なくしたと思っていたラペルピン

最終更新:2017/01/13

Lapel pins

アメリカからの帰国のどさくさに紛れて、なくしたとばかり思っていたラペルピンが出てきた。

どこから出てきたかというと、カメラバッグの底から。どうやら「絶対になくさないところ」ということで、私がアメリカに持って行った所持品の中で最も高価な一眼レフカメラと一緒に入れておいたようなのだ。くしゃくしゃになった紙袋から出てきた。いわゆる「しまいなくし」というやつ。

ラペルピンというのは、レディースファッションで言うところのブローチにあたるもの。ブローチはモチーフが大きく重いものが多いので安全ピンで留めるものが大半だけど、最近は針で刺し、裏側からクラッチ(キャッチ)で留める比較的小さなものを「ピン」と呼んで区別しているようだ。

最近はすっかりメンズスーツのアクセサリーとしてファッションの定番になってしまった感もあるラペルピンだけど、競合するメーカーが増えたせいもあってか、凝ったデザインのものが増え、逆にシンプルなデザインのものが減ってしまった。心なしか、楽譜の音符や楽器をモチーフにしたデザインが多いように思える。

私がなくしたと思っていたものは、まだラペルピンが「男のささやかなオシャレ」だった頃のもので、実にシンプルなデザイン。今こういうものを探してもなかなか見つからない。タイタックまで範囲を広げればないことはないけれど、主にタイを留めることを目的としたものなので、簡単に抜けないようにクラッチの形がそもそも異なるし、主張しないデザインが多く、石が小さいのでラペルにつけるとあまり目立たないのが欠点と言えば欠点。ガラス玉ではなく本物の宝石や貴石、真珠、金やプラチナを使っているものも多く、ラペルピンに比べて価格が高めなのも特徴。

一緒に出てきたのが、シアトルのミリタリーショップで買ったアメリカ陸軍の兵科徽章。紙袋にはこれしか入っていないと思い込んでいたのだ。紙袋はそれらを買った時に入れて渡されたものだった。レシートも一緒に入っていた。懐かしい。

金色の右上のものがアメリカ陸軍輸送科(トランスポーテーション・コープス)、右下のものがアメリカ陸軍需品科(クォーターマスター・コープス)、左下がアメリカ陸軍武器科(オーディナンス・コープス)のもの。いずれも補給部隊。マニアックなことに、私は補給部隊が好き。

いずれも左右の襟にひとつずつ、必ず一組で身に着けるものなので、お店の人に「ふたつずつにするかい?」と聞かれたけど、コスプレをするわけでもないので「ひとつでいいよ」とひとつずつにしてもらった。

実物のタービンブレードで作ったピン

最終更新:2017/01/13

turbine blade pin

ネクタイピンだったタービンブレードをラペルピンに改修してみた。

元はボーイング747(通称「ジャンボジェット」。今では中型以上のジェット旅客機をまとめて「ジャンボ」と呼んでしまう傾向にあるけど、元ネタはコレ)に取り付けられていたジェットエンジンの一部だったもの。1万時間以上空を飛んでいたものを定期交換し、あとは捨てるだけだったものだけど、タービンブレードは特殊鋼でできていて、およそ20cmほどの長さの1枚が10万~20万円もするそう。

壊れているわけではないし、それをただ捨ててしまうのは忍びない、と全日空の整備士のみなさんが業務外の時間を利用してブレードをネクタイピンとして生まれ変わらせた。上でも書いたように、特殊鋼でできているので輪切りにするだけでもかなりの手間がかかったに違いない。それを手売りで売り出してみたところテレビでも紹介され、当時大変な人気を博した。「このタービンブレードは全日空所属のJAxxxx番機の一部として一万何千時間空を飛んでいました」という証明書までついているニクい演出もされている。ひと目で気に入ってしまい、当時貧乏な学生だった私が5千円ほどを払ってまで、手に入れたいものだった。

後にデザインも洗練されてANAの機内販売(通販)の正式商品に採用された。メッキもかなり厚くされ、新品じゃないかと思うくらい綺麗に作り替えられていた。ネクタイピンひとつが確か1万円以上もする高額な商品だったが、これまた在庫切れがかなり長く続くほどの人気商品だった。原材料が廃品だけに、入荷が一定ではなかったのだ。今はもうラインナップに残っていないレアアイテム。私も通販で購入してひとつ持っていたが、「これさえあれば絶対に落ちませんから」と、友人の門出に縁起物としてプレゼントしてしまった。

手元に残っているタービンブレードのタイピンは手作りだけあってメッキも薄く、切断面以外のジェットエンジンの高熱にさらされていた部分は焦げたか沸騰したかのような傷跡がたくさん残っている。それがまた味があって、そのタービンブレードが「良い仕事」をした証であることを主張しているかのようだ。

だいぶ前にネクタイピンの根元の溶接部分が折れてしまい、ペンケースの中にずっとしまっていたのだけど、昨日ふと「ピンバッジの金具(針の部分とバタフライクラッチ)を裏に接着したらラペルピンとして使えないだろうか」と思い立って手芸・クラフト専門店のユザワヤさんに行ってみた。

同じようなことを考える人は結構いるようで、金色、銀色、黒色の3色(針が極細のものもあった)が揃っていてオリジナルのピンを作れるようになっていた。

ついでに金属用の接着剤も買ってきた。最初は瞬間接着剤にしようかと思ったのだけど、過去の経験からメッキ部分が曇る可能性があった。そのため、硬化するのに時間がかかってもメッキが曇りにくいもの、ガッチリ固まるものを選んだ。ピンの根元は不意にテンションがかかることがあるので、瞬間接着剤特有の衝撃への弱さも問題になりえたからだ。最初の数分は動かせるので位置調整もしやすい。ピン側の接着面に多めにつけ、はみ出した接着剤は固まる前にカッターナイフで切り取ってやれば綺麗に仕上がる。

で、出来上がったピンが冒頭の写真。溶接したかのようにガッチリ固まっている。

取り付けられてから取り外されるまで一万時間以上も事故がなかったということから、就職活動の時も「落ちないお守り」として身に付けていたし、2001年9月11日のアメリカ同時多発テロの直後に仕事で飛行機に搭乗して日本の裏側まで行かなければならなかった友人にもお守りとして持たせた。友人も無事に帰国して、今も私の手元にある。これからも私の「正念場」のお守りとして大事にしたい宝物のひとつである。

Canon EF50mm f/1.8 II

最終更新:2016/09/06

Canon EF 50mm f/1.8 II
f/1.8 1/2500秒 ISO-100

最近購入した単焦点50mm標準レンズ。私が持っているEOS 40DはセンサーがAPS-Cサイズなので、実効焦点距離80mm。

定価が12,000円で、首都圏のヨドバシカメラあたりで買うと9,280円(ポイントを割引として計算に入れると8,352円)くらい、Amazon.co.jpでは9,000円弱で、初めての追加レンズとしては大変コストパフォーマンスが高い。単焦点の明るいレンズを手軽に試してみたい人にお勧め。

USM(ウルトラソニックモーター)もSTM(ステッピングモーター)もついていないので、少し駆動音が大きくてオートフォーカスに若干時間がかかるけど、動かない物を撮るならあまり問題にならない。IS(イメージスタビライザー=手ぶれ補正)もついてないけど、明るいのでシャッタースピードを稼げるからそれも大きな問題にならない。

余計なものが何もついていないのでとにかく軽いという特徴もある。この辺は女性にとっては重要な部分だと思う。

f/1.8でシャッタースピードが速くなるから被写界深度がすごく浅いので、Avモード(絞り優先)でオート撮影するとピントがすぐズレたり、露出アンダーやオーバーになりやすいので、Mモード(マニュアル)がオススメ。

撮影した結果の成功・失敗がはっきりしているので、Avモード(絞り優先)やTvモード(シャッター速度優先)、P(プログラム)モードしか使ったことがなくて、マニュアルモードに慣れていない人の練習台に持って来い。写真なんてカメラ付き携帯電話(スマートフォン)で十分だと思っている人や、ボディのレンズキットに付属してくる標準ズームレンズでは絞りやシャッター速度の違いがあまり感じられない人には目から鱗かも。

ただし、ユニットを構成する6枚のレンズを含めてプラスチックを多用しているので傷つきやすく、52mmΦプロテクターが必須。高級なレンズでは普通はステンレスを使っているマウント側もプラスチックなので、取り扱いが悪かったり過酷な環境で使用し続けると簡単に壊れるかもしれない。その時は同じものを買い換えるか、比較的手頃なEF40mm F2.8 STMあたりに乗り換えるといいと思う。

それでも、f/1.8という明るさは魅力的。レンズに入射した外界の光がC-MOSセンサー(銀鉛写真カメラのフィルムにあたる部分)に当たるまでの減衰が、f/1.8の場合3.24分の1、f/2.8の場合7.84分の1になる。F値は平方根なので、二乗すると光の総量が求められる。つまり、光の総量が約2.42倍も異なるということ(あくまでも概算だけど)。これは大きい。

被写体は、近所にあるバーの屋外ディスプレイを撮影させてもらった。


EF50mm f/1.8 IIは残念ながら現在は生産が終了しており、後継のレンズとしてEF50mm F1.8 STMが2015年5月に発売された。定価は19,500円で、2016年3月現在の実勢価格は大体15,000円くらい。

自分のカメラで試してみたわけではないので満足のいく写真が撮影できるかどうかはちょっと判断しかねるけど、EF50mm f/1.8 IIの自重が130gだったのに対して160gとあまり変わっていないうえ、大きさはむしろ小型化されている。フォーカスリングの幅が広がり、非常に前後が薄いEF40mm f/2.8 STMや、前縁部にかなり幅の狭いフォーカスリングがあったEF50mm f/1.8 IIよりも操作しやすい。一杯まで開いてf/1.8で撮影する時に必要かどうかは微妙だけど、STMを搭載しているのでオートフォーカスの駆動音は静かになった。全体的に「中身が詰まった感」が増し、EF50mm f/1.8 IIよりも安定感というか安心感がある。

最短撮影距離も45cmから35cmまで短縮され、より接写が可能になった。また、構造的には絞り羽根が5枚から7枚に増え、日本人好みのボケがより綺麗にボケることが期待できる。

他にもf/1.8以下の明るい標準/広角の単焦点レンズもあるけど、定価からして5~6万円と高価なので気軽に試せる価格でもない。割高感はあるかもしれないけど、マウントがステンレス製になって耐久性は確実に上がっているので、買い換えの必要がなくなったと思えばコストパフォーマンスは良いには違いない。

生産が終了してしまったことでEF50mm f/1.8 IIの新品は希少になってしまい、価格は定価を超えるほど高騰している。今から買うならEF50mm F1.8 STMをお薦めしたい。7,500円の差額分は高性能化している。もっとも、カタログ・スペックだけではなんとも言えないのがレンズの難しいところなんだけど。

どうして応用の利かなそうな単焦点レンズをこうまでして推すかと言うと、当初は遠くの飛行機を撮影する目的で望遠ズームレンズにばかり目を奪われていた自分が知人のEF50mm f/1.8 IIで撮影した写真を見せてもらい、明るい単焦点レンズの魅力に気付いたから。カメラに付属してきたズームレンズを使っている人に単焦点レンズの魅力に気付いて欲しい。

一見、レンズは透明なようだけど、1枚通過するたびに光は徐々に減衰していく。下手なガラスよりもプラチックのレンズのほうが透明度が高いなんていうこともある。ズームレンズは近距離から遠距離まで対応するために10枚を超えるレンズを内蔵していることも珍しくない。その点、単焦点レンズはレンズの枚数を減らせるので光の減衰を少なくすることができ、絞りの調整がきくようになる。選択できる絞りの幅が広がるということは表現の幅も広がるということに直結するので、安いものでもいいから単焦点レンズをひとつ持っていても損はない。室内でテーブルの向こう側に座っている人を撮影する場合なんかは付属のズームレンズでは解放してもf/4にしかならなくてシャッター速度が上がらず、ブレブレの写真になってしまうなんていうこともよくある。