CITIZEN ATTESA BY0045-66F

最終更新:2016/09/06

91S86LzijCL._SL1500_久しぶりに腕時計を買った。それこそ10年ぶりくらいに。iPhoneを買うまでは折り畳み式の携帯電話(いわゆるガラケー)が時計代わりで、片手でもすぐに時刻を確認できたので、腕時計をわざわざ身に付ける必要性がかなり薄れていたから。

ところが、iPhoneのタッチパネル式液晶ディスプレイを保護するためにスナップで蓋をするタイプのカバーを使っている関係上、両手を使わないと時刻を確認できなくなった。iPhoneのパネル表面はガラスなので当たりどころが悪いと簡単に割れるし、AppleCareでも水没同様保証が効かないので用心に越したことはない。保護フィルムはうまく貼れた試しがないので好きではない。

そんなわけで、雨の日で傘をさしている時や、荷物が多い時、満員電車の中などでは時刻を確認するのにもひと手間かかるようになった。iPhoneには今のところ防水機能がないので荒天の時は時刻を見ることすらためらわれる。そして、何よりも、iPhoneは電池が1日くらいしかもたないので、充電しなくても2、3日は使えたガラケーの携帯電話と比べても時計としては心許ないのだ。

どうせ買うなら、時刻合わせの必要がなくて、電池切れの心配もないソーラー電波時計にしようと色々と見ていたのだけど、価格が比較的手頃なものは本当に時刻がわかるだけ、という見た目にもあまりおもしろくない時計が多かった。

デザインが優れた輸入品の腕時計は、宝飾品としての側面もあるため機械式がほとんど。電波時計や太陽電池駆動といった面倒くさがりな割には時間にシビアな日本人好みの機能は備えていない。機械式はもちろんのことだけど、電池式でも電波時計や太陽電池駆動は皆無と言っていい。

太陽電池駆動でも二次電池(充電池)には寿命があり、その頃には互換性のある二次電池を製造していない可能性がある。時計メーカー各社も、特に電池式はメンテナンスを前提としていないので、二次電池の寿命が時計の寿命とほぼ同義と言っていい。一方で、機械式時計は適切な手入れと定期的なオーバーホールをすることを前提としていて、故障していたとしても部品の図面等のデータが残ってさえいれば(お金をかければ図面がなくても)機能を回復できるため、宝飾品やステータスとしての半永久的な価値を求める海外の時計メーカーに好まれる。

少し前までスーパークォーツ式腕時計を作っていたブライトリングも機械式一本に絞ってしまったので、選択肢は国産しかないんだけど、国産はとにかくデザインが野暮ったい。デザインとエンジニアリングは別物と考える日本人の悪癖が顕著に見える(日本製は安くて高性能、故障が少なく堅牢で機能的だと絶賛する外国人はもちろんいるけど)。

掃除機で著名なダイソン社のジェームズ・ダイソン氏が言っていたことだけど、「エンジニアはすべからくデザイナーとエンジニアを兼務したデザイン・エンジニアであるべきだ」という意見はもっともだと思う。日本のエンジニアは設計や製造上の都合をデザインにしわ寄せしてしまうのをやめるべきだと思う。

そんな中でも異彩を放っていたのは、シチズンのアテッサ・シリーズのBY0045-66Fというモデル。

文字盤に太字のアラビア数字で偶数だけ盛り上げて刻印してあって、数字の表面処理も意図的に粗くしてある。立体的なデザインの文字盤が気に入った。立体的といえばセイコーのアストロン・シリーズもあるけど、文字盤が深すぎて角度によっては時刻が読みにくいのが欠点。

ベゼルにも偶数時方向に溝を切られているだけで、タキメータのような計算尺的な普通は使わない(使い方がよくわからない)機能を載せていないのもポイントが高い。真っ黒なベゼルは1998年に世の中の話題をさらったBVLGARI DIAGONO ALUMINIUMを思い起こさせなくもない(欲しかったけど、当時は高くて買えなかった)。

昔のソーラー時計は黒い太陽電池パネルがどこかにあったのでわかりやすかったけど、技術の進歩もあって最近の時計では文字盤が光を透過するようになっていてパネルをほぼ完全に隠してしまえるようになっている。そこをあえて格子状の溝を切り、一見した時は「太陽電池パネルがむき出しなのかな」と思ったほどの無骨さをデザインの一部に繰り入れている。

いわゆる万年カレンダーのパーペチュアルカレンダーが3時方向ではなく、4時方向に斜めに配置されているのもいい(ムーブメントの型が同じならみんな4時方向だけど)。ワールドタイムの都市表示も前後の都市名が見えるという、特に意味はないんだけど一時期流行ったスケルトンデザインの香りもするメカニカルっぽさにも惹かれた。

ただ、定価が15万円と国産の中では高級時計の部類に入るので、ちょっと躊躇していた。限定生産モデルでこの機会を逃すと次がないのはわかっていたけど、すべての発端であるiPhoneをも遙かに上回る価格の腕時計が果たして必要なのだろうか、と。

でも、同様の機能を備えた(もっと言うとまったく同じムーブメントの)最新モデルでは文字盤にアラビア数字が刻印されているものはなく、こういったタイプはしばらく出ないかもしれないと判断したことと、2013年夏モデルなので発売からかなり経っていてAmazonをはじめとして在庫がなくなる店舗が多くなってきたことにも蹴飛ばされ、買うことにした。清水の舞台から飛び降りる心地というのはこういうものなのだろうか。

同じモデルで文字盤の文字やスイッチ類が金色のものもあるんだけど、使えるシチュエーションが限られそうなので、普段使いはもちろんのこと、ビジネスにもフォーマルにも使えそうな銀色を選んだ。

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実物を手にしてみると、竜頭が二段階に引き出せたり、竜頭の回転とボタン操作を組み合わせて各種機能を操作するインターフェースには少々戸惑ったけど、二次電池の残量確認や標準電波の強制受信といった普段使いそうな機能はすぐに覚えられるくらいに極力簡単な操作になっていた。普段は時刻を示している針が各種設定時には逆回転したりして何かの機械の計器のように動くのは単純に楽しい。この辺は機械式時計にはない楽しみかもしれない。

一見してわかるようにクロノグラフだけど、中心に回転軸を持っている一番長くて細い針がクロノグラフの計測用秒針になっている。0.2秒刻みになっているので、大きい文字盤で見た方が正確に読めるし、計測の度にゼロ位置(12時の位置)に戻す必要がないから、というのが理由らしい。それが最近のクロノグラフの世界的主流だそうだけど、普通の壁掛け時計や目覚まし時計などで言うところのいわゆる秒針が普段は動かないというのも若干違和感はあるので、少し慣れが必要かな、と感じた。秒針代わりにクロノグラフを動かしたままにしておくのは動力の無駄になる上にムーブメントにも負荷をかけるのであまりおすすめできないそうな。使用者のお好みで時刻用秒針とクロノグラフ用秒針を入れ替えられたら良かったんだけど、さすがにそれは高望みしすぎかな。

後で調べてみてわかったことだけど、同じシチズン製でもセンター秒針がクロノグラフ秒針と時刻の秒針を兼ねていて、2時方向の機能針がクロノグラフ分針と1/20秒針になっているムーブメント(シチズンではキャリバーと呼んでいる)はあるようだ。ただ、取扱説明書を見る限り、竜頭を一段引いてから回してモード選択針でクロノグラフモードを選択して秒針をゼロ位置に戻した後、竜頭を元の位置に戻してからスタートボタンを押して計測を開始するという操作になっていた。おそらく文章にすると余計にわかりにくくなるだろうけど、ボタンひとつでクロノグラフ計測を開始できるこのモデルよりも遙かに煩雑と言えた。

クロノグラフ計測なんて滅多に使わないよ、と思う人も大勢いるだろうし、好みの問題かもしれないけど、これはこれで合理的に設計されているのだと理解した。理解できたら、センター秒針が動かないほうがなんか格好良く思えてきた(単純)。

参考記事

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