MSI Z390M-S01

最終更新:2020/03/12

ATXフォームファクタのマザーボードについてはMSI Z390-S01をご覧ください。


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注意事項

本ブログは、販売店とはまったく関係がありません。マザーボードの仕様、操作方法、BIOS更新等に関するお問い合わせをいただいても一切対応できません。当記事に書かれていない情報の提供は歓迎しますが、正規ユーザーしか知り得ない情報を当ブログ管理者から個人的に提供して質問者の便宜を図ることはありません。

BIOS更新は、OSやソフトウェアのアップデートとはまったく異質のもので、全員が必ず実施し、常に最新の状態を維持しなければならないという性質のものではありません。BIOSを更新したとしても、PCの性能は向上しませんし、必ずしも新型ハードウェアへの更新、換装ができるようになるわけではありません。ほとんどの場合、BIOSを更新しても何が変わったのかわからないはずです。

当記事はZ390チップセット搭載マザーボード「Z390M-S01」について個人的に調査した結果を記載しているにすぎず、当該マザーボードのユーザー全員を支援することを目的としていません。質問がある場合は、まず販売店の公式サイトをご覧いただくか、販売店に直接お問い合わせください。販売店に問い合わせてもわからなかったことは当ブログ管理者にもわかりません。当ブログの関知するところではない情報についてはお応えいたしかねますので、お問い合わせに返信しないことがあります。

「ダメでももともと、この記事を書いた人なら何か知っているかもしれないから質問してみよう」といった安易な期待にもとづく問い合わせは当ブログの記事の執筆時間を削ぐ結果にしかなりません。

以上、ご理解、ご協力のほどよろしくお願いいたします。

マウスのZ390チップセット搭載ATXマザーボード「Z390M-S01」について調べた。本マザーボードには「7C24」というモデル・ナンバーが振られている。

オンボード・コネクタ

基板上に配置されているコネクタやスロットは次の図のとおり。ストレージ用M.2スロットが2基、CNVi接続Wi-Fi/BluetoothのCRFモジュール用M.2スロットが1基搭載されている。ストレージ用M.2スロットには、SATAデバイスとPCIeデバイスの両方を使用できるけど、M2_1にSATAデバイスを接続してしまうとSATA2コネクタは無効になる。

MSI Z390M-S01のオンボード・コネクタの配置

 

Z390M-S01のオンボード・コネクタ一覧
コネクタ名 仕様 備考
LGA1151 第8/第9世代Intel Coreプロセッサ対応  
CPU_PWR1 8ピンEPS12V電源  
ATX_PWR1 24ピンATX電源  
CPU_FAN1
PUMP_FAN1
SYS_FAN1
SYS_FAN2
4ピンPWM対応ファン・コネクタ  
DIMMA1/A2
DIMMB1/B2
DDR4 SDRAM DIMMスロット Non-ECC UDIMM
最大64GB(128GB)
JAUD1 10-1ピン・フロント・オーディオ・コネクタ  
JFP1 10-1ピン・フロント・パネル・コネクタ1
(電源/リセット・スイッチ、電源/HDD LED)
 
JFP2 4ピン・フロント・パネル・コネクタ2
(ブザー/スピーカー)
 
JCI1 2ピン・シャーシ侵入検出機能コネクタ  
JRGB1 4ピンRGB LEDコネクタ 12V G R B
JTPM1 14-1ピンTPMモジュール・コネクタ  
JTBT1 5ピンThunderboltアドオン・カード・コネクタ  
JBAT1 クリアCMOSジャンパ  
JUSB1
JUSB2
10-1ピンUSB 2.0ピンヘッダ JUSB2はCNViの
Bluetoothと帯域を共用
JUSB3
JUSB4
20-1ピンUSB 3.0(USB 3.1 Gen1)ピンヘッダ  
JSPI1 シリアル・ペリフェラル・インタフェース BIOS非常書換用
M2_1 M.2スロット Key ID.M 2242/2260/2280/22110
PCIe/SATA両用
SATA使用時、SATA2
使用不可
M2_2 M.2スロット Key ID.M 2280
PCIe/SATA両用
 
CNVI_1 M.2スロット Key ID.E
CNVi RFCモジュール用コネクタ
 
PCI_E1
PCI_E2
PCI_E3
PCI Express 3.0 [x16] (CPUレーン)
PCI Express 3.0 [x1] (PCHレーン)
PCI Express 3.0 [x16] (PCHレーン [x4動作])
 
SATA1
SATA2
SATA▼3_▲4
SATA3 6GB/sコネクタ  

バック・パネル

バックパネルには、USB 2.0端子が1つもない。USB 3.0(Super Speed)のポートにUSB 2.0かUSB 1.1でも十分なUSBキーボードやUSBマウスを接続してしまうと少しもったいない気もする。Micro-ATXサイズのマザーボードを前提としたミニタワーPCケースのフロント・パネルにUSB 2.0端子とUSB 3.0端子の両方を備えていることは稀なので、外部接続が可能なUSB 2.0端子が1つもないこともあるだろう。

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USB 2.0をどうしても外部接続して使いたい場合はマザーボードのピンヘッダからPCIスロット経由でリア・パネルか、3.5インチや5.25インチ・ベイに増設するフロント・パネルなどに引っ張ってくるしかない。ただ、USB 3.0はUSB 2.0/1.1と後方互換性があるので、USB 2.0でないと困る事情も特にない。ソフトウェアの認証用ドングルを常に接続しておく必要があるなどUSB接続の機器を大量に使う目的でもない限り、わざわざUSB 2.0のポートを増設することはないだろう。

フレキシブルI/O

Z390チップセットのHSIO割り当て
HSIO 用途 PCIe
1 USB 3.1 Gen1/Gen2 #1
2 USB 3.1 Gen1/Gen2 #2
3 USB 3.1 Gen1/Gen2 #3
4 USB 3.1 Gen1/Gen2 #4
5 USB 3.1 Gen1/Gen2 #5
6 USB 3.1 Gen1/Gen2 #6
7 USB 3.1 Gen1 #7 PCIe 3.0 #1 x2 x4
8 USB 3.1 Gen1 #8 PCIe 3.0 #2
9 USB 3.1 Gen1 #9 PCIe 3.0 #3 x2
10 USB 3.1 Gen1 #10 PCIe 3.0 #4
11 PCIe 3.0 #5 GbE (LAN) x2 x4
12 PCIe 3.0 #6
13 PCIe 3.0 #7 x2
14 PCIe 3.0 #8
15 PCIe 3.0 #9 GbE (LAN) x2 x4
16 PCIe 3.0 #10
17 PCIe 3.0 #11 SATA #0a x2
18 PCIe 3.0 #12 SATA #1a GbE (LAN)
19 PCIe 3.0 #13 SATA #0b GbE (LAN) x2 x4
20 PCIe 3.0 #14 SATA #1b
21 PCIe 3.0 #15 SATA #2 x2
22 PCIe 3.0 #16 SATA #3
23 PCIe 3.0 #17 SATA #4 x2 x4
24 PCIe 3.0 #18 SATA #5
25 PCIe 3.0 #19 x2
26 PCIe 3.0 #20
27 PCIe 3.0 #21 x2 x4
28 PCIe 3.0 #22
29 PCIe 3.0 #23 x2
30 PCIe 3.0 #24

Z390チップセットにはHSIOと呼ばれる統合I/Oレーンが30本あり、マザーボードのメーカーはその範囲内で製品に使用するI/Oを決めて設計する。

HSIO(High Speed I/O)は、PCI Express 3.0、SATA 3、USB 3.0/3.1、GbEなどの高速インタフェースの総称で、第6世代Intel Coreシリーズ用の100シリーズ・チップセット(Skylake)から導入された概念。以前はそれぞれのI/Oに対応するコントローラ・チップの一群を配置してそれぞれのドライバを用意しなければならなかったけど、ワンチップ化されたチップセットにすべてのコントローラを統合することでメーカーはマザーボードの設計を簡略化できるだけでなく、同世代の異なるチップセットのマザーボードの設計を流用できるようになった。また、「USB 3.0は少なくてもいいからPCI Express 3.0の拡張スロットをできるだけ多く」といった特定のI/Oに特化するような柔軟な設計もできるようになった。

Z390はPCI Express 3.0を最大24レーン使えるけど、Z390M-S01はバックパネルにUSB 3.1 Gen2(TYPE A+C)を2ポート、USB 3.1 Gen1を4ポート、オンボードにUSB 3.1 Gen1のピンヘッダを4ポート分備えているので、HSIOを10レーン使用している。つまり、PCIe 3.0 #1~#4を使用できないので、PCIe 3.0は20レーンまでしか使用できない。

USB 2.0のピンヘッダも4ポート分備えているけど、USB 2.0はもはや「高速インタフェース」ではないので、フレキシブルI/Oとは別枠でチップセットが直接制御している。いずれにせよ、帯域としてはUSB 3.0の10分の1以下なのでUSB 2.0ハブ・コントローラ・チップを挟めば計算上はHSIO 1つで10ポートは賄える。

更に、SATAを最大の4ポート使いたければ、PCIe 3.0を4レーン使えない。この時点で残りのPCIe 3.0は16レーン。

Realtek RTL8111H PCI-E GbE LANコントローラにPCIe 3.0を1レーン、M2_1及びM2_2スロットに実装したPCIe 3.0 x4 NVMe SSDはPCIe 3.0をそれぞれ4レーン占有するから、残りのPCIe 3.0は7レーン。

PCI_E3スロットをx4動作で使用することを想定すると、連続してPCIe 3.0を4レーン確保できるところはPCIe 3.0 #21~#24だけになる。PCI_E2はPCIe 3.0 x1なので、2つの拡張スロット合計で5レーン使用するので残りのPCIe 3.0は2レーン。HSIO 1レーンあたりの帯域は8Gbpsだから、USB 3.1 Gen2を規格どおりの10Gbpsで使えるようになっているとすれば、1ポートあたりHSIOを2レーン使うことになるので、もう余裕はない。

電源回路

最近のマザーボードでは電源回路の質の良し悪しでグレードの差がついたり、メーカーの電源回路に対する考え方が表れるようになった。特に、オーバークロックを試したい場合は電源回路が定格以上の出力にどれだけ耐えられるかが重要とされる。

Z390M-S01のVRMフェーズ数

PWMコントローラ・チップ「uP9521P」。拡大しているので大きく見えるけど、実際は6mm四方で目視では文字が読めないほど小さい。

VRMフェーズが不明なマザーボードのフェーズ数を調べるには、まずはPWMコントローラを探す。

マザーボード上の電源用PWMコントローラ・チップの周囲の回路には独特の特徴がある。電源回路まわりの仕様はATXフォーム・ファクタのZ390-S01と同様と推測されるので、uPIセミコンダクター社のuP9521PというPWMコントローラを使用している可能性が高い。

uP9521Pは、ミドルレンジのマザーボードでもよく使われている、Intel CPUのIMVP8電源仕様に対応しているPWMコントローラ。CPUコア用に4フェーズ分、CPUコア以外の内蔵GPUやメモリなどへの電源供給用に3フェーズ分の最大7フェーズのタイミング信号を生成できる。よく、「4+3フェーズ」などと表現されるのはこれに由来している。

Z390M-S01の上には10個のチョークコイルが並んでいて、その周囲にハイサイドとローサイドで1組プラス1個くらいのMOSFETと固体電解コンデンサがあり、それらで合計10組のVRMフェーズを構成している。PWMコントローラのタイミング信号はMOSFETをドライブするだけの能力が不十分なことが多く、MOSFETの前にはほぼ間違いなくMOSFETドライバICがある。ただ、場所の都合で基板の裏面に配置されていることも多い。

シングル・チャネルMOSFETドライバ・チップ「uP1962P」。こちらは2mm四方と更に小さい。パッケージには「FH」としか書かれていないけど、データシートと照合するとトップ・マーキングがオーダリング・インフォメーションと一致する。

MOSFETドライバもZ390-S01と同様と推測できるので、uP1962Pという12Vシングル・チャネルMOSFETドライバを使っている可能性が高い。4個のuP1962Pの下に2組のVRMフェーズを置くことで電流の経路を2倍にし、擬似的に8フェーズの同期整流回路としている。タイミング信号は4フェーズなのでリップルの低減にはつながらないけど、電流の経路を増やせばMOSFETからの発熱を分散できると思われる。残りのVRMフェーズはCPU内蔵GPU用に1フェーズ、DDR4 SDRAM用に1フェーズずつ使われている。よく自作PCパーツの新製品記事に使われている表現としては「8(4×2)+1+1フェーズ」となる。

MSI製Micro-ATXマザーボードとの比較

同じMSI製Micro-ATXフォーム・ファクタのマザーボードで、Z390M-S01と比較的仕様が似ているMAG Z390M MORTARと比較してみた。

MSI MAG Z390M MORTAR M-ATX ゲーミングマザーボード [Intel Z390チップセット搭載] MB4645

オンボード・コネクタの比較

Z390M-S01はMAG Z390M MORATRをベースにして作られたのではないかと思うくらい基板上に配置されているコネクタ類はほぼ同じ。システム・ファン・コネクタの数も同じ。USB 3.1 Gen2タイプCのフロント用コネクタがUSB 3.0(USB 3.1 Gen1)×2ポート分のピンヘッダに置き換えられているくらいしかインタフェース上の違いはない。

Thunderbolt用のコネクタが備えられていて、比較的新しい仕様のインタフェースを実装することで将来の拡張性を持っているという点では、安かろう悪かろうの廉価版OEMと馬鹿にできない部分もある。

オンボード・コネクタの比較
Z390M-S01 MAG Z390M
MORTAR
備考
LGA1151 LGA1151  
CPU_PWR1 CPU_PWR1  
ATX_PWR1 ATX_PWR1  
CPU_FAN1
PUMP_FAN1
SYS_FAN1
SYS_FAN2
CPU_FAN1
PUMP_FAN1
SYS_FAN1
SYS_FAN2
 
DIMMA1/A2
DIMMB1/B2
DIMMA1/A2
DIMMB1/B2
JAUD1 JAUD1  
JFP1 JFP1  
JFP2 JFP2  
JCI1 JCI1  
JRGB1 JRGB1  
JRGB2  
JTPM1 JTPM1  
JTBT1 JTBT1  
JBAT1 JBAT1  
JUSB1
JUSB2
JUSB1
JUSB2
USB 2.0
JUSB3
JUSB4
JUSB3 USB 3.0(USB 3.1 Gen1)
JUSB4 USB 3.1 Gen2 タイプC
JSPI1 JSPI1  
M2_1 M2_1  
M2_2 M2_2  
CNVI_1 CNVI_1  
PCI_E1 PCI_E1 PCI-E 3.0 [x16](CPU)
PCI_E2 PCI_E2 PCI-E 3.0 [x1](PCH)
PCI_E3 PCI_E3 PCI-E 3.0 [x16](PCH [x4動作])
SATA1
SATA2
SATA▼3_▲4
SATA1
SATA2
SATA▼3_▲4
 

入出力等の比較

Z390M-S01のLANコントローラがRealtek製なのに対して、MAG Z390M MORTARはIntel製のLANコントローラを搭載していて、この辺でコスト削減を図っている。一般に、LANコントローラはIntel製よりもRealtek製のほうがCPU負荷が高いと言われているけど、常時CPU負荷が高く、高速通信も継続しなければならない用途(ネットワーク対戦ゲームとか?)でもない限り不便を感じることはないだろう。

マザーボードの異常を示す「EZ DEBUG LED」と呼ばれるLED群や、MSIが「Mystic Light」と呼んでいる単純に電飾を目的としたLEDがすべて廃されているところもコスト削減の一環だろう。電飾関係はケース側面が透明でない場合はまったく役に立たないので、少しでもコストが削減できるなら、真っ先に削りたい機能ではある。

MAG Z390M MORTARに備えられているデジタル音声出力のS/PDIF出力も同様に実装されている。ただ、オーディオ・コントローラがALC892なので、S/PDIFで出力したとしてもどの程度の音質になるかは微妙なところだけど。バックパネルのUSB 2.0ポートはすべてUSB 3.0ポートに置き換えられていて、USBハブを接続すればUSB 3.0ポートをいくらでも拡張できる。MAG Z390M MORTARの単純なダウングレード版とも言えないようだ。

入出力等の仕様の比較
  Z390M-S01 MAG Z390
MORTAR
Z390M-S01
(参考)
VRMフェーズ 8+1+1 8+1+1 8+1+1
オンボード・グラフィックス DVI-I
DisplayPort
DVI-D
HDMI
DisplayPort
DVI-I
DisplayPort
オンボードLANコントローラ Realtek RTL8111H Intel I219-V Realtek RTL8111H
オーディオ・コントローラ Realtek ALC892 Realtek ALC892 Realtek ALC892
スーパーI/O NUVOTON NCT6797 NUVOTON NCT6797 NUVOTON NCT6797
USB 2.0 Type-A 0 4 0
USB 3.0 (3.1 Gen1) Type-A 4 0 4
USB 3.1 Gen2 Type-A 1 1 1
USB 3.1 Gen2 Type-C 1 1 1
音声入出力 3.5mmプラグ×5
S/PDIF出力
3.5mmプラグ×5
S/PDIF出力
3.5mmプラグ×5
S/PDIF出力
PCI-Eスチール・スロット なし あり なし
EZ DEBUG LED なし あり なし

UEFI BIOS

PCが起動した時に「Delete」キーを押しっぱなしにしているとUEFI BIOS設定画面が表示される。

mouseモデルBIOS

調査を開始したのが遅かったので、過去のBIOSバージョンの一覧はわかったけど、イメージ・ファイルの実体を入手することはできなかった。2020年2月現在では、E7C24IM0.103からE7C24IM0.107までのBIOSを置き換えるためのバージョンであるE7C24IM0.108と、E7C24IM0.108以降のBIOSを置き換えるためのE7C24IM0.10Jのみ入手できる。

Z390M-S01のマウスバージョンBIOS一覧
BIOS MRC CPUID Rev. 備考
E7C24IM0.103 不明 不明 不明 削除済
E7C24IM0.104 不明 不明 不明 削除済
E7C24IM0.106 不明 不明 不明 削除済
E7C24IM0.107 不明 不明 不明 削除済
E7C24IM0.108 0.7.1.95 906EA AA  
906EB AA  
906EC A2  
E7C24IM0.10A 不明 不明 不明 削除済
E7C24IM0.10B 不明 不明 不明 削除済
E7C24IM0.10D 不明 不明 不明 削除済
E7C24IM0.10H 不明 不明 不明 削除済
E7C24IM0.10J 0.7.1.112 906EA CA 同上
906EB CA 同上
906EC CA 同上
906ED CA 追加

マイクロコード(CPUID)の追加

新BIOSの更新内容は、公式には「動作の安定性を向上した」というもので、2019年6月現在で日本未発売の第9世代Coreプロセッサ新モデル用のマイクロコードや、当初の仕様を超える大容量メモリ・モジュールへの対応など、互換するハードウェアが追加されたというものではないとされていた。しかし、UEFITool NE A55を使ってBIOSイメージ・ファイルを解析してみたところ、CPUID「906ED」のマイクロコードが追加されていた。

CPUIDはCPUのモデルを特定するものではなく、マイクロアーキテクチャを特定するものなので、ある個体のCPUがどのCPUIDに属するかはS-specを確認しないと正確なところはわからない。S-specはヒートスプレッダに刻印してあるけど、BOX版の場合はパッケージにも書いてある。

おおまかに分類すると、906EA 及び 906EB が第8世代Coreシリーズ・プロセッサで、906EC 及び 906ED が第9世代Coreシリーズ・プロセッサなんだけど、ナンバリングでは第9世代のCore i5-9400FのCPUIDが906EAだったり、Core i3-9350KのCPUIDが906EBだったりする。i5-9400FはU0ステッピング、i3-9350KはB0ステッピングといって、第8世代の技術や設計を流用しているためなんだけど、正確に識別できないので第8世代対応マザーボードのBIOS更新が必要ないというわけでもない。第9世代にも初期生産型のP0ステッピングと脆弱性などを改善したR0ステッピングの2種類があり、同じi9-9900Kやi7-9700KでもR0ステッピングで製造されているものはBIOSの更新をしないと正常に動作しない。

免責事項

念のため釘を刺しておくけど、CPU換装はマウスの保証規定に反する改造行為なので、本記事を根拠としてBIOSが対応したと判断してCPUを換装する場合は完全に自己責任となる。換装中や換装後に発生した問題についてはマウスをはじめ誰も助けてくれないし、上記の表はBIOSイメージの調査結果を書き留めているに過ぎないので換装後の動作を保証するものではない。換装後に動作しなかったり、Windowsのデジタル認証が解除されるような事態に陥ってしまったとしても問い合わせや苦情については一切受け付けないのでご承知おき願いたい。

特に、R0ステッピングのCPUを既存のシステムに導入した場合、BIOSが対応していてもWindowsカーネルが新ステッピングに対応できないために正常に動作しないことがインターネットの記事で報じられている。安定運用にはWindowsのクリーン・インストールが必須という厄介な代物になってしまった。最近のOEM版Windowsはインストール・メディアが付属しないので再インストールの方法はひとつではなく、事前準備も含めてその手順も決して簡単とは言えない。イーサネットもまともに使えない状態でドライバのインストールから始めなければならないので、インターネットに接続できる2台目のPCがないと、怖くてOEM版Windowsのクリーン・インストールなんてできない。システムをゼロから再構築する自信がない人は、悪いことは言わないので安易なCPU換装はやめておいたほうがいい。CPUを自由に換装したり、気軽にOSを再インストールしたりしたいのであれば、最初からPCを自作するべきだ。

MRCリビジョン更新

32GBメモリ・モジュールをDIMMスロットに装着してみて認識するか確認すれば一番手っ取り早いんだろうけど、2019年6月現在では、日本ではECC無しでアンバッファードDIMMのDDR4 32GBメモリ・モジュールは入手できない状態にあった。2020年に入ってからはSamsung製以外のデュアル・ランク32GB UDIMMの製品も増え、2万円前後で入手できるようになったので、128GBメモリ環境構築の敷居は低くなった。

1枚で32GBのSamsung純正DDR4メモリが店頭販売中、実売2.5万円

Samsung純正モジュールを採用した容量32GBのDDR4メモリ「M378A4G43MB1-CTD」が、パソコンショップ アークで販売中だ。

3.7万円から買えるSamsung純正のDDR4 32GBメモリー

128GB物理メモリ環境構築可能情報

MSIの公式サイトでZ390M-S01のBIOSに関する正式な情報を入手できたので、MRCリビジョンが0.7.1.95以降になっているBIOSはJEDEC規格32GBメモリ・モジュールを認識する可能性が高くなった。

自分で検証していないので保証はできないけど、MRCリビジョンが0.7.1.112のBIOSを使用している場合において、Crucialの「CT32G4DFD8266(DDR4-2666 32GB 2-Rank UDIMM)」を4枚使用した時、128GBで認識し、Windows 10のシステム情報でも「実装メモリ(RAM)」に「128GB」と表示されたという有志からの情報を得ている。認識していることと、実際のメモリ空間としてすべてのメモリ・アドレスを使用できるかどうかは関係がないので、各自の実運用での検証は必要だけど、少なくとも、モジュールをまったく認識しないということはなく、メモリ・モジュールへの投資そのものは無駄にはならないことだけは間違いない。

iiyamaモデル/o’zzioモデルBIOS

上記のBIOSの他に、マウスがPC DEPOTブランドの「o’zzioモデル」として出荷しているPCでもZ390M-S01を使っているけど、「mouseモデル」ではBIOSバージョンが「E7C24IM0.10J(イチ・ゼロ・ジェイ)」などとなっているのに対し、「o’zzioモデル」では「E7C24IM0.1OJ(イチ・オー・ジェイ)」となっている。末尾3桁の中央の桁は出荷先のブランドを示していることは容易に推測できる。おそらく、iiyamaモデル用のBIOSは「1IC」などのように中央の桁が「iiyama」の頭文字である「I」になっている可能性が濃厚。iiyamaモデルというのはパソコン工房で販売しているBTOパソコンのこと。

ただ、iiyamaモデルのBIOSイメージ・ファイルの入手が困難であるため、詳細は不明。上記のmouseモデルBIOSとの相違点などもわからないけど、おそらくPOST画面で表示されるフルスクリーン・ロゴの画像が差し替わっている程度の違いだと推測できる。

MSIバージョンBIOS

Z390M-S01はOEMマザーボードなので、正式にMSIから公開されている情報はないと思い込んでいたけど、偶然見つけた中国語版のWEBサイトに情報が掲載されていて、BIOSのバイナリ・ファイルも配布されていた。マウス向けに出荷しているBIOSとは別に、MSIで独自にBIOSを並行ビルドして配布しているようだ。

Z390M-S01

MSIが正式に配布しているBIOSなので、Z390M-S01のBIOSをこれらに書き換えても問題なく動作はするだろう。中国語版のWEBサイトで配布されているものだけど、BIOSのインタフェース言語は英語が基本なので、設定項目が読めないということもないだろう。しかしながら、MSI版への書き換えは推奨しない。販売店からリリースされたものでないBIOSへの書き換えなどはやらないほうが無難だ。

更に言えば、マウスから出荷されているPCのZ390M-S01はM-FLASHが無効化されているので、どうやってMSI版のBIOSに書き換えるのかは各自で考えてもらうより他にない。マウスが配布しているBIOSはM-FLASHを使わずに書き換えるので、MSI版のBIOSに書き換える方法もあるだろうけど、他製品のBIOSを間違って書き込んでしまわないようにするための安全装置、様々なセキュリティやプロテクトを解除するなど、ハッカーのような知識が必要で、はっきり言って楽ではない。

また、BIOSの書き換えに伴ってOEM版のOSの起動に必要な情報も書き換えてしまい、別のマザーボードに変わってしまったと判断されてWindowsのデジタル認証が通らなくなってしまう可能性もあるので、どうしてもやりたいならば、そういったリスクがあることも承知の上で自己責任で試してほしい。

Z390M-S01のMSIバージョンBIOS一覧
BIOS 更新内容 MRC CPUID Rev. 備考
E7C24IMS.100
(7C24v10)
  • New BIOS Release
0.7.1.80 906EA 9A  
906EB 9A  
906EC 9E  
E7C24IMS.110
(7C24v11)
  •  Improve memory compatibility.
  • Update Micro code.
0.7.1.80 906EA 9A 同上
906EB A4 変更
906EC A2 変更
E7C24IMS.130
(7C24v13)
  • Add TG setting
  • Optimize M.2 Genie.
  • Improve S4 resume issue.
  • Improve Intel 750 nvme compatibility.
0.7.1.95 906EA AA 変更
906EB AA 変更
906EC A2 同上
906ED AA 追加
E7C24IMS.140
(7C24v14)
  • Update RST driver to 17.2
  • Update Microcode to support upcoming cpu.
0.7.1.95 906EA AA 同上
906EB AA 同上
906EC A2 同上
906ED B0 変更
E7C24IMS.150
(7C24v15)
  • Update RST driver to 17.5
  • Update Microcode.
0.7.1.110 906EA B4 変更
906EB B4 変更
906EC BE 変更
906ED BE 変更
E7C24IMS.160
(7C24v16)
  • Update Microcode.
  • Improved TPM function.
0.7.1.112 906EA CA 変更
906EB CA 変更
906EC CA 変更
906ED CA 変更

よくある質問

Q1. 自分のPCのBIOSと、記事記載のBIOSとはバージョン番号が異なるが、どちらが新しいBIOSか?

A1. マザーボードの型番は同じでも、メーカーの判断で改良やマザーボードに採用されているハードウェアの変更等に伴ってBIOSをまったく異なるものに変更することがある。情報はナマモノであり、記事に書いたそばから陳腐化していくものなので、記事記載のBIOSバージョンが最新とは限らない。枝分かれしたBIOSについては調べようがないため、バージョン番号がまったく異なる場合、どちらが新しいかはわからない。なお、記事記載のBIOSバージョンに誤記はない。


Q2. 最新のBIOSをダウンロードできるWEBページのURLを教えてほしい。

A2. リテール版として一般に販売されているマザーボードとは異なり、Z390M-S01はOEMマザーボードであり、誰でもアクセスできる場所にBIOSが公開されているわけではない。マウスコンピューターから購入したPCの場合、ダウンロードのためには「U1~」から始まるシリアルナンバー(下図参照)をサポートページで入力することが必要で、サーチエンジンによる検索ではヒットしない場所にある。パソコン工房から購入したPCの場合、シリアルナンバーが「U3~」か「U4~」で始まっていたり、採番の方法が異なるため、同ページに入力してもダウンロードページが開けるとは限らない。

©Mouse Computer Japan

Q3. どこを探しても最新版のBIOSが見つからない。BIOSのバイナリ・ファイルを電子メールで送ってほしい。または、代理してBIOSを公開してほしい。

A3. 購入元の販売店からBIOSの更新を指示されていない場合、BIOSは更新しなくて良いという判断だと理解するべき。無理に最新版のBIOSを探し当てる必要はない。また、マウスコンピューターから正規の手段で購入したPCかどうか当ブログでは判断できないため、BIOSのバイナリ・ファイルを個別に送ることはない。BIOSを更新したことでトラブルが発生したとしても当ブログは責任を持てない。

また、BIOSが更新されるたびにバイナリ・ファイルを希望者全員に送付しなければならなくなるため、現実的ではないし、当ブログはそういったサービスを提供しない。不特定多数がアクセス可能な場所にBIOSを公開することもない。初心者が不用意にBIOSを更新しようとしてトラブルが続発する事態のほうが問題と考えている。

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参考資料

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