StarTech.com USB3HDCAP HDビデオ・キャプチャ

最終更新:2020/07/29

HDMIの映像出力信号をPCにキャプチャする機器を長らく探していた。主な目的はデジタル家電のシステム操作画面やOSD(On Screen Display)のスクリーン・ショットを撮るためだ。

これまではデジカメを三脚に据え付けてテレビの正面に置き、マニュアル・フォーカスとタイマーを使って手ぶれがないように慎重に撮影していた。画素にピントが合っていると画像にモアレが生じるため、その後、Photoshopなどで少しブラーをかけて修正していた。控え目に言っても手間がかかる。

Windows PCならば、キー操作ひとつでのウィンドウのスクリーン・ショットを撮れるように、デジタル家電の画面もワンタッチで撮影できればいいのに、と考えていたのだ。

機器の選定

ビデオ・キャプチャ・ユニット

当初はI-O DATAのHDMIキャプチャ・ユニットを軸に検討していたんだけど、入力インターフェースがHDMIのみのうえ、電子暗号化された信号はキャプチャできない。他にもAVerMediaやElgatoのビデオ・キャプチャも有名だけど、暗号化されていない信号しか記録できない点は同様。

そもそも、著作権法等の法令順守の観点から、暗号化されているHDMI信号を直接キャプチャできるデバイスは存在しない。そのため、信号に電子暗号であるHDCP(High-bandwidth Digital Content Protection)がかかっていた場合、それを復号(解除)する機器が別途必要となる(後述)。

HDMI入力にこだわっているのかと言われれば、こだわってはいない。デジタルのほうが画質がいいのは当たり前だけど、画面表示がなんとなく伝わればいいのでそんなに高画質は必要としていない。よって、怪しげで不確かな方法でなければ、特にデジタル信号である必要もない。極論、フルHD解像度相当でありさえすれば、アナログ信号からのキャプチャでも問題ない。

デジタルが電子暗号に阻まれてダメならアナログで記録すればいいじゃない!

ということで急浮上してきたのが、StarTech.comのビデオ・キャプチャ・ユニット「USB3HDCAP」。StarTechはマニアックなニッチ需要を拾い上げるPC周辺機器をよく作っているメーカーだけど、一般消費者向けだけでなく、産業用機器も手掛けているため全体的に品質は良く、それほど悪い噂を聞いたこともない。

USB 3.0接続ビデオキャプチャデバイス – HDMI、DVI、VGA | ビデオアダプタ | StarTech.com

USB3HDCAPは4K解像度には対応していないものの、フルHD 1080pまで対応しており、入力信号はHDMI及びDVI-Dのデジタル信号はもとより、VGA(D-Sub)、コンポーネント、コンポジットのアナログ信号にも対応している。そのため、出力側デバイスをほとんど選ばないのが最大の特徴。

もともとは、業務用情報機器やそのソフトウェアの操作方法などのチュートリアル動画を作ることなどを目的に設計されているものだ。

StarTech.com USB3.0接続HDMI/DVI対応ビデオキャプチャー USB3HDCAP
posted with AmaQuick at 2020.04.30
参考価格: ¥27,095 (2020-04-30)
スターテック(STARTECH.COM) (2014-11-18)

HDMI信号VGAコンバータ

上述したHDCPを復号(解除)する機器というのが、ゲーム実況配信などの界隈ではよく知られている「HDMIスプリッタ(分配器)」と呼ばれるもの。入力信号の分配時にHDCPを復号化したうえで、生の信号にHDCPをかけ直さないでそのまま出力側に流すという仕組み。

DVI、HDMI及びDisplayPortのHDCPは、出力側(パソコン、ゲーム機等)と入力側(モニタ、ディスプレイ、テレビ等)を1対1で接続することを前提としており、お互いの機器情報を交換することで信号を暗号化し、ケーブルの途中から信号の内容を盗み見ることができないようにする。したがって、HDMIは、USBと同様に、電源タップのような単純な仕組みのたこ足配線はできないようになっていて、信号線を分岐させるだけでは画面は表示されない。分配、つまり信号を複製する前にHDCPを一度復号することが必要になる。

ただし、この「HDCP解除」という機能は信号分配という主目的のために必要になる副次的なものであるうえ、著作権や商標権、肖像権を含む他者の権利の侵害を助長しかねないものであるため、仕様におおっぴらに書いてあることはまずない。言ってみれば「裏技」のような機能なのだ。

そのうえ、この種の製品は品質管理に問題があることも多く、最初はまともに動いていたようでも、数ヶ月で不調になるなんてこともある。当たり外れも多く、まともに動作する良品が届くまで何度も返品・交換を繰り返すのも覚悟で手を出すものだ。

VGAでビデオ・キャプチャ「USB3HDCAP」に入力するにしても、HDCPに対応しているコンバータが必要になる。そこで、サンワサプライから発売されているHDMI信号VGAコンバータ「VGA-CVHD1」を選んだ。

VGA-CVHD1【HDMI信号VGA変換コンバーター】HDMI信号をミニD-sub(HD)15pinアナログ信号(VGA)と音声信号に変換できる(HDMI to VGA)コンバーター

他にもHDMIをVGAに変換する機器やケーブルはたくさんあるけど、HDCPに対応していないものがほとんどのため、「HDCP対応」とちゃんと書いてあるインテリジェント変換のものを選ぶ必要がある。インテリジェント変換のため、HDMIからVGAに変換することはできるけど、VGAからHDMIに逆変換することはできない。

サンワサプライ HDMI信号VGA変換コンバーター VGA-CVHD1
posted with AmaQuick at 2020.05.01
参考価格: ¥3,330 (2020-05-01)
サンワサプライ (2013-10-01)

導入

USB3HDCAP ビデオ・キャプチャ・ユニット

梱包は非常に簡素で、ボール紙の箱に本体と付属品が無造作に入れてある。USB 3.0ケーブルと、VGAをDVIに変換するアダプタが付属している。USB 3.0の縦に長いタイプBコネクタは初めて見た。S端子コンポーネント端子コンポジット端子を接続するためのケーブルも付属しており、自分で用意しなければならないのはディスプレイのケーブル(HDMI、DVI-DまたはVGA)くらい。

ドライバはアップデート推奨

今時のデバイスにしては珍しく、次の画像のようなドライバやソフトウェアのメディアが付属している。

メーカーのWEBサイトからダウンロードもできるけど、キャプチャ・ソフトウェアの「Stream Capture」だけアップデートしてしまうと調子が悪くなる。具体的には、USB 3.0で接続しているのにUSB 2.0と誤認識されてしまい、映像信号の取り込みが強制的に終了してしまう。

これを回避するには、ドライバを先にアップデートして、PCを再起動してからStream Captureをアップデートする。USB接続とはいえ、汎用機器ではないので、接続すればすぐに使えるというわけではない点には注意。

付属のCDからインストールしたソフトウェアで機能的には必要十分なので、無理にアップデートしないというのもひとつの手だ。高機能なキャプチャ・ソフトウェアが必要ならドライバだけアップデートしてOBSなどのサードパーティ製ソフトウェアを使ったほうがいい。

古いドライバだと、映像出力がフルHDの1080pでも、720pとして識別されてしまう問題(後述)があったけど、最新のドライバに更新すると改善するようだ。メディアに入っているドライバではなく、インターネットからダウンロードしたものを最初からインストールしてもいいだろう。

VGA-CVHD1 HDMI信号VGAコンバータ

次の画像は、HDMI信号VGAコンバータのパッケージ。「変換コンバータ」という語は「変換変換器」と言っているようなものなので、やや引っかかるものがあるけど、横文字を覚えるのが苦手な人もいるのでメーカーもその辺は承知のうえだろう。

5cm四方の小さなデバイスで、入力専用のHDMI端子と、出力専用の映像用VGA端子と音声用3.5mmピンジャックが備えられているだけの簡素な外観。USB 2.0 Mini-B端子もついているけど、これは給電専用でデータの入出力には用いない。更に言えば、HDMIから電源が供給されていればUSBからの給電も実は必要ない。

項目仕様
入力端子HDMI Type A(19pin)×1
USB 2.0 Mini-B×1(給電用)
出力端子ミニD-sub15pinメス×1
3.5mmステレオミニジャック×1
HDCP対応
対応解像度・
対応リフレッシュレート
1920×1080(FHD/1080p)(60Hz)
1600×1200(60Hz)
1680×1050(60Hz)
1440×900(60Hz)
1440×1050(60Hz)
1360×768(60Hz)
1280×1024(60Hz)
1280×960(60Hz)
1280×800(60Hz)
1280×768(60Hz)
1280×720(HD/720p)(60Hz)
1152×864(75Hz)
1024×768(60/70/75/85Hz)
800×600(60/72/75/85Hz)
640×480(60/72/75/85Hz)

接続試験

HDMIをVGAに変換してしまえば、キャプチャの画面にまったく映らないということはまずないだろうとは思ったけど、この種の機器に想定外の出来事は付き物。まずはセオリーどおりに次の画像のとおりに接続して試験してみた。

HDDレコーダ/Blu-rayレコーダからVGAコンバータを経由した接続
(図はあくまでも接続方法を模式化したものであり、コネクタの物理的配置とは異なる。)

キャプチャ・ソフトウェアに表示させてみたら、画面の左端に黒い余白が表示される。「不具合発生?」と思って仕様をよく確認してみたら、HDMI信号VGAコンバータの能力の限界のようで、不具合ではないようだ。

東芝製HDDレコーダ D-M470 のメイン・メニュー
左端に黒い線が映り込んでいる。

パッケージやWEBサイトの仕様の説明には次のような注意書きが書いてあった。黒い余白が出てしまうのはどうやら仕方ないことのようだ。

  • 液晶テレビ、プロジェクター、パソコン用ディスプレイも上記解像度・リフレッシュレートに対応している必要があります。
  • 解像度1920×1200ドット(WUXGA)には対応していません。
  • 上記対応解像度でもリフレッシュレートが異なると正常に表示できないのでご注意ください。
  • パソコン、タブレット以外のHDMI信号入力は正常に出力されない場合があります。(DVDプレーヤー、Blu-rayプレーヤーなど)
  • HDMI信号からアナログVGA信号への信号変換の際にタイミングがずれることで上下左右に黒枠が出る場合があります。
  • 全ての機器で動作を保証するものではありません。

DBR-M3009

まず、東芝製BDレコーダ「DBR-M3009」で試してみた。レコーダの出力は基本的に1080pなので、フルHD(1920×1080)で表示されるものと思っていた。ところが、キャプチャ・ユニットに接続すると、どういうわけか、720pとして識別される。接続している機器はすべて1080pに対応しているので、どこかの経路のデフォルト値が720pになっていることが予想される。細かく切り分けをしてみないと、どこの問題なのかはわからないけど、とりあえず、この接続方法ではいきなり1080pで表示されるわけではないことがわかった。

そこで、キャプチャ・ソフトウェアのプレビューを見ながらBDレコーダのHDMI解像度設定を変更してみることにした。メイン・メニュー > 設定 > 本体設定 > HDMI接続設定 >HDMI解像度設定と選んでいって、「1080p」を選択する。すると、キャプチャ・ソフトウェアでも入力信号が「1920×1080」であることが表示された。

DBR-M3009の設定画面

取扱説明書を共通化できるくらいなので、DBR-M4008やDBR-M2008でもファームウェアはほぼ同じと推測され、挙動は同様のはず。

ドライバ更新推奨
この問題は、ビデオ・キャプチャ・ユニットのドライバをアップデートすると改善することが判明した。ドライバの更新を強くお奨めする。記事執筆時点での最新のドライバ・バージョンは1.1.0.185。

D-M470

次に、東芝製HDDレコーダ「D-M470」でも試してみた。挙動としては、DBR-M3009と同様で、「HDMI解像度設定」をあらかじめ1080pに設定しておいても720pになってしまい、キャプチャのプレビュー画面を見ながら「1080p」に設定しなおす。

本当は他社製のレコーダを使って検証したほうが記事の価値は高まるんだろうけど、機器間の通信の相性や連携機能の都合などもあるので同社製品を選んでしまいがち。他社製のレコーダを購入することがあったら別に検証したいところだけど、VGAに変換してしまえばどこのメーカーでも変わらないような気がする。

ドライバ更新推奨
この問題は、ビデオ・キャプチャ・ユニットのドライバをアップデートすると改善することが判明した。ドライバの更新を強くお奨めする。記事執筆時点での最新のドライバ・バージョンは1.1.0.185。

D-M470の設定画面

HDCPはどこまで有効か

ビデオ・キャプチャ環境を手に入れると、やはり気になってくるのが、HDD/BDレコーダのHDMI出力はどこまでHDCPで暗号化されているのか、ということだ。

考え方にもよるけれど、録画リストや番組表などのタイトル等は単なる文字列でしかなく、放送局と視聴者が共有してこそ初めて意味のあるものであるため、著作性は極めて低く、暗号化する必要はないとも言える。DiXiM PlayのWindows版を使うと、HDCPに対応していない液晶モニタでも番組タイトルくらいは表示されるのがその証左。

そこで、次の画像のようにHDMI信号VGAコンバータを挟まずにレコーダをビデオ・キャプチャに直接接続してみた。

HDDレコーダ/Blu-rayレコーダからVGAコンバータを経由しないで直接接続
(図はあくまでも接続方法を模式化したものであり、コネクタの物理的配置とは異なる。)

結果としては、まったく何も出なかった。レコーダのシステム画面や番組表には著作権で保護されるべき部分は少ないように思えたので、もしかしたら枠くらいは表示されるかもしれないと思っていた。

結果は次の画像のとおりで、レコーダから出力されるHDMI信号はシステム画面かコンテンツ画面かに関わらず、すべてHDCPがかかっていると考えたほうが良いようだ。

キャプチャ例

極力著作権などに問題なさそうな(まったくないわけではない)画面を選んでキャプチャしてみた。遠目に見るとわかりにくいけど、H.264/AVC 5.0~5.7くらい(おおよそ3~4倍モード)で圧縮しているため、動きのある画面ではノイズが相当出ている。

デジタルをアナログに変換した際の劣化も多少はあるだろう。テレビで見る分には鮮やかな白に見える背景も少し青っぽくなっている。画質を調整したくらいではほとんど変化がないので、アナログ入力の限界といったところか。

なお、以下の2例の画像は、Photoshopでトリミングをして黒い余白を切り取り、解像度を半分に落としたうえでJPEGで不可逆圧縮をかけているので、ビデオ・キャプチャの出力そのままではない。

『とある科学の超電磁砲T』 ©2018 鎌池和馬 / 冬川基 / KADOKAWA / PROJECT-RAILGUN T

でも、ビデオ・キャプチャの最大の利点は、デジカメでテレビ画面を撮影した時のように画素がはっきり写ってしまったり、それによってモアレを起こしたり、窓から入った環境光が映り込んだりはしないこと。

後で修正できるとはいえ、画像が斜めにならないようにカメラの画角に気を遣ったりするのも、実際にやってみると結構楽ではない。文字で書くとそれほどでもなさそうに見えるかもしれなけど。

これがケーブルの接続を変更し、プレビューで確認後クリック1回で済んでしまうのだから、それだけでもビデオ・キャプチャを買った価値はあるというものだ。もっとも、デジタル家電のライター稼業でも始めようというのであれば必要経費だけど、個人的な趣味の範囲でやるにはお金のかかる代物ではあるんだけど。

最後におまけ。ファイナルファンタジーVIIリメイクが発売された時期だったため、流れていたTVCMをキャプチャしてみた。ほぼ静止画に近いような画面では当初想定していたよりもかなり綺麗な画面を得られる。

『ファイナルファンタジーVII リメイク 』 ©1997, 2020 SQUARE ENIX CO., LTD. / スクウェア・エニックス・ホールディングス

本記事はハードウェアの性能や使用法が想定どおりかを検証する目的のものであり、テレビ番組や映像ソフトウェアを複製又は録画して違法にインターネット等に公開したり、海賊版を配布したりするなど、著作権や商標権を侵害する意図は一切ない。もし、権利者から指摘があれば当該画像は速やかに削除する。

関連記事

参考記事

Chromeリモートデスクトップを別ウィンドウで表示する

最終更新:2020/04/28

いつもやり方を忘れてしまうので、備忘録的に。この記事を書いている時点でのChromeのバージョンは81.0.4044.122。

Chromeリモートデスクトップはローカル・アプリケーション版が終息した。リモート・デスクトップがChromeに統合され、ローカル・アプリケーションを起動しようとすると次のような画像が表示されてしまってまったく操作できなくなる。

ローカル・アプリケーション版はChromeブラウザとは独立したインターフェースで動作していたので、Windows標準のリモート・デスクトップのような感覚で使えて便利だった。また、ホスト側が必ずしもWindows 10 Proである必要はなく、Win 10 Homeをホストとして接続できるのも利点だ。

そこで、ひとまずChromeリモートデスクトップの拡張機能を追加したうえで、次の画像のとおりに通常どおりにChromeリモートデスクトップをタブ・ブラウザの中に起動する。

次に、Chromeの右上にある「︙」をクリックし、設定メニューを開く。その中の「Chrome Remote Desktop で開く」を選択する。

すると、Chromeのブラウザからリモート・デスクトップのウィンドウだけが独立し、タイトルバーのデザインが変わる。アプリケーション版Chromeリモートデスクトップと似たようなインターフェースで使用できるようになる。

VAIO type T (VGN-TT50B) にWindows10をインストール

最終更新:2020/06/02

2008年か2009年頃に買ったWindows Vista搭載のVAIOが長い間使われずに自宅の隅でホコリを被っていた。最初は旅行先でデジタル一眼レフカメラを使って撮影した写真データをコンパクト・フラッシュから移して一時保管しておくために使っていた。当時はフラッシュ・メモリの容量は多くても数GB程度で、RAW画質で撮影するとあっという間に一杯になってしまったからだ。それでも数千枚の写真を撮りためたのだから、当時の自分のバイタリティを褒めたくなる。

懐かしいVAIO type Tの画面。Windows Vistaなので表示要素が立体的デザインで、古めかしさすら感じる。フラットデザインが主流になるのはiPhoneの登場でAppleがMicrosoftを脅かすほどの復権を果たしてからのことだ。

今ではモバイル・ノートPCは数万円程度で手に入るものになっているけど、まだ「モバイル・ノート」というコンセプト自体が目新しかったもので、当時は小型化に高い技術力を必要としたためスタンダード・ノートPCとそれほど変わらない20万円ほどもした。

CPUはCore2 Duo U9300@1.20GHzで、メモリはDDR3-800の3GBしかない。32ビット オペレーティング・システムというのも時代を感じる。

CPUは今では懐かしいCore2 Duoで、ストレージは当然HDDだった。WindowsをはじめとするソフトウェアはDVDメディアからインストールするものだったため、どんなに小さくしても幅と奥行きが12cm以上になってしまう光学ドライブも搭載しなければならず、ストレージを搭載するスペースは限られていた。SSDそのものは既に存在していたけど、「SSD」という言葉はまだなく、「HDDの代わりにフラッシュ・メモリを搭載」と言われていた。安価なTLCが登場する前のMLCタイプだったこともあり高嶺の花で、SSD搭載オプションを選ぶと価格が跳ね上がった。少しでも安くあげるにはHDDを選ぶしかなかったのだ。

ところが、一生懸命使っていたのは最初の1年間くらいなもので、Windows 7の登場でWindows Vistaが廃れてしまうとまったく使わなくなってしまった。普段使いのために購入したデスクトップPCにSSDを導入してからはHDDから起動するVAIOは動作がひどく遅く感じられるようになってしまい、一眼レフのロートル化に伴い出番も減り、これといった使い道もないままVistaのサポートも終わってしまった。

今では結局Core i9-9900Kを搭載したデスクトップPCをメインに使っているわけだけど、モニタとキーボードやマウスの場所に拘束される作業スタイルが楽ではないと感じることもある。ブログの記事を書くくらいならノートPCで楽な姿勢でやれたらいいのにな、と自堕落な考えを起こしていた。それならばいっそのこと、リモート・デスクトップを使って無線LAN経由でメインPCに接続して有り余るリソースを使えばいいのではないかと思いついた。

ところが、新品のノートPCを買おうとすると、CPUをモバイル向けCeleronまで妥協しても5~6万円はする。小さくてもフルHDの液晶モニタを搭載していて、最新アーキテクチャのCPU、DDR4メモリ、システム用SSD、IEEE 802.11acクラスの無線LAN、Bluetooth 5など必要なものはひととおり揃っているので当然といえば当然の話。数年前の型落ちCore i5を搭載しているスタンダード・ノートPCの中古品を買ったほうが安いくらい。

そこで、Core2 Duoでも画面表示出力とキーボードやマウス入力のデータをやりとりするだけのリモート・デスクトップくらいなら動かせるんじゃないかと考えて、再び候補にのぼってきたのがVistaのまま放置されていたVAIOというわけだ。

調べてみると、古いVAIOのストレージをSSDに換装したりしながら大事に使っている人が結構いる。当時としては先進的だったアイソレーション・キーボードを採用していたり、妙な空白地帯を作ってしまって野暮ったくなりがちだった内蔵バッテリーセルを独特な曲面筐体の一部に組み込んでいたりなど、今見ても古さを感じないほどデザインは優れている。iPhoneをはじめとするスマートフォンのおかげで今では当たり前になったBluetooth接続のワイヤレス・マウスを標準装備しているなど未来を先取りしていた。当時はPCの周辺機器は有線接続が当たり前だったので、「Bluetoothのような近距離無線通信なんて一体何のために存在するの?」という感覚だったのだ。

VAIOには時代を超えて愛される要素は確かにたくさんある。今のモバイル・ノートが価格や重量を抑えるために金属の部品を使わなくなっているのに対し、ヒンジなど最も負荷がかかる部分にはケチらずに金属部品を使っていて単純に丈夫だという理由もあるだろう。使用頻度は低かったとはいえ、10年前のPCがまだどこも故障していないのだ。

パソコンの修理や近代化改修を請け負う仕事をしている人のブログを読むと、VAIO type TにもWindows 10がインストールできると書かれている。

VAIOノート VGN-TT50Bにwindows10をインストール 不明なドライバー情報 – パソコンりかばり堂本舗

これは面白い。10年以上前のモバイル・ノート黎明期のノートPCが最新OSをインストールできてちゃんと動作するというのだ。そんなに古いCPUでさえサポートしているMicrosoftがすごいのか、拡張命令を追加しながらも64ビット命令セットがちゃんと動く設計を頑なに守り続けてきたIntelが偉いのか、どっちかはわからないけど、とにかく古くても64ビット命令セットを処理できるCPUならばWindows 10は動くのだ。

Windows Vistaをバックアップする

Windows Vistaの頃にはパソコンを買ってもリカバリ・メディアが付属してこなくなった。付属していた製品もあったかもしれないけど、少なくともVAIO type Tには付属してこなかった。Windows 10を試すこと自体は無償でできるけど、色々不都合がわかってシステムをWindows Vistaに戻したいとなると話がややこしくなってくる。何せサポートの終了したOSなので、Vistaのメディアを入手する正規の手段はもうない。仮にあったとしても今更Vistaに投資はしたくない。

面倒ではあるけど、他に手段もないので、はやる気持ちを抑えつつ、VAIOにインストールされているVistaのリカバリ・メディアを作成する。本当は購入してすぐ作成するものなんだけど、10年以上を経て初めてリカバリ・メディアを作成することになった。

リカバリ・メディアを作成するためのソフトウェアはプリインストールされており、手順は非常に簡単。画面の指示に従ってブランクDVD-Rを入れていくだけ。

リカバリ・メディアがなんたるかを説明する文章。恥ずかしながら、10年以上経って初めて目にした。おそらく、もう目にすることはないと思うので、スクリーンショットを撮っておく。

Windows Vistaの時代でも、リカバリ・メディアの作成にはDVD-R(1層)が2枚必要になる。光ディスクによるソフトウェアの販売にはもう限界が見えてきた頃だったのだ。

最初は念のためベリファイを指示しておいたけど、ベリファイに失敗してDVD-Rを1枚無駄にしたので、2回目はベリファイを指示しなかった。リカバリ・メディアは念のため作成しているだけであって、Windows 10へのアップグレードが失敗したら、このVAIOももう日の目を見ることはないので最悪のケースの保険でしかない。

Windows 10をインストールする

Windows 10のインストール・メディアを用意する

VAIO以外のインターネットに接続できるPCでWindows 10のインストール・メディアを用意する。この種の手引きはネットに溢れているので今更説明するまでもないだろうけど、VAIO type Tにインストールする場合限定で記録を残しておく。

言わずと知れたWindows 10のダウンロード・ページ。

https://www.microsoft.com/ja-jp/software-download/windows10

ここでMediaCreationTool1909.exeをダウンロードする。実行するとどのPCにWindows 10をインストールしたいか選ぶことになる。今回はVAIOにインストールしたいので、「別のPCのインストール・メディアを作成する」を選ぶ。

くどいようだけど、Core2 Duoは64ビットCPUなので、Windows 10は64ビット版を選択する。32ビット版を選んでしまうとメモリが4GBまでに制限されてしまうので、後のメモリ増設のためにも64ビット版を選んでおくのには意義がある。

インストール・メディアを作成する媒体を選ぶ。ここでちょっと迷うかもしれない。新しいPCならUSBメモリからインストーラをブートできることはよく知られているけど、10年以上前のPCとなるとちょっと微妙になってくる。PCのBIOSがUSBにネイティブに対応しているかどうかにかかっているからだ。OSが起動してからUSB汎用ドライバを読み込んでいるようでは間に合わない。

USBブートができないPCの場合、DVDを選ぶしかないけど、DVD-Rがもったいないし、USBブートができれば越したことはないので、まずはUSBメモリでチャレンジ。

使用可能なUSBメモリの一覧が表示される。ストレージの配置の都合でEドライブになっているけど、メディア・クリエイション・ツールが使用可能であると判断しているのであればドライブ・レターは何でも良い。ただし、複数のUSBメモリを同時に使っている場合、間違ってデータを消したくないUSBメモリを選んでしまうとすべてのデータが消えてしまうので、不要なUSBメモリは外しておくか、間違えないようなわかりやすいボリューム名をつけておく。

VAIOをいったんシャットダウンし、できあがったインストール・メディアをVAIOのUSB端子に挿入して電源を入れる。VAIOのロゴが表示されているうちに「F2」キーを押してBIOS設定画面を呼び出す。

非常にシンプルな設定画面なので、設定項目は必要最低限しかない。当然ながら、近年のマザーボードのようなオーバークロック関連の項目などは一切ない。

「Boot」メニューの「Boot Configuration」を変更する。「External Device Boot」を「Enabled」に変更し、「Boot Priority」にカーソルを移動させてブートの優先順位を変更する。「External Device」にカーソルを合わせ、「F5」キーを押して最優先(一番上)に移動する。「Exit」タブを選択し、「Exit Setup」で変更した設定を保存し、再起動する。

BIOS設定の変更がうまくいっていれば、USBメモリからブートされ、Windows 10のセットアップが開始される。あとは画面の指示に従って進めていくだけだけど、今までVistaが入っていたパーティションを一度解放しないとインストールできないので、ここでVistaと別れを告げる。

実はVistaのリカバリ領域がHDDの一部に残っているんだけど、消してしまってもいいし、残しておいてもいい。リカバリ領域を削除することは後でもできるので、HDDの容量が逼迫していないのであれば、とりあえず残しておくことをおすすめする。

動作確認

Windows 10のインストール中の画面は省略するけど、VAIO type Tに無事にWindows 10をインストールできた。UIがモダンになるだけで、CPUがCore2 Duoであることを忘れてしまうくらい普通に動いている。

ドライバ不明のデバイス問題

正常に入力デバイスの操作に反応しているし、画面も正常に表示されているので、ぱっと見でも、CPUは期待どおりに動いているし、チップセット内蔵グラフィックのドライバは正しくインストールされている。タッチパッド、キーボード、無線LAN、Bluetooth、HDD、光学ドライブ等、必要最低限のドライバは正常に適用されている。

他の記事を読んで予想できていたことではあるけれど、デバイス・マネージャを起動すると、いくつかのデバイスで正常にドライバがあたっていないことがわかる。

VAIOに実装されているハードウェアには64ビット版OS用のドライバが非公式に用意されていて、SONYのサポート・サイトからダウンロードできる。

32ビットOSから64ビットOSへの本格移行が始まりかけていた時期だったのでこういったドライバを用意しているのだろう。でも、とっくに生産も修理対応も終息してしまっている製品のドライバをいまだに配布し続けているということは、Vistaがとっくに廃れた10年以上先の2020年現在もVAIOを使い続けて欲しいとSONYが願っていたと考えることもできる。もしそうならば、SONYのVAIOへの思いやりの深さには頭が下がる。

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Sony Firmware Extension Parser Device

デバイス・マネージャではACPI¥SNY5001で始まる「不明なデバイス」となっているのはSony Firmware Extension Parser Deviceというものらしい。具体的に何をするものなのかは不明。

Memory Card Reader/Writer (Ricoh(MS))

PCI¥VEN_1180&DEV_0592&SUBSYS_9047104D&REV_11で始まる「基本システムデバイス」というデバイスは、SONYが独自規格路線を邁進していた頃の代表的デバイスだったメモリー・スティック(MS)用リーダー/ライター。

SONYはまだメモリー・スティック規格の製品を販売しているけれど、SDカード等のメモリ・カードに比べると大容量化は進んでおらず、主要な規格とは言い難くなってしまった。Windows 10の標準ドライバも現在では用意されていない。

1seg Tuner (Sony)

USB¥VID_054C&PID_0279¥5で始まる「CXD9192 Controller」というデバイスは、地上波デジタル放送のいわゆるワンセグ用チューナー。日本語の地上波デジタル放送は日本ローカルなので、Microsoftが標準ドライバを用意していないのも当然だろう。

Memory Card Reader/Writer (Ricoh(SD))

PCI¥VEN_1180&DEV_0822&SUBSYS_9047104D&REV_21で始まるデバイスは、「SDA標準準拠SDカード・ホスト・コントローラー」ということになっているけど、上のメモリー・スティック・リーダー/ライターのすぐ隣りに実装されているSDカード・リーダー。SDカード・リーダーであることは認識できているようだけど、Windows標準ドライバでは正常に動作しないようだ。

Windows 10のバージョンやVAIOの構成によっては警告が表示されない(標準ドライバでなんとかなる)こともあるけど、メモリー・スティック・リーダー/ライターのドライバをあてると警告が表示されるようになることもある。

Alps Pointing-device for VAIO

キーボード・ユニットに実装されているタッチパッド式ポインティング・デバイスは、Windows 10をインストールすると汎用PS/2ポインティング・デバイスとして自動的にドライバが設定されるけど、タッチパッドの右端や下端をなぞるとウィンドウを上下及び左右にスクロールできる機能はなくなってしまう。

デバイス・マネージャでポインティング・デバイスのデバイス番号を調べてみるとACPI¥SNY9001だと判った。それで検索して調べてみると、Alpsのポインティング・デバイスだと判ったので、「EP0000155342 : Pointing(Alps)」のドライバを解凍してインストールするとタッチパッドのスクロール機能を使えるようになる。リストにはVGN-TT50Bはないけど、問題なく動作する。

VAIO type TのWindows 10化の効果

ひとまずVAIO type TをWindows 10にすることには成功した。リモート・デスクトップによるメインPCへの接続も成功した。リモート・デスクトップを起動できてしまえば、VAIOにかかる負荷は高くなく、メインPCの高い処理能力とM.2 PCIe NVMe SSDからのアプリケーション高速起動、大容量HDDやNASなどの保存資源を存分に使うことができる。VAIOの処理能力が最新型クラスに上がったのではないかと錯覚してしまうくらいだ。

ただ、問題点がまったくないわけでもない。初回起動はHDDからWindows 10を起動しなければならないため、電源投入から起動までは相当待たされることになる。起動に時間がかかると起動する気が起こらなくなるため、結構致命的。

ある程度予想はしていたことだけど、タブレットPCが市民権を得ている現在ではHDDからのOS起動が現実的でなくなっているということを改めて痛感する。それでも、Vistaより起動が遅いとは感じにくいのは64ビットOSだからだろう。

有利なこと

  • Core2 Duoは64ビット命令セットを処理できるので64ビット版Windowsを使える。
  • 64ビットOSが使えれば、CPUが非力でもそこそこ使えるものにできる。
  • Windows PC同士なら標準機能のリモート・デスクトップが使える。
  • 画面解像度がメインPCと異なっていても自動的に縮小して再配置するため、Chromeリモートデスクトップのように画面がスクロールしてしまって煩わしいということがない。
  • リモート・デスクトップを使っている限りアプリケーションのインストールが不要。
  • アプリケーションのライセンスも不要なため、経済的。
  • 特別な環境を構築する必要がないためシステム・バックアップが不要で、ストレージが故障しても気軽にクリーン・インストールして元に戻せる。

不利なこと

  • 画面の大きさが11.1インチで解像度がWXGA(1,366×768)に制限されるため、作業領域が広くないのはいかんともしがたい。
  • マルチ・ディスプレイ環境を構築するのは「動かせる」というノートPCの根本的利益を減じてしまうため、サブ・ディスプレイに表示した情報を参照しながら操作するクリエイティブ作業には不向き。
  • HDDのアクセスの遅さは致命的で、iPadのように気軽に起動できない。
  • HDDが遅いため、VAIOに何らかのアプリケーションをインストールするのも得策ではない。

SSD化は要検討

快適に使用するにはSSDへの換装がほぼ必須になったわけだけど、いくつか検討しなければならない事項がある。

1.8インチ・フォーム・ファクタ

VAIO type Tのストレージは1.8インチのフォーム・ファクタで、今では珍しくなってしまった。接続方式も3.5インチや2.5インチのストレージのSATAよりもひとまわり小さいMicroSATAを使用していて、これまた現在ではほぼ廃れてしまった。

1.8インチSSDの入手自体が現在極めて困難で、売っていたとしても、ほぼ希少価値だけで性能や容量に見合わない価格がつけられている。現実的な方法としては、まだかろうじてまともな価格で販売されているmSATA(MiniSATA)接続のSSDをMicroSATA接続に変換する基板を使って換装する。

1.8インチのフォーム・ファクタのネジ位置には合わせられないので、クッション・テープなどを詰めて隙間を埋めてやることになる。段ボールを詰めているという強者もいて、入手や加工の容易さや、ある程度の弾力もあるという意味では悪くない発想だ。

SATA SSDなので発熱は高くないと予想されるし、常温で使用する限り、詰め物が溶けたり発火したりすることはないとは思うけど、ノートPCの中で発熱するのはSSDだけではない。難燃性の材料を使った詰め物を使うのが無難だし、目を離す時は必ず電源を切り離しておくなど発熱・発火対策をしておく必要があるだろう。

要分解

問題は、外部からストレージにアクセスするのが不可能で、本体を一度分解しなければならないということ。ネジを外してカバーを取り外せばいいというくらいならやってみてもいいんだけど、ことはそう簡単ではない。強度が心配なくらい極めて薄いリボン・ケーブルで接続されたキーボード等の入出力装置を切り離したり、同様のリボン・ケーブルで接続されたストレージを取り外したりしなければならない。

中古の古いVAIOを手に入れてきては分解し、その進化の過程を観察するのが趣味な人も世の中にはいて、詳細な解説記事を書いてくれているんだけど、真似できるような気がしない。

金属の端子が極力露出しないように作られているケーブルで接続するデスクトップPCなんて比べものにならないほど繊細な作業が要求される。デスクトップ用マザーボードのピンヘッダで一般的な2.54mmピッチなんてノートPCの世界からすればザルのような粗さだ。

金属部品を使って重くなってしまった分は樹脂カバーのツメを固定する方法を工夫したり、長さの異なるネジを複数種類使用したりすることで剛性を維持している。PC用のネジなんて大体共通なのに、複数のネジを使い分けるというのは組み立て作業者にとっては負担でしかない。奥まで入りきらないネジがあったり、ネジの長さが足りずに空転してしまったりといった組み立て不良が起こりやすくなるからだ。

でも、SONYは結構こういうことを平気でやる。PlayStation3の分解解説のページを見たことがあるけど、分解手順が複雑すぎてはっきり言って正気の沙汰ではない。それに比べればVAIOの分解の難易度は易しいほうなのかもしれない。

関連記事

参考記事

Synology NAS DS218jをWindowsからネットワーク探索



Synology NASのDS218jをLAN内に設置してWindowsのネットワーク探索を使用しても、次の画像のようにNAS本体は「コンピューター」としては検出されない。デバイスやメディア機器としては検出されているけど、これらを選択してもNASの設定画面がWEBブラウザに表示されてしまうので、共有フォルダの一覧が表示されるわけではない。

Windowsを搭載したPCは自動的に検出されるけど、DS218jはLinuxベースのOSで動いているので表示されないのだろうかと思っていた。もちろん、エクスプローラーに「¥¥DS218j」と入力すれば共有フォルダは表示される。

なんとなくネットを眺めていたら、Synology NASをWindowsで検出できる方法があることがわかった。DSM(DiskStation Manager)の設定で「コントロールパネル」の「ファイルサービス」を選び、「詳細」タブを参照する。

WS-Discoveryの項目にある「Windowsネットワーク探索を有効化して、SMB経由のファイルアクセスを許可します」が初期状態では無効になっているので、チェックを入れて有効にする。「適用」ボタンを押すと間もなく設定が反映される。

Windowsに戻って再度ネットワーク探索をかけると、次の画像のようにDS218jが「コンピューター」の一覧に表示されるようになる。

参考記事


Synology DS218jと東芝レコーダーD-M470を連携する

最終更新:2020/05/01


2013年末頃に発売された東芝製タイムシフトマシン搭載のレグザサーバー(HDDレコーダー)D-M470を約5年にわたって愛用している。今回は、Synology NASのエントリーモデル DiskStation DS218jを使って録画番組の整理をしてみた。

D-M470の概要

D-M470は、最大7チャンネルの地上波デジタル放送を同時に録画できる、いわゆる「全録レコーダー」。事前に録画予約をしていなくてもチャンネルさえ指定しておけば自動的に録画が開始され、HDDに記録されている過去番組表から選んで好きな番組の最初に遡って視聴できるという当時としては画期的な視聴スタイルを提案した製品だった。古い番組から順に削除されていくので、見終わった番組をわざわざ削除する操作をしなくてもよく、「手間なし、手放し感」を前面に打ち出していた。

同様の設計思想のレコーダーはその前にDBR-M490があったけど、Blu-rayディスク再生/録画機能を搭載していて全方位をカバーしようとした製品だったので筐体も大きく、価格も他社製品と比べても突出して高価だった。D-M470は、DBR-M490から思い切ってBlu-rayドライブを省略することでシステムを簡略化し、筐体の大幅なダウンサイジングとともに低価格化を図ったモデル。

全録レコーダーはその後2019年現在に至るまで、価格の高さからなのか、インターネットで視聴する動画サイトやコンテンツ配信サービスの隆盛からなのか、それほど一般化せず、東芝かパナソニックの一部機種に残っているに過ぎない。それらもBlu-rayドライブを搭載しているのが前提で、安いものでも7万円くらいから、高級機は16万円前後の価格帯になっている。

タイムシフトマシンの問題点

D-M470のタイムシフトマシンは便利なんだけど、7つあるチューナーのうち6つはタイムシフトマシン専用で通常録画用に転用できず、裏番組が複数重なっている時間帯を予約録画で確実に同時録画しておく方法がない。タイムシフトマシンから残しておきたい番組を「ざんまいプレイ」という番組抽出機能でリストに出させてタイムシフト領域とは別の領域に保存するという運用しかできない。それなりに画質を維持しようとするとタイムシフトマシンは長くても1週間分くらいの番組しか保持しておけないので、多忙だったり、長期の旅行・出張などで留守にしていてリストをチェックできないとシリーズ物の番組を録り逃してしまうというミスが無視できない頻度で起こる。そういった柔軟性のなさなどに不満はありつつも今まで一度も故障はしていないので買い換える動機も弱いのが現状。

なお、最近の東芝製レコーダーのタイムシフトマシンは改善されていて、同じ曜日、同じ時刻の番組を繰り返して自動的に保存しておいてくれる機能が追加されている。通常録画に使えるチューナーが1つしかなくても、すべてのチューナーを効率よく利用できるように進化している。

容量不足問題

更に深刻な問題が容量不足。保存用領域にはUSB接続の外付けHDD(3TB)を利用しているけど、5年も運用していると「一度は観たけど残しておきたい番組」や「いずれは観ようと思っている番組」といった消すに消せないデータが溜まってきてHDDの容量を圧迫してくる。

容量不足はセルフパワーUSBハブ経由で新しいUSB-HDDを追加登録するのが一番簡単な解消方法ではある。ただ、そうした場合、著作権保護の関係で録画したレコーダーでしか再生できないという問題が残るのでD-M470が故障したらすべての録画番組を視聴できなくなる。故障したD-M470を修理したとしても、登録したUSB-HDDを再認識する保証はない。それに、ただUSB-HDDを追加するだけでは、2万円くらいの出費がかさむ割にデジタル機器のスキルが何も向上しない。

2014年12月2日にD-M470のファームウェアに大型アップデートがあり、DTCP-IPに正式に対応した。それまではレグザブランドの限られた機器でしかD-M470に記録されている録画を視聴できなかったけど、iPhoneをはじめとする一般のスマートフォンやWindows PCで視聴できるようになった。その後、I-O DATAやBUFFALOからDTCP-IP対応NASが登場し、録画番組をレコーダーからLAN経由でNASにダビングできるようになった。ただ、DTCP-IPは日本語放送の著作権保護を目的とする日本独自の暗号化技術であったため、海外製NASはDLNAに対応してさえいれば十分と考えられていてDTCP-IPへの対応は遅れていた。サードパーティとして組み込みソフトウェアを開発する日本のIT企業がDTCP-IPサーバー機能をNASに追加するアドオンを海外NASメーカーにも提供したため、I-O DATAとBUFFALO以外の選択肢も増えた。

NAS選定

NASを選定するにあたっては、ハードウェア的な性能ももちろん大事だけど、DTCP-IPサーバーとして運用できる能力がなければならないので、ソフトウェア(ファームウェア)の面でも適否を検討する必要がある。

DTCP-IPサーバー候補

まず、NASをDTCP-IPサーバーとして運用するには、当然ながらDTCP-IP用アドオンが必要になる。候補は次の3つ。

DiXiM Media Server
I-O DATAやBUFFALOのNAS、東芝のREGZA、シャープのAQUOSでも採用している比較的メジャーなDTCP-IPサーバー組み込みソフトウェア。DTCP-IP対応のプレーヤー「DiXiM Play」がダウンロード販売されていて、Android版、Fireタブレット/Fire TV版、iOS版、Windows版と複数のプラットフォームに対応しているのが特徴。

sMedio DTCP Move
Synology、QNAP、ASUSTORなど海外製NASにも採用されていて対応機種は非常に多い。ただ、録画データのムーブに失敗する確率が高く、失敗した場合でもダビング10のコピー可能回数は減ってしまうという問題があるらしく、信頼性の面でやや不安がある。sMedio DTCP Moveに対応するプレーヤー「sMedio TV Suite」がスマートフォンの場合、Androidにしかアプリがなく、iOSにはない。スマートフォンはiPhoneを使っているので、iOS版がないというのは減点になる。

Twonky Server
3つの候補の中では一番歴史があり、QNAPのNASで採用されていたけど、最近事業譲渡などがあった関係で活動を縮小しているようで、Twonky Serverが使えなくなったという話が出ている。また、録画データをムーブしたはいいけれど、それを再生する「Twonky Beam」というアプリが配信停止になって使用不能になってしまっていたりなど、先行きが不透明なところがあるようだ。

東芝がまだAndroidのスマートフォンを販売していた頃は専用のプレーヤーを作って配信していたけれど、ファームウェア更新で東芝製レコーダーがDTCP-IPに対応したために専用プレーヤーが必要なくなり、「DiXiM Play」や「Media Link Player for DTV」を録画番組持ち出しや配信受信用のアプリとして公式に指定するようになった。Media Link Player for DTVは以前から使っていて、番組の持ち出しやD-M470からの配信の視聴ができることはわかっている。また、最新機種ではDiXiMの組み込みソフトウェアを使用していることが公式サイトにも書かれているので、D-M470のファームウェアにもDiXiMの技術が組み込まれている可能性が高い。

特に悪い評判もないので、東芝製レコーダーとの親和性も高そうなDiXiM Media Serverに仮決定する。

NASハードウェアの選定

DiXiM Media Serverをアドオンとして採用しているNASはI-O DATA製かSynology製しかない。I-O DATAは国内メーカーではあるんだけど、HDDはWD Redと決まっている上に、Redを単体で買った場合より価格は高めに設定されている。HDDを搭載していないNASキットもあって好みのHDDを選ぶこともできるんだけど、仮にDiXiM Media Serverでうまく録画データのムーブができなかった場合、他の手段がない。

SynologyはDiXiM Media ServerとsMedio DTCP Moveの両方に対応しているので、ひとつ試して目的が達成できなかった場合に他方のアドオンを試すことができる。ただし、DiXiM Media ServerはDS218jというエントリーモデルにしか対応していないし、今後も対応する予定がないそうなので、この記事を書いている時点ではDS218jを選ぶしかない。発売時点ではDS218j以外のSynology NASにもDiXiM Media Serverを展開する予定はあったようだけど、開発元のデジオンの方針が変わらない限り唯一の機種になりそうだ。

いずれにせよ、まずは録画番組をムーブできないことには容量不足問題を解消できないので、トランスコード機能を搭載していないなど若干スペックに不満はあるけど、NAS本体はDS218jに決定した。

内蔵するHDDについては「NAS向けHDD」と称するモデルが各社ラインナップがあるけれど、一般PC用HDDよりもひとまわり価格が高い。たまたま通販で週末特価販売があったので、WD Blue 4TB 2基とした。一般用でも省電力化や静音化は進んでいるので、Redである必要はないと判断した。

Synology DiskStation DS218j 2ベイ NAS キット 日本正規代理店アスク サポート対応 デュアルコアCPU搭載 保証2年 CS7088
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Synology (2017-10-27)
【国内代理店品】WD 内蔵HDD Blue 3.5
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参考価格: ¥ 7,980 (2019-05-05)
Western Digital (2018-01-01)

現状の環境

NASを導入する前の環境は次の図のようになっている。D-M470には有線LANも搭載されているけど、100Mbpsまでの速度しか出ないのでWi-Fiで接続している。2013年発売なので、IEEE802.11nまでしか対応していないけど、5GHzの無線LANには対応しているので、有線LANよりはスループットが出る。ちなみに、東芝製レコーダーは最新機種でもいまだに有線LANはギガビット・イーサネットに対応していないので、Wi-Fi(IEEE802.11ac)で接続することになる。

テレビは東芝の32R9000という機種。2009年製と古いので、イーサネット端子はついているものの、主に番組表やファームウェアの受信のためのもので、DHCP等のLAN機能はない。当然、DTCP-IPにも対応していないので、サーバーから録画番組の配信を受信することもできない。

Wi-FiルーターはASUSのRT-AC68U。新しい機種ではないけれど、後発の機種よりも高性能だったりして評価が高い。ルーターそのものはDTCP-IPとは関係ないので、データの流れを説明する図では省略する。

なお、PCもルーターに接続されているけど、DTCP-IP対応のソフトウェアをインストールしていないので、この図では除外している。

使用可否試験

NASを導入する前に、D-M470と各種プレーヤーの間で致命的な相性問題がないか試験してみた。Media Link Player for DTVは以前から使っているので問題ないことはわかっている。DiXiM PlayのiOS版とWindows版をインストールしてみてお試し1分間視聴ができるので、とりあえず映像と音声が出ることを確認した。ただし、D-M470本体に内蔵されているHDDの録画番組は配信されるけど、USB-HDDに記録されている録画番組は番組リストすらブラウズできなかった。スリープ状態になっているUSB-HDDをウェークアップしている気配すらなかった。

ブラウズできない理由ははっきりしないけど、ひとつ言えることは、東芝製のレコーダーは録画番組を見た目上フォルダで管理できるけどWindowsのフォルダのようにそこに格納されているわけではなく、タグ付けのように扱われているということ。したがって、ひとつの「すべて」フォルダに録画番組が全部格納されているため、ブラウズしようとすると大量のリストをロードしなければならないため応答しないと考えられる。

後でNASを導入してからわかったことなんだけど、スマートフォンアプリでAVC 5.8相当のHD画質の録画番組を再生できていたのは、D-M470がトランスコードしているからだと判明した。旧式の機種ながら、トランスコード機能を実装しているとは意外に優秀な機器だった。

DS218j導入

NASを導入した環境を表したのが次の図。Windows PCには無線LAN機能がないのでギガビット有線LAN。DS218jにも無線LANはないので、付属のLANケーブルで接続。ギガビットに対応しているので配信には問題ないけど、SATAなどと比べると転送量は少ないので書き込みにはやや時間がかかる。

RAIDはあえて組んでいない。LAN内に4TBのHDDを2基配置したイメージで、片方を録画番組の倉庫に、他方をPCなどのデータのバックアップ領域にする。冗長性がないのでどちらかのHDDが故障したらそのHDDのデータは失われてしまうけど、テレビ番組の録画なら失ってもそれほど惜しくはないのでRAIDを組むことで有効容量が少なくなるデメリットのほうが大きい。そもそも、レコーダー内蔵のHDDも、USB-HDDも、冗長化なんてしてなくて5年も運用していたわけだし、今更故障リスクを考え始めるのも滑稽な話だ。

PCバックアップはPC内のメインストレージのRAID 1か、そのRAID 1の内容をまるごとコピーした古いHDDを転用した内蔵バックアップか、NASのHDDのいずれかに生き残っていれば救済できるので、PC外のデータ分散先までRAIDにする必要はない。

なお、DS218j本体やDiXiM Media Serverの導入方法については他にも詳しい記事がたくさんあるので、ここでは述べない。

ダビング

レコーダーからDiXiM Media Serverに録画番組をコピーする方法は、アップロード型とダウンロード型がある。アップロード型はレコーダーを操作してDiXiM Media Serverにデータを送信する方法で、ダウンロード型はNASのDiXiM Media Serverを操作してレコーダーにデータを要求して受信する方法。どちらの方法を使うかはレコーダーの設計に左右されるけど、アップロード型が多数派。ダウンロード型の機器はかなり限定される。

どちらが優れているとは言い切れないけど、アップロード型はレコーダーとNASが起動していれば操作を完結できる。ダウンロード型はPC、タブレット、スマートフォンのウェブブラウザを起動してNASを操作しなければならない。ただ、ダウンロード型はデータの転送要求に応えることさえできればいいので、SONYのnasneのように、もともとアップロード機能を持っていない機器でも対応できる可能性があるというのが利点。

D-M470はアップロード型でもあり、ダウンロード型でもある。良く言えばハイブリッド型だけど、録画番組の種類によって切り換える必要があるという意味ではレコーダーを操作したり、NASを操作したりとせわしないとも言える。

通常録画番組(HD画質)

通常録画で記録したHD画質の番組は、レコーダーを操作してNASに送信する。デフォルトではDS218jにつけたサーバー名に [DiXiM Media Server] を加えた名前で表示される。この名前を識別のためのフレンドリー名と呼ぶけど、長すぎると思う場合は変更できる。

AVC 5.8相当で記録した録画番組の場合、30分番組なら約5分で転送が完了する。レコーダーに直結されているUSB-HDD同士でダビングする場合のようにダビング10のコピー可能回数の残りごと移動させることはできないので、元の録画番組のコピー可能回数が1つ減り、NASに複製ができる。NASへコピーした録画番組は1回分のコピー回数しか残っていないので、NASから更にどこかへムーブしたりコピーしたりすることはできない。

持ち出し変換済み番組(SD画質)

持ち出し番組として変換した録画番組の場合はD-M470本体内蔵HDDの専用領域に記録されているため、レコーダーからではアップロード操作ができない(リストの確認と削除はできる)。NAS側を操作してレコーダーからリストを取得し、ムーブしたい番組を選んでダウンロードする。スマートフォンのアプリを使って番組を持ち出すのと感覚的には同じ。ファイルサイズが小さいので、30分番組なら1分半程度で転送が完了する。

DiXiM Media Serverにはタスクを設定してダウンロード可能な録画番組ができたら自動的にダウンロードする機能があるけど、D-M470はこの機能に対応していないので、自動ダウンロードはできない。

ダビングまとめ

上記のダビング方法を表すと次の図ようになる。パナソニック製のダウンロード型のレコーダーの場合、DiXiM Media Serverを操作して録画データを低解像度のデータに変換しながら優先してダウンロードすることができるんだけど、D-M470の場合は一度レコーダー側で低解像度の録画データを作成してからでないとDiXiM Media Serverに送れない。この辺は設計思想の違いで、新旧に関わらず東芝製レコーダーの共通仕様であり、仕方がないと諦めるしかなさそうだ。

DiXiM Media Serverの公開フォルダは通常の共有フォルダと同等に扱われるため、Windowsのエクスプローラーから中身を参照することもできる。また、公開フォルダを複数設定することもでき、ボリューム1が満杯になったらボリューム2を利用できる。NASから外に出すことはできないけど、NASの中で移動させる分には何度でも移動できるため、8TBの格納領域を得たことになる。注意点としては、Windowsのエクスプローラーでファイルを移動させることも一応できるんだけど、コピー可能回数の情報が欠落してしまうので、少々面倒でもDiXiM Media Serverをちゃんと操作して移動させるほうが良い。

なお、sMedio DTCP Moveは公開フォルダを別の方法で参照することができないように権限が設定されているそうだ。

再生検証

レコーダーの録画番組をNASに移せたとしても、それを再生できないのでは意味がない。上記の使用可否試験で問題なかったDiXiM PlayのWindows版とiOS版、Media Link Player for DTVの3種のプレーヤーで検証した。他にもPower DVDがDTCP-IPに対応しているようだけど、ライセンスを購入してからでないとDTCP-IP機能を試せないので今回は検証していない。

DiXiM Play (Windows)

Windows版のDiXiM Playは画面サイズ、メモリ容量、CPUパワーなど色々余裕があるのでそれほど心配はしてなかったんだけど、HD画質でもSD画質でも正常に再生できた。ビットレートの高低も関係なさそうだったけど、オリジナルの録画番組がAVC 5.8相当なのでそれより上げて録画した場合は特にチェックしていない。

DRモードで録画した番組も問題なく再生できたけど、DRモードにはこだわっていない。

DRモードはMPEG-2であるのに対し、MPEG-4 AVC/H.264による録画は機器間のデータ互換性を高める効果もあるためだ。MPEG-2はエンコードに実数演算を使っていてCPUの演算精度によってはデコード時の誤差が蓄積するため、他社製機器間でのデータの互換性はあまり考慮されていない。一方、MPEG-4 AVC/H.264は16ビット整数演算でエンコード/デコードするためCPUの性能差による誤差が生じない。つまり、NASに限らずDTCP-IPに対応してさえいれば、東芝製とパナソニック製のレコーダーをLANで接続して録画番組をダビングすることもできる。よって、AVCで圧縮したデータさえ再生可能であれば、D-M470が故障して買い換えることになっても新しいレコーダーで再生できるかどうかは必要以上に心配しなくてよい。

D-M470で再生する場合との比較を次に示す。

  • 利点(優れている点)
    • 0.8倍速再生ができる。
    • 1.0倍再生だけでなく、0.8倍、1.2倍、1.5倍、2.0倍速再生でも字幕が表示される。
    • 0.8倍、1.2倍、1.5倍、2.0倍速再生でも音声が出力される。(DTCP-IP対応プレーヤーでは出ないものもある)
    • マウス等のポインティング・デバイスで操作できるため操作が直感的。
    • NAS上の物理フォルダを指定してリストを閲覧できる。
    • ジャンルやチャンネルなど物理フォルダを横断して番組の属性でリスト表示できる。
  • 欠点(劣っている点)
    • マジックチャプター機能で自動的に切られたチャプター情報はなくなり、1チャプターに結合されるため、CMをスキップできない。
    • リモコンを使えないので、遠くからでは操作できない。
    • ショートカットキーがないので、遠隔操作のためにはBluetoothキーボードは使用できず、ワイヤレス・トラックボールやジャイロセンサーマウスなど片手操作が可能なポインティング・デバイスが必須。
    • リストでは録画画質が判別できない。複数の画質が混在する場合はフォルダ分けをするなど工夫が必要。
    • テレビやレコーダーの映像処理エンジンを利用できないため、映像に鮮やかさがない。
    • 再生していた番組が終わった時にその番組がハイライトされないため、次の番組を続けて観たい時にわかりにくい。

DiXiM Play (iOS)

iOS版のDiXiM PlayはDiXiM Media Serverと同じ企業が作った割には想定より成績が悪かった。持ち出し変換済みの録画番組を再生できるのみで、HD画質の録画番組はビットレートに関わらずまったく再生できなかった。再生可能判定を緩くするという設定があったので試してみたけど、音声だけ出て映像は出ないというケースがあり、再生できるとは言えなかった。結局、iOS版のDiXiM Playには課金しなかった。

DRモードには対応していない。

Media Link Player for DTV (iOS)

想定外に成績が良かったのがMedia Link Player for DTV。持ち出し変換済みの録画番組を再生できるのはもちろん、番組によってはHD画質の録画を再生できるものがあった。ビットレートは関係ないようだったけど、何が違うとHD画質で再生できるのかははっきりしない。

ギガビットLANとIEEE802.11acを使えるため、D-M470から直接配信を受けるよりもレスポンスが良く、スライダーで再生位置を調整したりスキップしたりする時の待ち時間がほとんどなく、まったくストレスがなかった。

DRモードには対応していない。「対応していないフォーマットです」と明確にエラーメッセージが出る。

再生検証まとめ

Windows PCで再生する分にはどんな画質や解像度でも対応できるだけど、スマートフォンで視聴したい場合は持ち出し変換して低解像度にしておくことが必須。

持ち出し変換は等速でしか実行できなくて非常に時間がかかるので、録画予約と同時に持ち出し変換も予約しておいてD-M470が比較的暇な時に実行しておいてもらうという運用をする必要が出てきた。タイムシフトマシンから保存した録画は同時変換ができないので、寝ている間や外出中に変換するようにタスクを積んでおくしかない。変換中はタイムシフト再生や通常録画の再生もできなくなり、ほとんど何もできなくなる。最新機種はこの辺も改善されていて、保存時に変換タスクを積んでおくことができる。

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参考記事


DAIV-DQZ530S1P-EX9

最終更新:2019/10/15

今使っているパソコンがそろそろ10年選手になる。第1世代Intel Core i7シリーズのCore i7-860プロセッサ(Lynnfield)搭載で、プロセッサ・ナンバーが3桁という段階でかなり古いパソコンだとわかる。一応4コア/8スレッドの当時のハイエンド・プロセッサと、DDR3-1333メモリを12GB搭載していて、システム・ドライブをSATA SSDに換装していたので、通常の用途では不自由を感じることはなかった。でも、第9世代Intel Coreシリーズが実にCore i7-860の約4倍のパフォーマンスを持っていることに興味を持った。2018年後半の発売直後から続いた品薄状態が解消されて入手しやすくなったこともあり、ついに新しいパソコンを買ってしまった。

今のパソコンがマウスコンピュータ(現・マウス)だったので、MCJ系列で探していたんだけど、メンテナンス性や操作性で評判のいいケースを採用している、マウスのクリエイター向けブランドDAIVシリーズから選んだ。同じMCJ系列のパソコン工房でも似たような部材でマウスよりも安く買うことはできたんだけど、安い代わりにケースも安普請で、ケースのデザインと仕様がどうも気に入らなかった。

BTOパソコンを選択する理由は自分の要求に必要十分な性能と購入後の拡張性を重視するものだと思っているので、デザインを要求するのは本末転倒かもしれないけど、ケースが扱いづらいと後々面倒な思いをすることになる。かと言って、ケースを好きなものに買い換えてパーツを全部移植するというのも時間がもったいないし、要らなくなったミドルタワーサイズのケースは粗大ゴミになるので処分するのにも手間もお金もかかる。

マウスのウェブサイトのBTOメニューで色々組み換えて見積もりを出してみたんだけど、同じスペックならどうやってもパソコン工房よりもコストパフォーマンスが悪くなる。そこで、秋葉原にあるマウスのダイレクト・ショップに直接行って、「とにかくDAIVのケースにCore i9-9900KとQuadro P2000さえ搭載されていてWindows 10 Proがインストールされていればあとは妥協する」ということで交渉してみたら、DAIV-DQZ530S1P-EX9というモデルを提案された。これは、いわゆる「即納モデル」というやつで、パーツ選択にほとんど注文がきかなくなって価格交渉ができなくなる代わりにBTO通販よりも割安に導入できるというものだ。

仕様

マウスがBTOの選択肢として採用しているパーツはブランドを指定していないものが多いけど、ケースを開けたり、HWiNFO64を使って調べたパーツ構成を次に示す。CPUやグラフィックス・カードのような廉価版を用意できないものを除くと、コストパフォーマンス重視のパーツ選択をしているようだ。

DAIV-DQZ530S1P-EX9
項目 メーカー 型番 仕様
CPU Intel Core i9-9900K 8C/16T 3.6GHz/TB 5.0GHz
CPUクーラー 不明 8M Series CPUFAN 90mmファン付サイドフロークーラー
1,300~3,200rpm/PWM
CPUグリス 親和産業 ダイヤモンドグリス OC7 12.56W/m・k
OS Microsoft Windows 10 Pro OEM版
メモリ Kingston KVR26N19D8/16 16GB 2666MHz DDR4 Non-ECC CL19 DIMM 2Rx8
マザーボード MSI Z390-S01(詳細記事 Z390チップセット
LAN RealTek  RTL8111H PCI-E GbE 1000BASE-T/100BASE-TX/10BASE-T
グラフィックス ELSA Quadro P2000 CUDA1024 5GB GDDR5
DisplayPort×4
M.2 SSD ADATA ASX8200NP-480GT-C M.2 2280 PCIe Gen3x4  NVMe 1.3 480GB
HDD Seagate ST4000DM004 SATA 6GB/s 5,400rpm 256MB Cache 4TB
光学ドライブ 日立LG GH24NSD5 DVD-R/RW/ROM (SL/DL)
DVD-R DL
DVD-RAM (Ver.1.0/2.x)
DVD+R/+RW
DVD+R DL
CD-R/RW/ROM
CD-DA (DAE)
M-DISC
カードリーダー RealTek USB 3.0接続カードリーダー 17 in 1
SD/SDHC/SDXC
microSD/microSDHC/microSDXC
MS/MS Pro/MS Duo/MS Pro Duo
MS Micro (M2)
MMC/RS-MMC
MMC Plus/HS-MMC
MMC mobile
CF Type I/CF Type II
MD
リムーバブルケース 不明 3.5インチHDD用搭載 SATA接続 1.5GB/s
電源 不明 700W 【80PLUS BRONZE】  
ケースファン BeCool 120mm ケースファン 12V 700~1,800rpm / PWM

内部

仕様書ではわかりにくいパーツの外観などを紹介していく。外観はプロのカメラマンが照明などにも気を遣って撮影した綺麗な写真がネットにいくらでもあるので、あえて外観写真は掲載しないことにする。

まず、左側面のパネルを外した状態。マザーボードはMSI製で、Z390-S01という型式番号のシールがCPUとメモリ・スロットの間に貼られている。マザーボードの仕様は後日調査して記事にしたいと思う。市販のマザーボードではないだけに、その仕様というのは結構気になるものだ。

最近のDAIVシリーズは、ケース内部のシャドウ・ベイのケージや配線類がすべて黒で統一されていて、ほぼ真っ黒。見た目はスタイリッシュでいいけど、結束されている電源ケーブルの束の中から内蔵機器電源用のペリフェラル4ピン等のケーブルを引き出したい時は色で区別ができないので、どこの結束を解けばいいのか判りにくいのが欠点と言えば欠点。

CPUクーラー

納品書には「8M Series CPUFAN」としか書かれていなかったCPUクーラーの外観。ダイレクト・ショップの営業担当者の話ではリテールよりはマシなくらいのトップフロークーラーだという説明だったけど、大型のヒートシンクと90mmサイズのファンが取り付けられたサイドフロークーラーだった。ネットで調べた限りではメーカーなどは特定できなかったけど、G-TuneなんかのマウスのBTOパソコンには第6世代Intel Coreシリーズくらいの頃には既に搭載されていたもので、息の長い製品のようだ。

HWiNFO64で計測した限りでは1,300~3,200rpmの範囲で回る。CPUの負荷を100%にして3,000rpm以上で回り出すと低音の音がし始めてファンノイズがかなり大きくなるけど、甲高い音が周期的にうなるように鳴るファンに比べればマシなほう。CPUパッケージ温度は70℃くらいまでで抑えられていたので、さしあたって冷却性能には問題なさそう。夏場になってサーマル・スロットリングが働いてしまうほど余力がなくなってきたら120mmサイドフロークーラーに置き換えてもいいかもしれない。

ATX電源

納品書では700W 80PLUS BRONZE電源ということになっているけど、電源ユニットには出力等の仕様を示すシールなどが貼られていないので、本当に700W電源なのか、80PLUS BRONZE認証なのかはわからない。プラグイン方式の電源ではないので、やはりコストパフォーマンス重視と言えるだろう。配置は最近のPCケースで流行りの底部設置になっている。重心が低くなって転倒の危険が減るのがメリットだけど、CPUが遠くなるので電源ケーブルの引き回しが若干難しくなるという欠点もある。

M.2シールド

納品書やBTOメニューには具体的な仕様が明言されていないパーツ。写真のように、M.2 SSDをすっぽり覆う形の金属の板で、M.2 SSDのヒートシンクとしてはもっとも単純な仕組みのもの。外観としてはMSIが同名の製品でマザーボードの付属品などとして販売しているものとよく似ている、というか、ほぼ同じ。写真のものは2280サイズのものだけど、22110サイズのものもあるようだ。

ヒートシンクというよりは、その名のとおりM.2 SSDをシールドして保護する目的か、最近のゲーミングPC用のケースは側面パネルが透明のものも多数あるので、むき出しのSSDを目隠しする目的のものなのかもしれない。SSDとM.2シールドの間に空気が少しでも入っていれば熱伝導率は大幅に落ちるので、冷却性能としては気休め程度のものだと思うけど、HDDが30~33℃の状態で、M.2 SSDは23℃前後だったので、それほど神経質にならなくてもいいのかもしれない。

ケースファン

ケースファンは、BeCoolというブランドの120mmファン。ネット通販も含めて一般販売店で見かけることはあまりない。ファンブレードの形状から見て、12025-2 Axial SeriesのAD1225S(R/B)12M-N(P/M)と思われる。仕様書上では風量は2,000rpmで73.52CFMとまずまず。

グラフィックス・カード

グラフィックス・カードはQuadro P2000なのは仕様書どおりだけど、営業担当者の話では、エルザ製ということだった。

GeForceのように、オーバークロックに対応するためにベンダーによってヒートシンクの構造・形状やファンの大きさ・数が異なっていたりするのと違い、Quadroの場合はベンダーによる仕様の差はほとんどないんだけど、問題は、CPUのEPS12V電源ケーブルがグラフィックス・カードの下を通っているということ。ATX電源を底部配置にしているので、延長ケーブルなしではマザーボードの上端にあるCPU電源ソケットにEPS12V電源プラグが届かないためなんだけど、空きのPCI Expressスロットに何か拡張カードを追加しようとする時に電源ケーブルが邪魔になる。

アイネックスの延長ケーブルを使えば、右回りでも余裕でCPU電源ソケットにEPS12V電源ケーブルを配線できるのでお勧め。Amazonでは1,200円くらいだったけど、秋葉原のパーツ・ショップやヨドバシカメラでは1,000円くらいで買える(同じ家電量販店でもビックカメラは自作用PCパーツの取り扱いが少ないので店頭での入手はあまり期待できない)。他のパーツはともかく、電源ケーブルは発熱・発火などの安全面にも影響するものなので、信頼できる品質のメーカーのものを選びたい。

AINEX EPS12V用電源延長ケーブル [ 45cm ] PX-011A
参考価格: ¥ 1,210 (2019-02-23)
AINEX (2015-05-29)

BTO構成との比較

構成が比較的似ているDAIV-DQZ530S2-M2をBTOで同様の構成に変更した場合と、パーツを全部自分で揃えて自作した場合の価格の比較をしてみた。

DAIV-DQZ530S2-M2との比較
項目 DAIV-DQZ530S2-M2 DAIV-DQZ530S1P-EX9 BTO価格 単体価格
CPU Intel Core i7-9700K Intel Core i9-9900K +¥ 22,800 ¥ 65,000
CPUクーラー CoolerMaster Hyper 212 EVO 8M Series CPUFAN 0 ¥ 3,000
CPUグリス 標準CPUグリス ダイヤモンドグリス 親和産業 OC7 +¥ 1,900 ¥ 1,000
OS Windows 10 Home Windows 10 Pro +¥ 5,800 ¥ 20,000
メモリ 16GB PC4-19200/DDR4-2400 32GB PC4-21300/DDR4-2666 +¥ 25,800 ¥ 31,000
マザーボード Z390-S01 Z390-S01 0 ¥ 14,000
グラフィックス Quadro P2000 Quadro P2000 0 ¥ 59,000
M.2 SSD 512GB NVMe対応 480GB NVMe対応 0 ¥ 17,000
M.2部材 なし M.2 シールド +¥ 500 ¥ 500
HDD なし 4TB 3.5インチ SATA 6GB/s 5,400rpm +¥ 19,800 ¥ 8,000
光学ドライブ なし DVDスーパーマルチ +¥ 3,800 ¥ 3,000
カードリーダー なし USB 3.0接続カードリーダー +¥ 3,800 ¥ 2,000
リムーバブルケース なし 3.5インチHDD用搭載 +¥ 3,400 ¥ 3,000
電源 500W 【80PLUS BRONZE】 700W 【80PLUS BRONZE】 +¥ 6,800 ¥ 9,000
ケースファン 120mm ケースファン 700~1800rpm / PWM 120mm ケースファン 700~1800rpm / PWM 0 ¥ 1,000
価格 ¥ 199,800 ¥ 239,900 ¥ 294,200 ¥ 236,500
差額 +¥ 0 +¥ 40,200 +¥ 94,400 +¥ 36,700

パーツをバラバラに揃えた場合の単体価格は、ネットで調べられる範囲での価格を1,000円単位で丸めて概算した。あくまでも安めに購入できた場合を想定した価格なので、このとおりの価格で購入できるとは限らないし、需給バランスで相場は常に変動するものなので、参考程度にとどめておいてほしい。参考価格には、SATAケーブルやケース本体の価格は含まれていない。なお、マザーボードは似たような仕様のMSIのMPG Z390 GAMING PLUSの価格を準用した。

OSについては、何らかのハードウェアのバンドル品としてついてくるDSP版メディアを買うとか、安く入手する方法は色々あるかもしれないけど、そういう裏技的なものは考えないものとした。

では、BTOでのアップグレード価格は妥当なのか見ていこう。

CPU

Core i7-9700KをCore i9-9900Kにアップグレードするのが+22,800円なのは概ね妥当。

メモリ

メモリのクロックが2,400MHzから2,666MHzに少し速くなって、容量が倍になってもNon-ECCなら価格は倍にまではならないので、DDR4-2400 16GBからDDR4-2666 32GBにアップグレードするのが+25,800円は10,000円くらい割高。Intel XMPにも対応していないお徳用メモリなので、オーバークロック耐性もない。

キングストン デスクトップPC用 メモリ DDR4 2666 16GB CL19 1.2V Non-ECC DIMM 288pin KVR26N19D8/16 永久保証
参考価格: ¥ 15,499 (2019-02-23)
キングストンテクノロジー (2019-01-23)
キングストン デスクトップPC用メモリ DDR4 2400 (PC4-19200) 8GB CL17 1.2V Non-ECC DIMM 288pin KVR24N17S8/8 永久保証
参考価格: ¥ 9,250 (2019-02-23)
キングストンテクノロジー (2016-08-15)

HDD

Seagate BarraCuda 4TBなら8,000円台で買えるので、HDD 4TB追加の+19,800円は10,000円くらい割高。Western Digital Blue 4TBでもそこまで高くはない。SeagateならIronWolf、Western DigitalならRedくらいのグレードじゃないとちょっと割に合わない。そもそもIronWolfやRedは24時間365日稼働前提のNAS向けHDDなので、デスクトップPCの内蔵HDDとして必要なのかどうかは別問題なんだけど。

【国内代理店品】WD 内蔵HDD Blue 3.5
参考価格: ¥ 8,822 (2019-02-23)
Western Digital (2018-01-01)

総合的に考えると、即納モデルの+40,200円くらいが妥当な価格と言えると思う。もちろん、価格面だけ見た場合に損はしていないというだけの話で、本当はメモリはDDR4-2400の16GB、M.2 SSDは256GBで十分だったし、メモリーカードリーダーのように使用頻度の低いパーツもついてきてしまっているので、「性能そのものは大は小を兼ねるし、オマケをつけてもらった」と思って納得するより他にない。ただ、秋葉原に在来線で行けるなど、それほど遠くない距離に住んでいる人は、直接ダイレクト・ショップに行って掘り出し物がないか相談してみる価値はあるので、安易に通販を選ぶ前に脚を伸ばしてみるのをお勧めする。

逆に、BTO通販で好きなようにスペックを盛ってしまうとかなり割高のように見える。もちろん、価格には工場で注文どおりに間違いなく組み立てる工賃や工場の維持費も含まれているし、ダイレクト・ショップなどに常駐している営業担当やその他パソコンの組み立てとは関係ない仕事をしている従業員の報酬、乃木坂46を採用しているテレビCMのような広告宣伝費、及びマウスの企業としての利益も含まれているので、価格だけを見て一概に高いとは言えない。

ネット通販で日本全国から好みのパーツを入手できるようになったとはいえ、パソコンのパーツを手に入れにくい地方に住んでいる人にとっては交通費や送料などを考慮するとやむを得ない価格とも言える。マウスで十分検証していて、初期不良を除けばパーツ間の相性問題はないと言って良いので、そういった安心感の部分が価格に転嫁されているとも言える。

自作PCを組み立てた経験がある人や、HDDやメモリの増設くらいなら自分でできる自信がある人は、CPUの装着など慎重な作業を必要とし、素人には手の出しにくい部分などのアップグレードに留めて可能な限り必要最小限の規模で組んでとりあえず動くようにしてもらって、後で不満があるならばAmazonやパーツ・ショップをうまく利用して部品を買い揃えていくのがオススメ。

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タイトルロゴ改訂版

最終更新:2016/09/06



現在のロゴを拡大して改めて眺めていたら、当時は技術的に拙かったこともあってあちこち角がはみ出してたり、色彩がいまいちなのが気になってきた。そこで、Inkscape(0.48.1)を使ってSVG形式で作り直してみた。

Inkscapeはフリーライセンスのソフトウェアながら、座標の指定が厳密にできたり、マウスなどのポインティングデバイスでは指定しにくい細かいところはXMLエディタ編集機能で直接数値入力できるのが3DCG屋の私には性に合っている。CADのようなオブジェクトの整列機能も強化されて使いやすくなった。なお、現在安定版とされている0.48.4はGUIのライブラリに問題があるようで、メニューバーのフォントがおかしかったり、座標の指定に妙な挙動があってストレスがあるので、個人的には、0.48.1がおススメ。

以前のロゴは別のドローイング・ソフトウェアで作ったんだけど、古かったのもあって操作性が私には合わなかった(予備知識なしでいきなり作ったので、そもそも勉強不足だったっていう指摘は、まぁ、ごもっともなんだけど。細かいところを気にしていられるほどPCのパワーもなかった)。

VF_Logo_official_revised_compare

基本的なデザインは踏襲しているので、ほとんど自己満足の世界。

  • 前は縦の線と斜めの線の太さが同じになっていなかったので、三角関数を使って厳密に計算して太さを同じにしてみた。綺麗に揃ったようにも見えるし、太さに変化がなくて凡庸な感じになったような感じもする。サンセリフ(ゴシック体)風ってことで、これはこれでいいことにしよう。
  • 前はロゴの縁の処理が角張っていていかにも素人っぽかったので、角を少し丸めた。あまりやりすぎるとポップな感じになってしまうので、本当に「角を取った」くらい。「パス」ツール群にある「ダイナミックオフセット」機能はかなり使える。マウスでオフセット半径を大雑把に指定して、XMLエディタで丸め半径をキリのいい値に指定すれば綺麗に仕上がる。
  • 「VANGUARD FLIGHT」の語頭の「V」と「F」はもともと縦幅が大きかったけど、太さは他の字と同じで弱々しい感じがしたので太さを10%増しにした。あまり太くしすぎるとバランスが悪くなるので「測ってみたらわかるくらい」にしておいた。中学校の美術で習った、レタリングは「完全に太さや大きさを揃えてしまうと字によっては細く小さく見える」的なアレを思い出して参考にしてみた。
  • グラデーションがいまいちメタリックな感じになっていないので、もう一段深い色を追加した。全体が引き締まった。赤色の二つの「G」のグラデーションも見直して彩度を上げてみた。それから、下の行のグラデーションの位置がちゃんと中央になっていなかったので、中央にグラデーションの中心を揃えた。
  • 「R」のデザインがいまいちだったので見直してみたんだけど、やっぱりイマイチ。改善案が思いつかなかったので適当なところで妥協。「R」難しいよ、「R」。
  • 「Δ」はオマケ。ウェブサイトのトップページには採用しない予定。

LightWave用MMDモデルPMD形式ファイル・インポーター

最終更新:2016/09/06



MikuMikuDnace用モデルデータのPMD形式ファイルをLightWaveで読み込む方法。

まず、『Microsoft Visual C++ 2005 Service Pack 1 再頒布可能パッケージ』(Microsoft Visual C++ 2005 Service Pack 1 Redistributable Package)が必要なので、マイクロソフトの次のページからダウンロードする。

パッケージの詳細についてはこちらを参照。

リストから「Microsoft Visual C++ 2005 Service Pack 1 再頒布可能パッケージ」を選択するとダウンロードページに移動するので、システムによってダウンロードするファイルを選ぶ。Windows XPやVistaなどの32ビットシステムの場合はx86ベース(vcredist_x86.EXE)、Windows 7や8のような64ビットシステムの場合はx64ベース(vcredist_x64.EXE)を選択する。両方ともダウンロードしても特に問題なかった。EXEファイルを実行するとパッケージが自己解凍してインストールされる。

LightWaveのプラグインを多数作成しているfault0d氏のウェブサイト『Poly to Poly』からAS PMD Helperをダウンロードする。私はLightWave10を使っているのでバージョン0.121を選択。アーカイブファイルにはx64用のプラグインも同梱されている。

zipファイルを解凍して、AS_PMD_Helper.pファイルをLightWave用のプラグインが格納されているフォルダにコピーする。バージョンによってフォルダ構成は異なるのでLightWave 2015でも同じかどうかはわからないけど、LightWave 10では次のフォルダ。

C:\Program Files\NewTek\LightWave_10\support\plugins

モデラーを起動し、「ユーティリティ」タブを選択して「プラグイン追加」をクリック。

AS_PMD_Helper.pファイルを指定するとPMDインポーター/エクスポーターといくつかのPMDファイル作成補助プラグインが追加される。

AS_PMD_Helperに同梱されているドキュメントに従ってモデラー設定ファイル(lwm*.cfg ※「*」はLightWaveのバージョンごとに異なる)を更新しておくとPMD形式ファイルをLWOオブジェクトと同列に扱ってくれるようになる。設定ファイルはシステムドライブ(普通はCドライブ)の「ユーザー(Users)」フォルダの各ユーザーフォルダ以下「.NewTek」フォルダ内にあるので注意。

公開されているPMDファイルをダウンロードして試してみた。今回はシナモソさん作成のボーイング767-200をベースにdiagraph01さんが改造したE-767(diagraph01さんのページ)。テクスチャの再現性などなかなか優秀。個人的にはこれで充分満足。

ただ、細かいことを言えば、可動部分など分割されているパーツは一旦ひとつのレイヤーにまとめられてしまって名前がついてるだけで空っぽのレイヤーが大量にできる。また、スケルゴン(ボーン)もロードされるけどあくまでもMMD用に作られたデータなので、インポートした直後はLightWaveでのアニメーションの実用には堪えない(座標や必要なボーンの目安にはなる)。

MMDは日本発のソフトウェアなのでボーンやウェイトマップの名称にかな・漢字を使っていることが多く、改名しないと文字化けしてしまってスケルゴン・エディタなどの一部の機能で使いづらい。もっとも、LightWaveで2バイト文字や3バイト文字を使うのは昔から御法度なので、どっちかと言うとLightWave側の問題なんだけど。(そのへんAdobeの製品はローカライズが完璧なのでビックリする)

PMD形式ファイルを他のソフトウェアで変換することなくLightWaveで直接ロードできるだけでもありがたいと思ったほうが良さそう。

思っていたよりも調整するところがなかったので、単純にLWO形式で保存した後レイアウトに移してレンダリングしてみたのが次の画像。

E-767

関連記事


GIMP2.8のメニューバーのフォントの戻し方

最終更新:2016/09/30



以前に、Inkscape 0.48.2以降のメニューがWindowsの設定値に従ってくれず、明朝体風のフォントになってしまうので、Inkscapeのメニューバーのフォントの戻し方という記事を書いた。

GIMP2.8.10より古いバージョン

最近、GIMPもバージョンアップして2.8になっていたので、アップデートしてみたところ、Inkscapeとまったく同じ問題が発生した。どうも、中国語のフォントが選択されているらしいんだけど、クロスプラットフォーム用のフリーライセンス・ライブラリを使用して開発しているソフトウェアではほぼ共通の問題があるらしい。

しかも、設定の変更の仕方が異なるという不親切さ(笑)。

次のgtkrcファイルをテキストエディタなどで開く。

C:\Program Files\GIMP 2\share\gimp\2.0\themes\Default\gtkrc
style "gimp-default-style"
{
  stock["gtk-dialog-error"] =
    {
      { "images/stock-error-64.png", *, *, "gtk-dialog" }
    }
(略)
}

上記の部分に、次のように1行追加する。

style "gimp-default-style"
{
  font_name = "Meiryo 9"
  stock["gtk-dialog-error"] =
    {
      { "images/stock-error-64.png", *, *, "gtk-dialog" }
    }
(略)
}

とりあえず、「gtk-2.0」というモジュールと「gtkrc」という設定ファイルが深く関与していることは両者に共通していたので、次にこういうことがあったらまずそこを疑えばいいということだね。

GIMP2.8.16/18

実際に試すことができたのがGIMP2.8.16とGIMP2.8.18だけだったのでこれら2つのブランチについてはほぼ確実だと思うけど、他のウェブサイトを見る限りでは、GIMP2.8.10以降であればおそらく以下の方法でメニューバーのフォントを変更できる。

最近のGIMP2.8ブランチでは変更方法が変わった。PCのユーザーごとに設定ファイルが独立したため、カスタマイズしやすくなった。次のパスにファイルが存在していれば、gtkrcファイルを開く。存在していない場合は、新規作成する。普通のテキスト・ファイルでいい。

C:\Users\[USER NAME]\.gimp-2.8\gtkrc

次の一節をgtkrcファイルの末尾に追加するか、新規作成したファイルの先頭に記述する。

style "gimp-default-style"
{
  font_name = "Meiryo 9" 
}

GIMP2.8がこのファイルを参照しているとする根拠は、次のパスにあるthemercというテーマ設定ファイルで上のgtkrcファイルをインクルードしているから。

C:\Users\[USER NAME]\.gimp-2.8\themerc

themercファイルには次のように記述されている。

# GIMP themerc
#
# This file is written on GIMP startup and on every theme change.
# It is NOT supposed to be edited manually. Edit your personal
# gtkrc file instead (C:\Users\Taku Oshino\.gimp-2.8\gtkrc).

include "C:\\Program Files\\GIMP 2\\share\\gimp\\2.0\\themes\\Default\\gtkrc"
include "C:\\Users\\[USER NAME]\\.gimp-2.8\\gtkrc"

# end of themerc

もし、インクルードしているファイルが異なる場合は、themercに記述されているパスをよく見て新規gtkrcファイルを作成する。

参考記事


Inkscapeのメニューバーのフォントの戻し方

最終更新:2016/09/06



だいぶ前に、Inkscapeをバージョン0.48.2にアップデートしたらメニューバーのフォントが突然明朝体風になってしまって気持ち悪かったんだけど、戻し方がわからなくて困ってた。コンフィギュレーション系のファイルを開いてみてもどこをいじればいいのかサッパリ。

手に負えそうにないので、ネットで調べてみた。要約すると次のようにコードを少し編集する。

次のgtkrcファイルをテキストエディタなどで開く。

C:\Program Files (x86)\Inkscape\etc\gtk-2.0\gtkrc

gtkrcファイルの末尾に次の2行を追加する。

# UI font
gtk-font-name = "sans 10"

次のpango.aliasesファイルをテキストエディタなどで開く。

C:\Program Files (x86)\Inkscape\etc\pango\pango.aliases

pango.aliasesファイルの「sans」行の「arial,」の直後に「meiryo,」を追加する。

tahoma = "tahoma,browallia new,mingliu,simhei,gulimche,ms gothic,kartika,latha,mangal,raavi"
<span style="background-color: lemonchiffon; padding: 3px;">sans = "arial,browallia new,mingliu,simhei,gulimche,ms gothic,kartika,latha,mangal,raavi"</span>
serif = "times new roman,angsana new,mingliu,simsun,gulimche,ms gothic,kartika,latha,mangal,raavi"
mono = "courier new,courier monothai,mingliu,simsun,gulimche,ms gothic,kartika,latha,mangal,raavi"
monospace = "courier new,courier monothai,mingliu,simsun,gulimche,ms gothic,kartika,latha,mangal,raavi"

これはクロスプラットフォームのソフトウェア開発の素人にはわからないね。世の中にはすごい人がいるものだね。感謝感謝。

いつの間にかバージョン0.48.4が安定版になっていたけど、せっかくメニューバーが直ったことだし、アップデートはまた今度にしよう。(0.48.4はGUIに座標や各種数値を入力できない不具合があるので、バグフィックスされるまでは0.48.1以下が無難。)

gtkrcに次のコードを直接書いてやってもいけそうな気もするけど、今は0.48.1に落として使っているので試してみてはいない。

gtk-font-name = "Meiryo 10"

参考記事