実物のタービンブレードで作ったピン

最終更新:2017/01/13

turbine blade pin

ネクタイピンだったタービンブレードをラペルピンに改修してみた。

元はボーイング747(通称「ジャンボジェット」。今では中型以上のジェット旅客機をまとめて「ジャンボ」と呼んでしまう傾向にあるけど、元ネタはコレ)に取り付けられていたジェットエンジンの一部だったもの。1万時間以上空を飛んでいたものを定期交換し、あとは捨てるだけだったものだけど、タービンブレードは特殊鋼でできていて、およそ20cmほどの長さの1枚が10万~20万円もするそう。

壊れているわけではないし、それをただ捨ててしまうのは忍びない、と全日空の整備士のみなさんが業務外の時間を利用してブレードをネクタイピンとして生まれ変わらせた。上でも書いたように、特殊鋼でできているので輪切りにするだけでもかなりの手間がかかったに違いない。それを手売りで売り出してみたところテレビでも紹介され、当時大変な人気を博した。「このタービンブレードは全日空所属のJAxxxx番機の一部として一万何千時間空を飛んでいました」という証明書までついているニクい演出もされている。ひと目で気に入ってしまい、当時貧乏な学生だった私が5千円ほどを払ってまで、手に入れたいものだった。

後にデザインも洗練されてANAの機内販売(通販)の正式商品に採用された。メッキもかなり厚くされ、新品じゃないかと思うくらい綺麗に作り替えられていた。ネクタイピンひとつが確か1万円以上もする高額な商品だったが、これまた在庫切れがかなり長く続くほどの人気商品だった。原材料が廃品だけに、入荷が一定ではなかったのだ。今はもうラインナップに残っていないレアアイテム。私も通販で購入してひとつ持っていたが、「これさえあれば絶対に落ちませんから」と、友人の門出に縁起物としてプレゼントしてしまった。

手元に残っているタービンブレードのタイピンは手作りだけあってメッキも薄く、切断面以外のジェットエンジンの高熱にさらされていた部分は焦げたか沸騰したかのような傷跡がたくさん残っている。それがまた味があって、そのタービンブレードが「良い仕事」をした証であることを主張しているかのようだ。

だいぶ前にネクタイピンの根元の溶接部分が折れてしまい、ペンケースの中にずっとしまっていたのだけど、昨日ふと「ピンバッジの金具(針の部分とバタフライクラッチ)を裏に接着したらラペルピンとして使えないだろうか」と思い立って手芸・クラフト専門店のユザワヤさんに行ってみた。

同じようなことを考える人は結構いるようで、金色、銀色、黒色の3色(針が極細のものもあった)が揃っていてオリジナルのピンを作れるようになっていた。

ついでに金属用の接着剤も買ってきた。最初は瞬間接着剤にしようかと思ったのだけど、過去の経験からメッキ部分が曇る可能性があった。そのため、硬化するのに時間がかかってもメッキが曇りにくいもの、ガッチリ固まるものを選んだ。ピンの根元は不意にテンションがかかることがあるので、瞬間接着剤特有の衝撃への弱さも問題になりえたからだ。最初の数分は動かせるので位置調整もしやすい。ピン側の接着面に多めにつけ、はみ出した接着剤は固まる前にカッターナイフで切り取ってやれば綺麗に仕上がる。

で、出来上がったピンが冒頭の写真。溶接したかのようにガッチリ固まっている。

取り付けられてから取り外されるまで一万時間以上も事故がなかったということから、就職活動の時も「落ちないお守り」として身に付けていたし、2001年9月11日のアメリカ同時多発テロの直後に仕事で飛行機に搭乗して日本の裏側まで行かなければならなかった友人にもお守りとして持たせた。友人も無事に帰国して、今も私の手元にある。これからも私の「正念場」のお守りとして大事にしたい宝物のひとつである。