。

Windows 10のバージョンやVAIOの構成によっては警告が表示されない(標準ドライバでなんとかなる)こともあるけど、メモリー・スティック・リーダー/ライターのドライバをあてると警告が表示されるようになることもある。

Alps Pointing-device for VAIO

キーボード・ユニットに実装されているタッチパッド式ポインティング・デバイスは、Windows 10をインストールすると汎用PS/2ポインティング・デバイスとして自動的にドライバが設定されるけど、タッチパッドの右端や下端をなぞるとウィンドウを上下及び左右にスクロールできる機能はなくなってしまう。

デバイス・マネージャでポインティング・デバイスのデバイス番号を調べてみるとACPI¥SNY9001だと判った。それで検索して調べてみると、Alpsのポインティング・デバイスだと判ったので、「EP0000155342 : Pointing(Alps)」のドライバを解凍してインストールするとタッチパッドのスクロール機能を使えるようになる。リストにはVGN-TT50Bはないけど、問題なく動作する。

VAIO type TのWindows 10化の効果

ひとまずVAIO type TをWindows 10にすることには成功した。リモート・デスクトップによるメインPCへの接続も成功した。リモート・デスクトップを起動できてしまえば、VAIOにかかる負荷は高くなく、メインPCの高い処理能力とM.2 PCIe NVMe SSDからのアプリケーション高速起動、大容量HDDやNASなどの保存資源を存分に使うことができる。VAIOの処理能力が最新型クラスに上がったのではないかと錯覚してしまうくらいだ。

ただ、問題点がまったくないわけでもない。初回起動はHDDからWindows 10を起動しなければならないため、電源投入から起動までは相当待たされることになる。起動に時間がかかると起動する気が起こらなくなるため、結構致命的。

ある程度予想はしていたことだけど、タブレットPCが市民権を得ている現在ではHDDからのOS起動が現実的でなくなっているということを改めて痛感する。それでも、Vistaより起動が遅いとは感じにくいのは64ビットOSだからだろう。

有利なこと

  • Core2 Duoは64ビット命令セットを処理できるので64ビット版Windowsを使える。
  • 64ビットOSが使えれば、CPUが非力でもそこそこ使えるものにできる。
  • Windows PC同士なら標準機能のリモート・デスクトップが使える。
  • 画面解像度がメインPCと異なっていても自動的に縮小して再配置するため、Chromeリモートデスクトップのように画面がスクロールしてしまって煩わしいということがない。
  • リモート・デスクトップを使っている限りアプリケーションのインストールが不要。
  • アプリケーションのライセンスも不要なため、経済的。
  • 特別な環境を構築する必要がないためシステム・バックアップが不要で、ストレージが故障しても気軽にクリーン・インストールして元に戻せる。

不利なこと

  • 画面の大きさが11.1インチで解像度がWXGA(1,366×768)に制限されるため、作業領域が広くないのはいかんともしがたい。
  • マルチ・ディスプレイ環境を構築するのは「動かせる」というノートPCの根本的利益を減じてしまうため、サブ・ディスプレイに表示した情報を参照しながら操作するクリエイティブ作業には不向き。
  • HDDのアクセスの遅さは致命的で、iPadのように気軽に起動できない。
  • HDDが遅いため、VAIOに何らかのアプリケーションをインストールするのも得策ではない。

SSD化は要検討

快適に使用するにはSSDへの換装がほぼ必須になったわけだけど、いくつか検討しなければならない事項がある。

1.8インチ・フォーム・ファクタ

VAIO type Tのストレージは1.8インチのフォーム・ファクタで、今では珍しくなってしまった。接続方式も3.5インチや2.5インチのストレージのSATAよりもひとまわり小さいMicroSATAを使用していて、これまた現在ではほぼ廃れてしまった。

1.8インチSSDの入手自体が現在極めて困難で、売っていたとしても、ほぼ希少価値だけで性能や容量に見合わない価格がつけられている。現実的な方法としては、まだかろうじてまともな価格で販売されているmSATA(MiniSATA)接続のSSDをMicroSATA接続に変換する基板を使って換装する。

1.8インチのフォーム・ファクタのネジ位置には合わせられないので、クッション・テープなどを詰めて隙間を埋めてやることになる。段ボールを詰めているという強者もいて、入手や加工の容易さや、ある程度の弾力もあるという意味では悪くない発想だ。

SATA SSDなので発熱は高くないと予想されるし、常温で使用する限り、詰め物が溶けたり発火したりすることはないとは思うけど、ノートPCの中で発熱するのはSSDだけではない。難燃性の材料を使った詰め物を使うのが無難だし、目を離す時は必ず電源を切り離しておくなど発熱・発火対策をしておく必要があるだろう。

要分解

問題は、外部からストレージにアクセスするのが不可能で、本体を一度分解しなければならないということ。ネジを外してカバーを取り外せばいいというくらいならやってみてもいいんだけど、ことはそう簡単ではない。強度が心配なくらい極めて薄いリボン・ケーブルで接続されたキーボード等の入出力装置を切り離したり、同様のリボン・ケーブルで接続されたストレージを取り外したりしなければならない。

中古の古いVAIOを手に入れてきては分解し、その進化の過程を観察するのが趣味な人も世の中にはいて、詳細な解説記事を書いてくれているんだけど、真似できるような気がしない。

金属の端子が極力露出しないように作られているケーブルで接続するデスクトップPCなんて比べものにならないほど繊細な作業が要求される。デスクトップ用マザーボードのピンヘッダで一般的な2.54mmピッチなんてノートPCの世界からすればザルのような粗さだ。

金属部品を使って重くなってしまった分は樹脂カバーのツメを固定する方法を工夫したり、長さの異なるネジを複数種類使用したりすることで剛性を維持している。PC用のネジなんて大体共通なのに、複数のネジを使い分けるというのは組み立て作業者にとっては負担でしかない。奥まで入りきらないネジがあったり、ネジの長さが足りずに空転してしまったりといった組み立て不良が起こりやすくなるからだ。

でも、SONYは結構こういうことを平気でやる。PlayStation3の分解解説のページを見たことがあるけど、分解手順が複雑すぎてはっきり言って正気の沙汰ではない。それに比べればVAIOの分解の難易度は易しいほうなのかもしれない。

関連記事

参考記事

MSI Z390M-S01

最終更新:2020/03/12


ATXフォームファクタのマザーボードについてはMSI Z390-S01をご覧ください。


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注意事項

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BIOS更新は、OSやソフトウェアのアップデートとはまったく異質のもので、全員が必ず実施し、常に最新の状態を維持しなければならないという性質のものではありません。BIOSを更新したとしても、PCの性能は向上しませんし、必ずしも新型ハードウェアへの更新、換装ができるようになるわけではありません。ほとんどの場合、BIOSを更新しても何が変わったのかわからないはずです。

当記事はZ390チップセット搭載マザーボード「Z390M-S01」について個人的に調査した結果を記載しているにすぎず、当該マザーボードのユーザー全員を支援することを目的としていません。質問がある場合は、まず販売店の公式サイトをご覧いただくか、販売店に直接お問い合わせください。販売店に問い合わせてもわからなかったことは当ブログ管理者にもわかりません。当ブログの関知するところではない情報についてはお応えいたしかねますので、お問い合わせに返信しないことがあります。

「ダメでももともと、この記事を書いた人なら何か知っているかもしれないから質問してみよう」といった安易な期待にもとづく問い合わせは当ブログの記事の執筆時間を削ぐ結果にしかなりません。

以上、ご理解、ご協力のほどよろしくお願いいたします。

マウスのZ390チップセット搭載ATXマザーボード「Z390M-S01」について調べた。本マザーボードには「7C24」というモデル・ナンバーが振られている。

オンボード・コネクタ

基板上に配置されているコネクタやスロットは次の図のとおり。ストレージ用M.2スロットが2基、CNVi接続Wi-Fi/BluetoothのCRFモジュール用M.2スロットが1基搭載されている。ストレージ用M.2スロットには、SATAデバイスとPCIeデバイスの両方を使用できるけど、M2_1にSATAデバイスを接続してしまうとSATA2コネクタは無効になる。

MSI Z390M-S01のオンボード・コネクタの配置

 

Z390M-S01のオンボード・コネクタ一覧
コネクタ名 仕様 備考
LGA1151 第8/第9世代Intel Coreプロセッサ対応  
CPU_PWR1 8ピンEPS12V電源  
ATX_PWR1 24ピンATX電源  
CPU_FAN1
PUMP_FAN1
SYS_FAN1
SYS_FAN2
4ピンPWM対応ファン・コネクタ  
DIMMA1/A2
DIMMB1/B2
DDR4 SDRAM DIMMスロット Non-ECC UDIMM
最大64GB(128GB)
JAUD1 10-1ピン・フロント・オーディオ・コネクタ  
JFP1 10-1ピン・フロント・パネル・コネクタ1
(電源/リセット・スイッチ、電源/HDD LED)
 
JFP2 4ピン・フロント・パネル・コネクタ2
(ブザー/スピーカー)
 
JCI1 2ピン・シャーシ侵入検出機能コネクタ  
JRGB1 4ピンRGB LEDコネクタ 12V G R B
JTPM1 14-1ピンTPMモジュール・コネクタ  
JTBT1 5ピンThunderboltアドオン・カード・コネクタ  
JBAT1 クリアCMOSジャンパ  
JUSB1
JUSB2
10-1ピンUSB 2.0ピンヘッダ JUSB2はCNViの
Bluetoothと帯域を共用
JUSB3
JUSB4
20-1ピンUSB 3.0(USB 3.1 Gen1)ピンヘッダ  
JSPI1 シリアル・ペリフェラル・インタフェース BIOS非常書換用
M2_1 M.2スロット Key ID.M 2242/2260/2280/22110
PCIe/SATA両用
SATA使用時、SATA2
使用不可
M2_2 M.2スロット Key ID.M 2280
PCIe/SATA両用
 
CNVI_1 M.2スロット Key ID.E
CNVi RFCモジュール用コネクタ
 
PCI_E1
PCI_E2
PCI_E3
PCI Express 3.0 [x16] (CPUレーン)
PCI Express 3.0 [x1] (PCHレーン)
PCI Express 3.0 [x16] (PCHレーン [x4動作])
 
SATA1
SATA2
SATA▼3_▲4
SATA3 6GB/sコネクタ  

バック・パネル

バックパネルには、USB 2.0端子が1つもない。USB 3.0(Super Speed)のポートにUSB 2.0かUSB 1.1でも十分なUSBキーボードやUSBマウスを接続してしまうと少しもったいない気もする。Micro-ATXサイズのマザーボードを前提としたミニタワーPCケースのフロント・パネルにUSB 2.0端子とUSB 3.0端子の両方を備えていることは稀なので、外部接続が可能なUSB 2.0端子が1つもないこともあるだろう。

©Micro Star International

USB 2.0をどうしても外部接続して使いたい場合はマザーボードのピンヘッダからPCIスロット経由でリア・パネルか、3.5インチや5.25インチ・ベイに増設するフロント・パネルなどに引っ張ってくるしかない。ただ、USB 3.0はUSB 2.0/1.1と後方互換性があるので、USB 2.0でないと困る事情も特にない。ソフトウェアの認証用ドングルを常に接続しておく必要があるなどUSB接続の機器を大量に使う目的でもない限り、わざわざUSB 2.0のポートを増設することはないだろう。

フレキシブルI/O

Z390チップセットのHSIO割り当て
HSIO 用途 PCIe
1 USB 3.1 Gen1/Gen2 #1
2 USB 3.1 Gen1/Gen2 #2
3 USB 3.1 Gen1/Gen2 #3
4 USB 3.1 Gen1/Gen2 #4
5 USB 3.1 Gen1/Gen2 #5
6 USB 3.1 Gen1/Gen2 #6
7 USB 3.1 Gen1 #7 PCIe 3.0 #1 x2 x4
8 USB 3.1 Gen1 #8 PCIe 3.0 #2
9 USB 3.1 Gen1 #9 PCIe 3.0 #3 x2
10 USB 3.1 Gen1 #10 PCIe 3.0 #4
11 PCIe 3.0 #5 GbE (LAN) x2 x4
12 PCIe 3.0 #6
13 PCIe 3.0 #7 x2
14 PCIe 3.0 #8
15 PCIe 3.0 #9 GbE (LAN) x2 x4
16 PCIe 3.0 #10
17 PCIe 3.0 #11 SATA #0a x2
18 PCIe 3.0 #12 SATA #1a GbE (LAN)
19 PCIe 3.0 #13 SATA #0b GbE (LAN) x2 x4
20 PCIe 3.0 #14 SATA #1b
21 PCIe 3.0 #15 SATA #2 x2
22 PCIe 3.0 #16 SATA #3
23 PCIe 3.0 #17 SATA #4 x2 x4
24 PCIe 3.0 #18 SATA #5
25 PCIe 3.0 #19 x2
26 PCIe 3.0 #20
27 PCIe 3.0 #21 x2 x4
28 PCIe 3.0 #22
29 PCIe 3.0 #23 x2
30 PCIe 3.0 #24

Z390チップセットにはHSIOと呼ばれる統合I/Oレーンが30本あり、マザーボードのメーカーはその範囲内で製品に使用するI/Oを決めて設計する。

HSIO(High Speed I/O)は、PCI Express 3.0、SATA 3、USB 3.0/3.1、GbEなどの高速インタフェースの総称で、第6世代Intel Coreシリーズ用の100シリーズ・チップセット(Skylake)から導入された概念。以前はそれぞれのI/Oに対応するコントローラ・チップの一群を配置してそれぞれのドライバを用意しなければならなかったけど、ワンチップ化されたチップセットにすべてのコントローラを統合することでメーカーはマザーボードの設計を簡略化できるだけでなく、同世代の異なるチップセットのマザーボードの設計を流用できるようになった。また、「USB 3.0は少なくてもいいからPCI Express 3.0の拡張スロットをできるだけ多く」といった特定のI/Oに特化するような柔軟な設計もできるようになった。

Z390はPCI Express 3.0を最大24レーン使えるけど、Z390M-S01はバックパネルにUSB 3.1 Gen2(TYPE A+C)を2ポート、USB 3.1 Gen1を4ポート、オンボードにUSB 3.1 Gen1のピンヘッダを4ポート分備えているので、HSIOを10レーン使用している。つまり、PCIe 3.0 #1~#4を使用できないので、PCIe 3.0は20レーンまでしか使用できない。

USB 2.0のピンヘッダも4ポート分備えているけど、USB 2.0はもはや「高速インタフェース」ではないので、フレキシブルI/Oとは別枠でチップセットが直接制御している。いずれにせよ、帯域としてはUSB 3.0の10分の1以下なのでUSB 2.0ハブ・コントローラ・チップを挟めば計算上はHSIO 1つで10ポートは賄える。

更に、SATAを最大の4ポート使いたければ、PCIe 3.0を4レーン使えない。この時点で残りのPCIe 3.0は16レーン。

Realtek RTL8111H PCI-E GbE LANコントローラにPCIe 3.0を1レーン、M2_1及びM2_2スロットに実装したPCIe 3.0 x4 NVMe SSDはPCIe 3.0をそれぞれ4レーン占有するから、残りのPCIe 3.0は7レーン。

PCI_E3スロットをx4動作で使用することを想定すると、連続してPCIe 3.0を4レーン確保できるところはPCIe 3.0 #21~#24だけになる。PCI_E2はPCIe 3.0 x1なので、2つの拡張スロット合計で5レーン使用するので残りのPCIe 3.0は2レーン。HSIO 1レーンあたりの帯域は8Gbpsだから、USB 3.1 Gen2を規格どおりの10Gbpsで使えるようになっているとすれば、1ポートあたりHSIOを2レーン使うことになるので、もう余裕はない。

電源回路

最近のマザーボードでは電源回路の質の良し悪しでグレードの差がついたり、メーカーの電源回路に対する考え方が表れるようになった。特に、オーバークロックを試したい場合は電源回路が定格以上の出力にどれだけ耐えられるかが重要とされる。

Z390M-S01のVRMフェーズ数

PWMコントローラ・チップ「uP9521P」。拡大しているので大きく見えるけど、実際は6mm四方で目視では文字が読めないほど小さい。

VRMフェーズが不明なマザーボードのフェーズ数を調べるには、まずはPWMコントローラを探す。

マザーボード上の電源用PWMコントローラ・チップの周囲の回路には独特の特徴がある。電源回路まわりの仕様はATXフォーム・ファクタのZ390-S01と同様と推測されるので、uPIセミコンダクター社のuP9521PというPWMコントローラを使用している可能性が高い。

uP9521Pは、ミドルレンジのマザーボードでもよく使われている、Intel CPUのIMVP8電源仕様に対応しているPWMコントローラ。CPUコア用に4フェーズ分、CPUコア以外の内蔵GPUやメモリなどへの電源供給用に3フェーズ分の最大7フェーズのタイミング信号を生成できる。よく、「4+3フェーズ」などと表現されるのはこれに由来している。

Z390M-S01の上には10個のチョークコイルが並んでいて、その周囲にハイサイドとローサイドで1組プラス1個くらいのMOSFETと固体電解コンデンサがあり、それらで合計10組のVRMフェーズを構成している。PWMコントローラのタイミング信号はMOSFETをドライブするだけの能力が不十分なことが多く、MOSFETの前にはほぼ間違いなくMOSFETドライバICがある。ただ、場所の都合で基板の裏面に配置されていることも多い。

シングル・チャネルMOSFETドライバ・チップ「uP1962P」。こちらは2mm四方と更に小さい。パッケージには「FH」としか書かれていないけど、データシートと照合するとトップ・マーキングがオーダリング・インフォメーションと一致する。

MOSFETドライバもZ390-S01と同様と推測できるので、uP1962Pという12Vシングル・チャネルMOSFETドライバを使っている可能性が高い。4個のuP1962Pの下に2組のVRMフェーズを置くことで電流の経路を2倍にし、擬似的に8フェーズの同期整流回路としている。タイミング信号は4フェーズなのでリップルの低減にはつながらないけど、電流の経路を増やせばMOSFETからの発熱を分散できると思われる。残りのVRMフェーズはCPU内蔵GPU用に1フェーズ、DDR4 SDRAM用に1フェーズずつ使われている。よく自作PCパーツの新製品記事に使われている表現としては「8(4×2)+1+1フェーズ」となる。

MSI製Micro-ATXマザーボードとの比較

同じMSI製Micro-ATXフォーム・ファクタのマザーボードで、Z390M-S01と比較的仕様が似ているMAG Z390M MORTARと比較してみた。

MSI MAG Z390M MORTAR M-ATX ゲーミングマザーボード [Intel Z390チップセット搭載] MB4645

オンボード・コネクタの比較

Z390M-S01はMAG Z390M MORATRをベースにして作られたのではないかと思うくらい基板上に配置されているコネクタ類はほぼ同じ。システム・ファン・コネクタの数も同じ。USB 3.1 Gen2タイプCのフロント用コネクタがUSB 3.0(USB 3.1 Gen1)×2ポート分のピンヘッダに置き換えられているくらいしかインタフェース上の違いはない。

Thunderbolt用のコネクタが備えられていて、比較的新しい仕様のインタフェースを実装することで将来の拡張性を持っているという点では、安かろう悪かろうの廉価版OEMと馬鹿にできない部分もある。

オンボード・コネクタの比較
Z390M-S01 MAG Z390M
MORTAR
備考
LGA1151 LGA1151  
CPU_PWR1 CPU_PWR1  
ATX_PWR1 ATX_PWR1  
CPU_FAN1
PUMP_FAN1
SYS_FAN1
SYS_FAN2
CPU_FAN1
PUMP_FAN1
SYS_FAN1
SYS_FAN2
 
DIMMA1/A2
DIMMB1/B2
DIMMA1/A2
DIMMB1/B2
JAUD1 JAUD1  
JFP1 JFP1  
JFP2 JFP2  
JCI1 JCI1  
JRGB1 JRGB1  
JRGB2  
JTPM1 JTPM1  
JTBT1 JTBT1  
JBAT1 JBAT1  
JUSB1
JUSB2
JUSB1
JUSB2
USB 2.0
JUSB3
JUSB4
JUSB3 USB 3.0(USB 3.1 Gen1)
JUSB4 USB 3.1 Gen2 タイプC
JSPI1 JSPI1  
M2_1 M2_1  
M2_2 M2_2  
CNVI_1 CNVI_1  
PCI_E1 PCI_E1 PCI-E 3.0 [x16](CPU)
PCI_E2 PCI_E2 PCI-E 3.0 [x1](PCH)
PCI_E3 PCI_E3 PCI-E 3.0 [x16](PCH [x4動作])
SATA1
SATA2
SATA▼3_▲4
SATA1
SATA2
SATA▼3_▲4
 

入出力等の比較

Z390M-S01のLANコントローラがRealtek製なのに対して、MAG Z390M MORTARはIntel製のLANコントローラを搭載していて、この辺でコスト削減を図っている。一般に、LANコントローラはIntel製よりもRealtek製のほうがCPU負荷が高いと言われているけど、常時CPU負荷が高く、高速通信も継続しなければならない用途(ネットワーク対戦ゲームとか?)でもない限り不便を感じることはないだろう。

マザーボードの異常を示す「EZ DEBUG LED」と呼ばれるLED群や、MSIが「Mystic Light」と呼んでいる単純に電飾を目的としたLEDがすべて廃されているところもコスト削減の一環だろう。電飾関係はケース側面が透明でない場合はまったく役に立たないので、少しでもコストが削減できるなら、真っ先に削りたい機能ではある。

MAG Z390M MORTARに備えられているデジタル音声出力のS/PDIF出力も同様に実装されている。ただ、オーディオ・コントローラがALC892なので、S/PDIFで出力したとしてもどの程度の音質になるかは微妙なところだけど。バックパネルのUSB 2.0ポートはすべてUSB 3.0ポートに置き換えられていて、USBハブを接続すればUSB 3.0ポートをいくらでも拡張できる。MAG Z390M MORTARの単純なダウングレード版とも言えないようだ。

入出力等の仕様の比較
  Z390M-S01 MAG Z390
MORTAR
Z390M-S01
(参考)
VRMフェーズ 8+1+1 8+1+1 8+1+1
オンボード・グラフィックス DVI-I
DisplayPort
DVI-D
HDMI
DisplayPort
DVI-I
DisplayPort
オンボードLANコントローラ Realtek RTL8111H Intel I219-V Realtek RTL8111H
オーディオ・コントローラ Realtek ALC892 Realtek ALC892 Realtek ALC892
スーパーI/O NUVOTON NCT6797 NUVOTON NCT6797 NUVOTON NCT6797
USB 2.0 Type-A 0 4 0
USB 3.0 (3.1 Gen1) Type-A 4 0 4
USB 3.1 Gen2 Type-A 1 1 1
USB 3.1 Gen2 Type-C 1 1 1
音声入出力 3.5mmプラグ×5
S/PDIF出力
3.5mmプラグ×5
S/PDIF出力
3.5mmプラグ×5
S/PDIF出力
PCI-Eスチール・スロット なし あり なし
EZ DEBUG LED なし あり なし

UEFI BIOS

PCが起動した時に「Delete」キーを押しっぱなしにしているとUEFI BIOS設定画面が表示される。

mouseモデルBIOS

調査を開始したのが遅かったので、過去のBIOSバージョンの一覧はわかったけど、イメージ・ファイルの実体を入手することはできなかった。2020年2月現在では、E7C24IM0.103からE7C24IM0.107までのBIOSを置き換えるためのバージョンであるE7C24IM0.108と、E7C24IM0.108以降のBIOSを置き換えるためのE7C24IM0.10Jのみ入手できる。

Z390M-S01のマウスバージョンBIOS一覧
BIOS MRC CPUID Rev. 備考
E7C24IM0.103 不明 不明 不明 削除済
E7C24IM0.104 不明 不明 不明 削除済
E7C24IM0.106 不明 不明 不明 削除済
E7C24IM0.107 不明 不明 不明 削除済
E7C24IM0.108 0.7.1.95 906EA AA  
906EB AA  
906EC A2  
E7C24IM0.10A 不明 不明 不明 削除済
E7C24IM0.10B 不明 不明 不明 削除済
E7C24IM0.10D 不明 不明 不明 削除済
E7C24IM0.10H 不明 不明 不明 削除済
E7C24IM0.10J 0.7.1.112 906EA CA 同上
906EB CA 同上
906EC CA 同上
906ED CA 追加

マイクロコード(CPUID)の追加

新BIOSの更新内容は、公式には「動作の安定性を向上した」というもので、2019年6月現在で日本未発売の第9世代Coreプロセッサ新モデル用のマイクロコードや、当初の仕様を超える大容量メモリ・モジュールへの対応など、互換するハードウェアが追加されたというものではないとされていた。しかし、UEFITool NE A55を使ってBIOSイメージ・ファイルを解析してみたところ、CPUID「906ED」のマイクロコードが追加されていた。

CPUIDはCPUのモデルを特定するものではなく、マイクロアーキテクチャを特定するものなので、ある個体のCPUがどのCPUIDに属するかはS-specを確認しないと正確なところはわからない。S-specはヒートスプレッダに刻印してあるけど、BOX版の場合はパッケージにも書いてある。

おおまかに分類すると、906EA 及び 906EB が第8世代Coreシリーズ・プロセッサで、906EC 及び 906ED が第9世代Coreシリーズ・プロセッサなんだけど、ナンバリングでは第9世代のCore i5-9400FのCPUIDが906EAだったり、Core i3-9350KのCPUIDが906EBだったりする。i5-9400FはU0ステッピング、i3-9350KはB0ステッピングといって、第8世代の技術や設計を流用しているためなんだけど、正確に識別できないので第8世代対応マザーボードのBIOS更新が必要ないというわけでもない。第9世代にも初期生産型のP0ステッピングと脆弱性などを改善したR0ステッピングの2種類があり、同じi9-9900Kやi7-9700KでもR0ステッピングで製造されているものはBIOSの更新をしないと正常に動作しない。

免責事項

念のため釘を刺しておくけど、CPU換装はマウスの保証規定に反する改造行為なので、本記事を根拠としてBIOSが対応したと判断してCPUを換装する場合は完全に自己責任となる。換装中や換装後に発生した問題についてはマウスをはじめ誰も助けてくれないし、上記の表はBIOSイメージの調査結果を書き留めているに過ぎないので換装後の動作を保証するものではない。換装後に動作しなかったり、Windowsのデジタル認証が解除されるような事態に陥ってしまったとしても問い合わせや苦情については一切受け付けないのでご承知おき願いたい。

特に、R0ステッピングのCPUを既存のシステムに導入した場合、BIOSが対応していてもWindowsカーネルが新ステッピングに対応できないために正常に動作しないことがインターネットの記事で報じられている。安定運用にはWindowsのクリーン・インストールが必須という厄介な代物になってしまった。最近のOEM版Windowsはインストール・メディアが付属しないので再インストールの方法はひとつではなく、事前準備も含めてその手順も決して簡単とは言えない。イーサネットもまともに使えない状態でドライバのインストールから始めなければならないので、インターネットに接続できる2台目のPCがないと、怖くてOEM版Windowsのクリーン・インストールなんてできない。システムをゼロから再構築する自信がない人は、悪いことは言わないので安易なCPU換装はやめておいたほうがいい。CPUを自由に換装したり、気軽にOSを再インストールしたりしたいのであれば、最初からPCを自作するべきだ。

MRCリビジョン更新

32GBメモリ・モジュールをDIMMスロットに装着してみて認識するか確認すれば一番手っ取り早いんだろうけど、2019年6月現在では、日本ではECC無しでアンバッファードDIMMのDDR4 32GBメモリ・モジュールは入手できない状態にあった。2020年に入ってからはSamsung製以外のデュアル・ランク32GB UDIMMの製品も増え、2万円前後で入手できるようになったので、128GBメモリ環境構築の敷居は低くなった。

1枚で32GBのSamsung純正DDR4メモリが店頭販売中、実売2.5万円

Samsung純正モジュールを採用した容量32GBのDDR4メモリ「M378A4G43MB1-CTD」が、パソコンショップ アークで販売中だ。

3.7万円から買えるSamsung純正のDDR4 32GBメモリー

128GB物理メモリ環境構築可能情報

MSIの公式サイトでZ390M-S01のBIOSに関する正式な情報を入手できたので、MRCリビジョンが0.7.1.95以降になっているBIOSはJEDEC規格32GBメモリ・モジュールを認識する可能性が高くなった。

自分で検証していないので保証はできないけど、MRCリビジョンが0.7.1.112のBIOSを使用している場合において、Crucialの「CT32G4DFD8266(DDR4-2666 32GB 2-Rank UDIMM)」を4枚使用した時、128GBで認識し、Windows 10のシステム情報でも「実装メモリ(RAM)」に「128GB」と表示されたという有志からの情報を得ている。認識していることと、実際のメモリ空間としてすべてのメモリ・アドレスを使用できるかどうかは関係がないので、各自の実運用での検証は必要だけど、少なくとも、モジュールをまったく認識しないということはなく、メモリ・モジュールへの投資そのものは無駄にはならないことだけは間違いない。

iiyamaモデル/o’zzioモデルBIOS

上記のBIOSの他に、マウスがPC DEPOTブランドの「o’zzioモデル」として出荷しているPCでもZ390M-S01を使っているけど、「mouseモデル」ではBIOSバージョンが「E7C24IM0.10J(イチ・ゼロ・ジェイ)」などとなっているのに対し、「o’zzioモデル」では「E7C24IM0.1OJ(イチ・オー・ジェイ)」となっている。末尾3桁の中央の桁は出荷先のブランドを示していることは容易に推測できる。おそらく、iiyamaモデル用のBIOSは「1IC」などのように中央の桁が「iiyama」の頭文字である「I」になっている可能性が濃厚。iiyamaモデルというのはパソコン工房で販売しているBTOパソコンのこと。

ただ、iiyamaモデルのBIOSイメージ・ファイルの入手が困難であるため、詳細は不明。上記のmouseモデルBIOSとの相違点などもわからないけど、おそらくPOST画面で表示されるフルスクリーン・ロゴの画像が差し替わっている程度の違いだと推測できる。

MSIバージョンBIOS

Z390M-S01はOEMマザーボードなので、正式にMSIから公開されている情報はないと思い込んでいたけど、偶然見つけた中国語版のWEBサイトに情報が掲載されていて、BIOSのバイナリ・ファイルも配布されていた。マウス向けに出荷しているBIOSとは別に、MSIで独自にBIOSを並行ビルドして配布しているようだ。

Z390M-S01

MSIが正式に配布しているBIOSなので、Z390M-S01のBIOSをこれらに書き換えても問題なく動作はするだろう。中国語版のWEBサイトで配布されているものだけど、BIOSのインタフェース言語は英語が基本なので、設定項目が読めないということもないだろう。しかしながら、MSI版への書き換えは推奨しない。販売店からリリースされたものでないBIOSへの書き換えなどはやらないほうが無難だ。

更に言えば、マウスから出荷されているPCのZ390M-S01はM-FLASHが無効化されているので、どうやってMSI版のBIOSに書き換えるのかは各自で考えてもらうより他にない。マウスが配布しているBIOSはM-FLASHを使わずに書き換えるので、MSI版のBIOSに書き換える方法もあるだろうけど、他製品のBIOSを間違って書き込んでしまわないようにするための安全装置、様々なセキュリティやプロテクトを解除するなど、ハッカーのような知識が必要で、はっきり言って楽ではない。

また、BIOSの書き換えに伴ってOEM版のOSの起動に必要な情報も書き換えてしまい、別のマザーボードに変わってしまったと判断されてWindowsのデジタル認証が通らなくなってしまう可能性もあるので、どうしてもやりたいならば、そういったリスクがあることも承知の上で自己責任で試してほしい。

Z390M-S01のMSIバージョンBIOS一覧
BIOS 更新内容 MRC CPUID Rev. 備考
E7C24IMS.100
(7C24v10)
  • New BIOS Release
0.7.1.80 906EA 9A  
906EB 9A  
906EC 9E  
E7C24IMS.110
(7C24v11)
  •  Improve memory compatibility.
  • Update Micro code.
0.7.1.80 906EA 9A 同上
906EB A4 変更
906EC A2 変更
E7C24IMS.130
(7C24v13)
  • Add TG setting
  • Optimize M.2 Genie.
  • Improve S4 resume issue.
  • Improve Intel 750 nvme compatibility.
0.7.1.95 906EA AA 変更
906EB AA 変更
906EC A2 同上
906ED AA 追加
E7C24IMS.140
(7C24v14)
  • Update RST driver to 17.2
  • Update Microcode to support upcoming cpu.
0.7.1.95 906EA AA 同上
906EB AA 同上
906EC A2 同上
906ED B0 変更
E7C24IMS.150
(7C24v15)
  • Update RST driver to 17.5
  • Update Microcode.
0.7.1.110 906EA B4 変更
906EB B4 変更
906EC BE 変更
906ED BE 変更
E7C24IMS.160
(7C24v16)
  • Update Microcode.
  • Improved TPM function.
0.7.1.112 906EA CA 変更
906EB CA 変更
906EC CA 変更
906ED CA 変更

よくある質問

Q1. 自分のPCのBIOSと、記事記載のBIOSとはバージョン番号が異なるが、どちらが新しいBIOSか?

A1. マザーボードの型番は同じでも、メーカーの判断で改良やマザーボードに採用されているハードウェアの変更等に伴ってBIOSをまったく異なるものに変更することがある。情報はナマモノであり、記事に書いたそばから陳腐化していくものなので、記事記載のBIOSバージョンが最新とは限らない。枝分かれしたBIOSについては調べようがないため、バージョン番号がまったく異なる場合、どちらが新しいかはわからない。なお、記事記載のBIOSバージョンに誤記はない。


Q2. 最新のBIOSをダウンロードできるWEBページのURLを教えてほしい。

A2. リテール版として一般に販売されているマザーボードとは異なり、Z390M-S01はOEMマザーボードであり、誰でもアクセスできる場所にBIOSが公開されているわけではない。マウスコンピューターから購入したPCの場合、ダウンロードのためには「U1~」から始まるシリアルナンバー(下図参照)をサポートページで入力することが必要で、サーチエンジンによる検索ではヒットしない場所にある。パソコン工房から購入したPCの場合、シリアルナンバーが「U3~」か「U4~」で始まっていたり、採番の方法が異なるため、同ページに入力してもダウンロードページが開けるとは限らない。

©Mouse Computer Japan


Q3. どこを探しても最新版のBIOSが見つからない。BIOSのバイナリ・ファイルを電子メールで送ってほしい。または、代理してBIOSを公開してほしい。

A3. 購入元の販売店からBIOSの更新を指示されていない場合、BIOSは更新しなくて良いという判断だと理解するべき。無理に最新版のBIOSを探し当てる必要はない。また、マウスコンピューターから正規の手段で購入したPCかどうか当ブログでは判断できないため、BIOSのバイナリ・ファイルを個別に送ることはない。BIOSを更新したことでトラブルが発生したとしても当ブログは責任を持てない。

また、BIOSが更新されるたびにバイナリ・ファイルを希望者全員に送付しなければならなくなるため、現実的ではないし、当ブログはそういったサービスを提供しない。不特定多数がアクセス可能な場所にBIOSを公開することもない。初心者が不用意にBIOSを更新しようとしてトラブルが続発する事態のほうが問題と考えている。

関連記事

参考資料

参考記事


Cooler Master CK550 (Gateron Blue)

最終更新:2021/03/13

最近、長年愛用していたオウルテック(Owltech)のメカニカル・キーボードの調子が悪くなってきた。さすがにCherry MX青軸のメカニカル・スイッチなのでキースイッチそのものの耐久性は申し分なくて、いつ頃買ったものなのか覚えていないくらい使い込んだ。ちょっと型番で調べてみたところ、ほぼ同じ仕様のキーボードが2012年5月頃の発売だったので、最低でも5~6年は使っていたことになる。

それまでは、見た目重視でMac風のキーストローク浅めのパンタグラフ・キーボードなんかを使っていたけど、1年くらいで早々に壊れてしまったので、それに比べれば非常に長持ちだった。1年で壊れてしまったキーボードも3千円くらいはしたので、1万円前後で買ったオウルテックのキーボードは結果的にコストパフォーマンスにも優れていたことになる。

特定のキーの入力に不具合が現れたということなら、キースイッチの故障ということもありえるので、そこのキースイッチだけ交換すれば延命できる可能性があるんだけど、キーボードの横一列全部のキーの入力が不調になり、基板の故障やハンダ付けの劣化や接触不良が疑われる症状が出始めた。キーの入力信号はそれぞれのキーから個別に拾っているのかもしれないけど、電源の配線はさすがに一列単位で入力している可能性が高い。電源を入れてしばらくすると入力が可能になったり不安定ではあるんだけど、使えなくはないのでサブPCのBIOS設定用のキーボードに回すことにして、メインPC用のキーボードを新調することにした。

普段はサブPCをリモート・デスクトップで接続してLAN経由で操作しているんだけど、BIOS設定の操作はさすがにリモート・デスクトップでは不可能なので、安いキーボードでも買おうかと思っていたところだったので、渡りに船だったのもある。

メカニカルキーボード 青軸・OWL-KB109BM(B)II 茶軸・OWL-KB109BM(B)IIB

日本語109Keyキーボード 2種類のメカニカルキースイッチで登場!     型番 OWL-KB109BM(B)II キースイッチ 青軸 カラー ブラック JAN 4942322210889 型番 OWL-KB109BM(B)IIB キースイッチ 茶軸 カラー ブラック JAN 4942322210896 パッケージサイズ:約480(W)x205(D)x80(H)mm OWL-KB109BM(B)II OWL-KB109BM(B)IIB

要求仕様

新調するキーボードに要求する仕様は次のとおり。

  • メカニカル・キーボード
  • Cherry MXキースイッチ青軸(又は相当互換品)
  • 有線USB接続
  • 日本語JIS配列フルキーボード
  • アルファベットのみ刻印(ひらがな刻印なし)

メカニカル・キーボード

メカニカル・キーボードは部品点数がとにかく多いため、昔も今も高価になりやすい要素しかなく、コストダウンにはどうしても限界がある。携帯電話やスマートフォンが普及する前、パソコンが「情報家電」と呼ばれるようになり、1家に1台と言われた時代にはとにかくコストダウンが至上命題で、構造が単純で安価なメンブレン式キーボードの爆発的普及とともに高価なメカニカル・キーボードは絶滅しかけた。作ったところで価格の高さから敬遠され、「とりあえずキー入力ができれば十分」と考えるパソコン初心者には売れなかったのだ。一時期、家電量販店の展示品にはメカニカル・キーボードと明示された商品は姿を消したくらいだ。機械式であるということに販売店の考える付加価値や、購買層にとっての魅力がなかったのだ。

ところが、高価でも入力デバイスにこだわるPC作業を本業とするプロフェッショナルや、熱心なファンとマニアがいたことと、機械式に並々なら情熱を注いでいたメーカーが僅かながらあったために、メカニカル・キーボードの技術が失われることはなかった(残念ながら、純国産の機械式キースイッチの技術はアルプスのものを最後にロスト・テクノロジーとなってしまった)。

ネットワーク対戦のPCゲームがeスポーツと呼ばれるようになると、「勝利のためのデバイス」としてプロゲーマーがメカニカル・キーボードを選ぶようになったことから再び脚光を浴びるようになり、不死鳥のごとく復権を果たしたのだ。もちろん、メーカーとのタイアップなどのプロモーションの効果もあるだろうけど、「仕事の道具」としてではなく、「遊びの道具」として攻めていった海外メーカーのほうがマーケティングに長けていたことの証左でもある。

事務用品としても、メカニカル・キーボードのキーの打ちやすさと、リズミカルな打鍵音はなかなか中毒性がある。強めの打鍵でもキーボード本体がたわむような感覚の少ない剛性の高さに慣れてしまうと、よほどの理由がない限りメカニカルは外せない条件になってくる。ネット通販の隆盛もあり、海外メーカーの製品も格段に入手しやすくなった。

テレビなどの家電のリモコンのボタンとしても親しんでいるということも手伝って、メンブレンの素直で親しみやすい打ち心地が好きだという意見もあるし、巧妙に設計されたメンブレンはメカニカルとの中間のような特性を持っていてゲーミング用途にも十分使用に堪えるものもある。入力デバイスは好みの問題が大半を占めるため、メンブレン派を否定しているわけではない。

青軸キースイッチ

Cherry MX青軸。画像ではわかりにくいけど、「CHERRY」という文字とサクランボのロゴが軸の上に書かれている。(SparkFun Electronics/CC BY 2.0)

青軸なのは個人的な好みによるところが大きいんだけど、少年時代にNECのPCに憧れた世代なので、あのカチカチ言うキーボードこそが高級なキーボードの象徴のような存在だった。その頃の記憶が強く刷り込まれている。

青軸は打っている本人はクリック音が気持ち良く感じるんだけど、周囲の人にしてみると、そのカチカチ鳴るのがうるさいと感じることもあるし、ゲームの実況中継を配信する場合にはクリック音をマイクが拾ってしまって雑音となることで動画の品質問題になることがある。また、キーが入力されたと判定されるアクチュエーション・ポイント(オペレーション・ポイント)に到達する前に、押し込みに少し抵抗があって、それを越えると押下圧が抜けたように感じるタクタイル感が苦手な人もいるんだけど、自分にとってはメカニカル・キーボードと言えばタクタイルでクリッキーでなければならないのだ。

メカニカル・キースイッチといえばCherry MXのことと考えられていた時期があって、今現在でもCherry MXは絶大な支持を得ている定番で人気のキースイッチであることに変わりはない。

Cherry MXの独壇場だった時には、キースイッチの特徴は、「重め・軽め」、「クリック音あり・なし」といったざっくりとした説明がなされていることが多かったけど、他社が対抗して様々な特徴のメカニカル・キースイッチを発表するにあたって、もっと具体的に「リニア」、「タクタイル」、「クリッキー」、「サイレント」、「スピード」などといった専門的な形容を使って説明されることが多くなった。

現在ではCherry MXの設計や製造にかかる特許権の保護期間が終了しているため、KailhをはじめとしてGateronやOutemuといった互換品が登場してきており、使用感としてはCherry MXと大きく変わらないと言われている。Cherry MXは研究・開発費や特許取得にかかる経費がかかっているために、高品質であることも手伝って高価なキースイッチになっている。

キーボードを自作する猛者にはGateronなどのCherry MX互換キースイッチはそれなりに市民権を得ていたけど、メーカー製の完成品のキーボードにCherry MX互換キースイッチを採用するのは稀とされていた。ところが最近では、Cherry MXにこだわらずに手軽にメカニカル・キーボードを試してみたいライトなユーザーのために互換キースイッチを最初から採用している製品も増えてきた。メーカー品に採用しても問題ないくらい品質面には問題がないということの証明でもあり、より安価な互換品にユーザーを奪われている面は否めないけど、圧倒的なブランド力を持つ先駆者であるCherry MXを採用した製品は後を絶つことがないのもまた事実だ。

(余談)特許権

特許というのは、保護期間が満了するまでは発明に関わる権利を独占できるため、発明から生じた利益をすべて発案者の利益に還元できる。一見すると発案者にとって有利な制度のように思えるし、発案者の権利を守ることで新技術の開発を促し、新しい発明をしようという動機に結びつくような制度でなければならない。ただし、意外と知られていないのは、特許を取得するには、その発明の原理や製造方法などを特許権管理当局を通じてすべて包み隠さず誰でも閲覧できるところに公開しなければならないということ。つまり、発明の一部をわざと隠して発案者の秘密にすることで他者が真似できないようにしておいたうえで、特許でも守られるといったことはできないということ。リバース・エンジニアリングによる模倣品の濫造を防ぐことができる反面、保護期間が終了してしまえば誰でもその発明を利用できてしまう諸刃の剣なのだ。本当に秘密にしておきたい革新的な発明についてはあえて特許を取得しないというのも企業の戦略としてはありなのだ。

もっとも、特許を永久の権利としてしまうと、人類全体の技術の進歩が遅れることになってしまうため、特許が保護される期間は「発案から」10年から15年(期間は発明の内容によって異なる)と、著作権の「作者没後」50年から70年(期間は国によって異なる)などに比べると極めて短い。例えば、電話機や洗濯機、冷蔵庫の特許があったとして、この特許が永久に保護され、発案者やその権利を相続した者に新製品を発売しようとする度に逐一許可をとらなければならないとしたら、発案者とその子孫は永久に利益を享受できるかもしれないけど、電話機や洗濯機、冷蔵庫は世界に普及する速さは非常に遅くなってしまう。特許の使用許可をとる手間やその使用料を払いたくないために、異なる原理の同じ用途の発明をしようとするなど非生産的な不毛な競争が起こることにもつながる。発案者の権利を一定期間保護しながら、いずれは人類の利益のためにその技術を誰でも使えるようしてくださいね、という交換条件を受け入れるという折衷案の制度でもあるのだ。

もちろん、権利は行使しないことも可能で、二次元バーコードとしてよく知られているQRコードはデンソーの特許だけど、QRコードの利点を失わせるような誤った使い方をしない限り、特許権を行使しないとデンソーは公言している。このため、QRコードは最初はウェブサイトのURLを入力する手間を省くくらいの活用方法しかなかったけど、現在では暗号化技術と組み合わせて電子決済の手段などともして全世界的に爆発的に普及するに至っている。

フルキーボード(テンキーあり)

PCでゲームはしないし、キーボードは文章やコードの入力に使うため、テンキーは必須。仕事でノートPCを使っていた時期もあったので、アルファキーだけでも文章入力はできるけど、Excelをはじめとする帳票入力などではテンキーがあるに越したことはない。

最近はキーボードをゲームの入力デバイスとして使うことも増えたけど、ゲームで使うキーにはテンキーは含まれないことがほとんど。昔はテンキーの2(下)、4(左)、6(右)、8(上)をカーソル・キーのように使ってゲームを遊んだものだけど、Windowsが普及する前のマウスが一般的でなかった時代の話だ。

なので、ゲームをする場合はテンキーは邪魔でしかないうえ、マウスを動かす場所を確保するためにテンキーが付いていないキーボードを選ぶケースも多く、ゲーミング用途に特化したキーボードはテンキーレスも珍しくない。もっと言えば、チャットなどで文章を入力する必要がないのであれば、アルファキーが60~90個もある必要もなく、カスタマイズ可能な20個くらいのキーを備えた左手デバイスだけで十分なくらいだ。

テンキーの付いてないキーボード自体は昔からあるんだけど、単純に省スペースを目的とした旧来の小型キーボードと、高速入力とアンチゴーストによる正確な入力を追求したゲーミング・キーボードでは目的も設計も異なる。

アルファベット刻印のみ

普通、日本語配列のキーボードではアルファベットのキーにひらがな刻印があるのが当たり前だけど、ローマ字入力しかしない人にとっては無用の長物だし、直線の多いアルファベットに対し、曲線の多いひらがなはデザイン的にマッチしないため見た目にも野暮ったさしか感じない。

しかも、海外メーカーからしてみれば、「日本語話者が使うんだから日本語の文字の刻印があったほうがユーザーフレンドリーというものだ」と考えるのも自然なことだ。むしろ、ローマ字という形でほぼすべての日本語を入力できることのほうが外国人にとっては驚きだろう。ただし、長年ひらがな入力に慣れた人にとってはひらがな刻印は必須なので、一概にひらがな刻印が不要とも言えず、キーボードのメーカーにとっても痛し痒しなんだろうけど、ひらがな刻印のないすっきりした盤面のキーボードを一度は使ってみたかったのだ。

一般用途キーボード

FILCO

前々から気になっていた製品としては、まずFILCO(ダイヤテック)のMajestouch2シリーズ。キーボードとしてはロングセラーと言える製品で、長年の実績に基づく品質の高さには定評がある。製造時期による仕様変更があまりないため、Majestouchの次にまたMajestouchを選ぶという人も少なくない。

ただ、最近日本語配列のキーボードでアルファベット刻印のみのキーボードのラインナップがなくなってしまった。アルファベット刻印のみのMajestouch2はキーボード工房の特別仕様で、一般仕様の倍くらいはする高価なものになってしまった。オプションのキーキャップ・セットを買う手もあるけど、入手性があまり良くないうえ、同じ物を二度買うことになるため割高になる。他にもキーの前面に刻印してあるMajestouch Stingrayという独特な設計のロープロファイル・キーボードも製造しているけど、刻印はキートップにあったほうがいい。

DIATEC|ダイヤテック 製品情報 FKBN108MC/JB2 Majestouch 2 青軸・フルサイズ・かなあり

ARCHISS

次に考えたのは、ARCHISS(アーキサイト)のProgresTouch RETRO。こちらは逆にひらがな刻印のあるラインナップはひとつもなく、ローマ字入力かゲーミング用途に特化している。

キーキャップが二重構造になっていて、キーの刻印は印刷ではなく、内側にはめ込んである白い部品が文字の形にくり抜かれた黒のキーキャップから見えるように設計されているため、摩耗によって刻印が消えてしまうことがない。二重構造であることでキーキャップが肉厚になり、強めの打鍵でも歪みを感じにくいという特性も持っている。これはこれで、手に馴染んだキーボードを長く使いたいという玄人向きな製品。

ProgresTouch RETRO(日本語配列)

使い心地のよさを追求し、長期間使えるキーボードを作りました。 PC黎明期の2色成形を復活させ、安定した打鍵感を得ました。

ゲーミング・キーボード

ここまで考えたところで、果たしてFILCOやARCHISSで決めてしまっていいものだろうかと悩んでしまった。せっかく新調するならもっと遊び心があってもいいのではないかと。

メカニカル、ラバードーム式メンブレン、パンタグラフ式メンブレンなど機構の違いはあっても、見た目はどれでも大差なかった10年前ならともかく、RGB LEDで自分のPCを好みの色で彩るのが当たり前になった現在ではキーボードにも個性があってもいい時代になった。そこで、主にゲーミング用途に考えられている「光るキーボード」も調べてみることにした。

キーボードが光ったところで打鍵している間はキーボードなんて見ていないし、何の役に立つんだ、というもっともな指摘もあるだろうし、自分も少し前までは毒々しい色でギラギラ光るキーボードなんて子供だましだと思っていた。ところが、早朝や夕方など部屋が薄暗い時にパスワードなどを正確に入力する必要がある時にキーが光っていると意外に便利で、PC本体を電飾でデコレーションするよりも実益がある。

CENTURY

センチュリーからはBLACK BISHOPというフルキーボードが出ている。Cherry MXにLEDを取り付けたキースイッチを採用しており、キーボードの盤面が青色に光る。少し前までのゲーミング・キーボードでは盤面を「ゾーン」といういくつかの領域に分けてその範囲でRGB LEDで光らせることができるというものも少なくなかったんだけど、このBLACK BISHOPではすべてのキーのLEDが独立していて、キーの打鍵に反応して光ったり、盤面に照明効果が広がるようになっている。

センチュリーというと、各種インターフェースの変換アダプタやSATA HDD/SSDを収容してUSB接続の外付けHDD/SSDとして使うストレージ・ケースのメーカーとして有名だけど、実はキーボードも作っている。テンキーレスやタイニータイプのものもあるけど、LED制御や発色可能な色などの仕様がまちまちで、センチュリー製のキーボードで揃えたいとは思わないかもしれない。

アルファベット刻印のみの仕様で、Cherry MX採用の割には比較的手頃な価格で青軸なので有力な候補だったけど、LEDの色が青色で固定されていて、カスタマイズができないというのが少し気になったので他のキーボードも物色することにした。

BLACK BISHOP CHERRY 青軸キーボード

CHERRY MXキースイッチ採用 バックライトLED機能搭載!108Key メカニカルキーボード【BLACK BISHOP】!

Razer

Razerからは独自設計のキースイッチを3種類用意しており、Green Switch(Tactile/Clicky、青軸相当)、Orange Switch(Tactile/Silent、茶軸相当)、Yellow Switch(Linear/Speed/Silent、銀軸相当)と呼んでいる。キースイッチからキーボード本体まで自前で用意しているため、価格は高めの部類に入るけど、ゲーマーには高い支持を得ており、その価格に関わらず人気のキーボードになっている。

一応、日本語配列仕様の製品は設定されているものの、店頭に並んでいるものはほとんど英語配列104キーのもので、日本語仕様を見かけることは滅多にない。

Tournament-Grade Mechanical Keyboard – Razer BlackWidow Elite

Mechanical keyboard designed specifically for gaming, features speed and responsiveness like never before – for a more unfair advantage.

Razer Keyboard Switches

Find out which Razer switch is best for you. Green switches are the clicky keys, orange switches are silent keys, yellow switches are linear and silent keys.

HyperX (Kingston)

キングストンというと、メモリ・モジュールやSSDなどの半導体製品の印象が強いメーカーだけど、ゲーミング用途の製品も少しずつ増やしていて、高品位のゲーミング・キーボードも発売している。Razerと同様に、HyperXメカニカル・スイッチを独自に設計して8000万回の打鍵に耐えるというその耐久性の高さをアピールしている。今のところHyperX Red(Linear、赤軸相当)、HyperX Aqua(Tactile、茶軸相当)の2種類があるけど、まだ発売されて間もない製品なので、HyperX Red以外のキースイッチの組み合わせのキーボードはまだ日本では入手できない。

Alloy Originsメカニカルゲーミングキーボード | HyperX

HyperXメカニカルスイッチ キースイッチは、応答性と正確性のバランスを調整した、移動時間が短く作動力が低いカスタムデザインです。信頼性も高く、品質が低下することなく8000万回のキー入力に耐えます。 詳細 航空機グレードのフルアルミボディー アルミ製ケースにより、激しい操作でも、ゲームが緊迫しても、毎晩戦いが続いても、キーボードの構造は堅固なままで、安定感があります。 取り外し可能なUSB

Logicool G

マウスやキーボードといった入力デバイスの分野ではロジクールは外せない。サンワやエレコムのデバイスでなければ、特に意識せずにロジクールを選んでいたという人も少なくないだろう。実際、今使っているマウスも、まったくこだわりはないんだけどロジクールだ。

「ロジクールG」というブランド名でゲーミング用のデバイスも広く展開している。独自設計のキースイッチをロープロファイルも含めると8種類も用意している。今回は、ロープロファイル3種は考えに入れていないのでとりあえず5種類挙げると、GX BLUE(Clicky/Tactile、青軸相当)、GX BROWN(Tactile、茶軸相当)、GX RED(Linear、赤軸相当)、ROMER-G TACTILE(Tactile/Speed)、ROMER-G LINEAR(Linear/Speed)がある。Cherry MXキースイッチを採用しなくてもひととおりの特性を持ったキーボードを製造できる。

要求仕様を満たしているキーボードはG512-CKがあったんだけど、調べ方が悪くて、仕様に関する情報にたどり着けなかったので候補から外してしまった。

ロジクールG512メカニカル ゲーミング キーボード

G512 LIGHTSYNC RGBメカニカル ゲーミング キーボード 無駄がない。だから高性能 高いパフォーマンスを発揮するゲーミング キーボード。メカニカル スイッチは、Romer-Gタクタイル、Romer-Gリニア、GX Blueの中からお好きなものを選べます。アルミニウム合金の筐体に高度なゲーミング テクノロジーを豊富に搭載し、シンプルで丈夫なキーボードに仕上げました。イメージはRomer-Gキーを搭載したG512です。

Cooler Master

Gateronキースイッチ。CK550では茶軸の設定はない。透明なのでちょっと判読しにくいけど、「GATERON」とロゴが刻印してある。Gateronの互換スイッチもあり、もはや何がオリジナルなのかわからなくなってきた。

クーラーマスターというと、そのブランド名が指すとおり、空冷・水冷を問わず各種CPUクーラーやケースファン、静音性よりも冷却性能を重視したPCケースなどを作っていることで著名なメーカー。一定の支持を得てはいるけれど、コストパフォーマンスを重視した製品が多く、究極の性能を追求した高級な高性能製品を作っているという印象はあまりない。逆を言えば尖ったコンセプトの製品を作っていないので品質は安定しているという印象。

キーボードを作っているというのはちょっと意外だったけど、Gateronのキースイッチを全面的に採用することでコストを抑えつつ、上記のRazerやKingstonのようなゲーミング・キーボードを実現している。Gateronは俗に言う、いわゆる「中華軸」で、最初は安かろう悪かろうのコピー品と思われていた部分もあったんだけど、特許権の切れたCherry MXの設計を忠実に模倣することでオリジナルと遜色ない打鍵感を得ることに成功しているそうだ。

他に、他社製のキーボードには様々なインターフェースを操作する独立したメディア・コントロール・キーやマクロ・キーなどが搭載されているけれど、クーラーマスターはそういったものをすべて廃し、キーやスイッチの数を必要最小限にしている。コスト削減のために余計なものは何も付けない、クーラーマスターらしい製品と言えるだろう。

Cooler Master: CK550

No-nonsense, No Compromise …

Cooler Master: CK530
Cooler Master CK550 Blue 日本語 青軸 ゲーミングキーボード KB458 CK-550-GKGL1-JP
posted with AmaQuick at 2020.04.24
参考価格: ¥9,555 (2020-04-24)
Coolermaster (2018-12-25)
Cooler Master CK530 ゲーミングキーボード テンキーレス CK-530-GKGR1-US KB490
posted with AmaQuick at 2020.04.29
参考価格: ¥11,198 (2020-04-29)
Coolermaster (2020-04-24)

Cooler Master CK550

色々悩んだ挙げ句、Majestouch2やProgresTouch RETROと大体同価格帯で、全キーのRGB LEDが独立しているCooler Master CK550を選んだ。

RazerやHyperXのキーボードも捨てがたかったんだけど、それらのキーボードはあくまでも「ゲームに勝つために作られたキーボード」なので、文章の執筆に主に使う自分にとっては過剰な性能のように思えた。ロジクールGもよく調べていれば候補に入っていたんだろうけど、後になって調べ直しても価格がひとまわり高いのと、キーの発色が少し地味だったので、最終的には候補から外れていただろう。

外箱

元は英語配列の104キーボードなので、パッケージには英語配列の写真が印刷されているけど、「日本語レイアウト」というシールが貼られていて、誤解がないようにしている。また、青軸に似たタクタイル/クリッキー仕様である旨を示すシールも貼られている。

面白いのは、カーソル・キーのあたりに穴が開けられていて、キータッチを試せるようになっているところ。繊細な日本人の気質だと、お試しと言いつつ買う気もないのに悪戯半分に押され続けてキースイッチを壊されてしまったり、手垢がついてしまったりするのを気にするところだろうけど、海外のユーザーは買う前に自分の手や指の延長となるキーボードの使い心地を試してみたいという要望の方が多いんだろう。Razerのキーボードのパッケージにも似たような穴が開いていた。この辺は国民性の違いといったところか。

海外渡航経験からすると、そうでもしないと、パッケージを店頭で開けられてしまって箱や商品をズタボロにされてしまうということも大いにありえる。子供がおもちゃを箱から出してしまって店の床で遊んでいるのもザラにある光景だし、袋の中身を早々に食べ始めてしまい、レジ担当者にバーコードの書かれた袋だけ差し出す食いしん坊な大人も珍しくない。中身を食べるのが先か、お金を払うのが先かは彼らにとっては些細な問題で、それが「合理的」ということなんだろう。

打鍵感

Gateronのキースイッチは今までに触ったことがなかったのでわからなかったんだけど、非常に軽快な打ち心地のうえ、青軸独特のクリック音も非常に小気味が好い。Cherry MXの青軸と打ち比べてみたけど、Cherry MXよりも軽く感じる。軽く感じる理由のひとつは、キースイッチが並べられているパネルがアルミニウム製なので硬質で雑味のない反発感を感じるからかもしれない。互換品ではあるけれども、GateronがCherry MXに引けを取らないと言われるのもわかる気がする。あとはキースイッチの耐久性だけど、大抵キースイッチが故障する前にキーボード本体の回路が故障してしまうので、それほど心配することもないだろう。

キースイッチの他にスタビライザーが入っている関係もあって、テンキーの「+」、「0」、「↲(Enter)」の各キーの打鍵感が他のキーと異なる。キーの端のほうを打ってもキーが斜めに入るような感覚がない代わりに、他のキーと比べて底打ちした時の硬めの反発感が弱く、押下圧も強めに必要なので少し青軸らしさがない感じがする。個人的にはShiftキーくらいの打鍵感だと良かった。スペースバーとフルキー側のエンターキーは一番打鍵される頻度の高いキーなので、多少打鍵感が重めでもあまり気にはならない。

発光

CK550の最大の特徴でもあるRGB LEDによるキーの発光は次の画像のとおり。キーボード本体にキーを囲むベゼルがないフローティング・デザインで、キースイッチを固定するパネルがむき出しの状態になっているため、LEDの光はやや直線的に広がる傾向がある。デジタル・カメラで撮影するとその傾向はかなり顕著なように見えるけど、周囲が照明で照らされていれば、もう少しソフトな光り方になる。

RGB=(127,191,255)

キーキャップを外してみると、このように発光している。キースイッチの部品は透明になっているのである程度は光が回り込むようにはなっているけど、LEDがスイッチの上側についているため、キーの刻印の上半分が強く発光する傾向がある。特に、砲弾型と呼ばれる一般的なLEDから出る光束はフィラメントを熱して発光させる白熱電球から出るものとは異なり、垂直方向に集中する傾向が強いため、何かで反射させたり散乱させたりしないと均等に照らすのが難しい照明。

各色の発色例

RGB LEDにありがちな、特定の色が弱かったり強かったりといった偏りはあまり感じられず、好みのミキシングをすることでお好みの色を再現できる。強いて言うなら、白系にした時に若干青が強いかな、と思ったけど、カメラがブルーライトを拾いやすいというのも理由にありそう。

制御ソフトウェア

キーボードの制御ソフトウェアはCooler Masterのウェブサイトからダウンロードしてインストールする。初回起動のときにキーボード本体に実装されているファームウェアの更新を行うんだけど、2回連続で書き換えに失敗したため冷や冷やしたけど、3回目の更新でなんとか成功した。

ソフトウェアでは照明関連の設定ができるのはもちろん、独自のマクロキーを設定できたり、キーのマッピングを変更してしまうこともできる。ワイヤーキープラーが付属しているので、配置を入れ換えたキーのキーキャップを入れ換えれば、別に交換用キーキャップを購入する必要もない。

KVMスイッチ

新しいキーボードなどの入力デバイスを手に入れたら、自分が普段使っているいくつかのPCで切り換えて使いたいというのはよくある要望。確かに、PC 1台につき1基ずつキーボードやマウスを準備するのは能率的ではないし、コストもかかる。しかし、もっとも原始的なキーボードやマウスであれば消費電力は大したことはないけれど、RGB LEDを100個以上搭載しているゲーミング・キーボードは消費電力が高くなることは想像に難くない。実際、一部のKVMスイッチではLEDは点灯するものの、電力が不足して肝心のキーボードとしての入力機能が動作しないというケースもあるそうだ。

今回は、もっとも単純なKVMスイッチであるエレコムのUSB切替器を使ってみた。切替器自体の消費電流が100mAとあり、USB 2.0の定格最大電流は500mAなので、キーボードやマウスに供給できる電力は400mAに制限され、電圧は5Vなので2Wということになる。足りるかどうかはやってみないとわからなかったけど、結果として2台のPCのどちらから電力を供給させてもCK550は全機能を使用できた。片方のPCにはCK550を制御するためのソフトウェアをインストールしなかったけど、キーボードに記憶させたパターンで独立して点灯させることもできた。高級なKVMスイッチはたくさんあるけれど、簡単な仕組みのものを使ったのがむしろ良い結果につながったのかもしれない。

チャタリング発生

最初は好調だったCK550だけど、買ってから1年ほどでチャタリングが頻発するようになってしまった。説明するまでもないと思うけど、チャタリングというのは、1回しかキーを押していないのに複数回キーが押されたと判定されてしまうキーボードの不具合のこと。キーを押したのに反応がない不具合も含むことが多い。メカニカル・キーボードの弱点のひとつで、キースイッチの接点不良が主な原因。

アルファベットのキーならば、多少打ち方を工夫すればなんとかなるんだけど、EnterキーやCtrlキーまでチャタリングを起こしてしまうようになると、さすがにストレスを禁じ得ない。やはり、中華軸であるGateronに過度な期待は禁物だったか、と残念に思った。ただ、CoolerMaster謹製のRGB LEDの発光具合は非常に気に入っているので、なんとかして使い続けたい。

フリーウェアなどを用いてソフトウェア的にチャタリングが起こっていないかのように誤魔化す方法もあるんだけど、根本的な解決にはならないし、有線キーボードでチャタリングを我慢するというのも気が進まない。無線接続のキーボードなら環境要因もあるので、ある程度は致し方ないんだけど。

そこで、キーキャップを外し、別の目的で買ってあった呉工業の「接点復活スプレー」を使って整備してみることにした。細部に噴射するためのノズルを装着して薬剤を軸の中に流し込んでみる。何度かキーを叩いて薬剤を馴染ませてみると、見事にチャタリングが解消した。整備する手間を惜しまなければ十分使える。

Gateronの品質にはやや疑問が残る結果になってしまったけど、すべてのキーでチャタリングを起こしているわけではないし、ハンダごて片手にキーボードを自作してしまう猛者達の間では一定の評価を得ているものなので、Cherry MXには一歩及ばないものの佳作のキースイッチであると信じたい。

KURE 接点復活スプレー #1424 220ml
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参考価格: ¥353 (2021-03-13)
KURE(呉工業)

参考記事