DAIVのCPUクーラーを忍者五に換装

最終更新:2019/10/05

2019年1月頃に買ったマウスのDAIV-DQZ530S1P-EX9にはIntel Core i9-9900Kが搭載されている。出荷時に搭載されていたCPUクーラーではi9-9900Kを相手にするには冷却能力不足なのではないかと常々思っていたことと、CPUの負荷が上がると不定期にファンから轟音を出すため、ストレスが溜まっていた。元気な時はまだいいけれど、体調が良くない時や疲れている時は不意に大きくなる騒音が辛く感じる。そこで、CPUクーラーの換装を計画した。

免責事項

お決まり文句だけど、たかがCPUクーラーの換装といえど、BTOパソコンの改造行為にあたるため、換装後はメーカーの保証は受けられなくなる。換装時にミスがあってCPUやCPUソケット(マザーボード)を破損してしまったとしてもそれは自己責任となる。本記事を参考にしてCPUクーラーを換装を試みて失敗したとしても当ブログは一切責任を負えないので了承のうえ、活用いただきたい。

現用CPUクーラーの性能

今回換装する92mmサイドフロークーラー。4本のヒートパイプを備え、まったく冷えないわけではないけど最大3,800rpmで回るためかなりの轟音。

右の写真が今回換装する対象のCPUクーラー。どうやら、マウス・コンピューターのオリジナル設計のクーラーらしいけど、とにかく情報が少ない。少なくとも、第6世代Core iシリーズ・プロセッサの頃にはNEXTGEARやLITTLEGEARのようなマウスのBTOパソコンに採用されていたもので、設計そのものは新しくない。

本当に銅製かどうかはわからないけど銅色の4本ヒートパイプを備えたヒートシンクの前に7枚のファンブレードを備えた92mmファンがネジ留めされている。測ったみたところ、ファンの厚さは一応25mmあったけど、フレームがないせいか目測だともう少し小さく見える。

ヒートシンクはマザーボードに取り付ける時の作業性を良くするために後背部が絞り込まれているので、ヒートシンクの体積とフィンの表面積を小さくする要因になっているように見える。

いずれにせよ、92mmサイズのファンとそれと同程度の大きさのヒートシンクでi9-9900Kは荷が重すぎるだろうな、ということは容易に想像がつく。DAIVはプロフェッショナルのクリエイターの要求にも応えられるパソコンを売り文句のひとつにしているけど、CPUがハイエンドでもCPUクーラーがエントリーレベルのものではその性能をプロフェッショナルが満足するレベルで発揮できるとは思えない。

冷却性能(電力制限95W)

とりあえず、現用CPUクーラーの力量を整理しておく。現用品を取り外してしまってからではデータ採りも容易にできなくなるので、比較対象にする記録を残しておかないと後悔の元になる。

まずは、短期電力制限(Short Duration Power Limit)を200W、長期電力制限(Long Duration Power Limit)を95W、つまり定格運用の設定にしてLightWave 2015のレンダリングで負荷試験をしてみる。LightWaveの起動直後とシーン・ファイルのロード直後はCPUの負荷が安定しないので、しばらくアイドリングしてからグラフの1:00ちょうどのタイミングでレンダリング開始した。計測と記録はHWiNFO64で行った。室温は夏場だったので30℃前後でやや高め。

水色:CPUコアクロック 黄色:CPUパッケージ電力 赤色:CPUパッケージ温度

グラフを見ると、1:00の直後からCPUのコアクロックが4.7GHzのあたりで平坦化、ラジオシティの演算が終わったところで8コア16スレッドでのレンダリングが始まり、消費電力が急上昇する。電力が高い状態は長くは続かないので、すぐに95Wまで下がって安定する。95Wの電力制限がかかっている間はコアクロックは4.1~4.2GHzで推移する。

肝心のCPU温度は電力が上昇した時に95℃まで上がっているけど、その後は75℃前後で推移している。熱設計電力(TDP)である95Wに制限して定格運用する分には現用品のCPUクーラーでもとりあえず冷やせていることにはなる。ベースクロックは3.6GHzだから、これでもターボブーストはかかっていることにはなるけど、i9-9900Kを買ってこの結果で満足する人は少ないだろう。

冷却性能(電力制限200W)

次に、短期電力制限(Short Duration Power Limit)を200W、長期電力制限(Long Duration Power Limit)も200W、つまりオール・コアが定格最大の4.7GHzで張り付く設定にしてLightWave 2015のレンダリングで負荷試験をしてみる。他の条件は上の試験と同じ。

グラフを見ると、1:00の直後からCPUのコアクロックが4.7GHzのあたりで平坦化、8コア16スレッドでのレンダリングが始まった後、消費電力が150Wを超えた状態で推移する。電力が150Wを超えている間はコアクロックは4.7GHzで推移するけど、後半からサーマル・スロットリングがかかり始め、4.6GHzまで低下しているところが現れ始める。

CPU温度は右肩上がりに上昇し、ほぼ100℃に近い温度で推移している。定格最大ではあるものの、CPUのパワーを最大限引き出そうとすると現用のCPUクーラーではまったく冷やせていることにはなる。Tjmaxの100℃に近くなった時にCPUの破損を防ぐための安全機構が有効になっていなければCPU温度は際限なく上がっていってしまうことを表している。クーラーのファンが3,800rpmで回って一生懸命風を送ってはいるんだろうけど、ヒートシンクが受け止められる熱の容量が限界に達してしまっていて風を当てたくらいでは間に合っていないと予測される。安全機構が働いているから即座にCPUの破損につながるわけではないけど、こんな状態で常用していたらCPUの寿命は確実に短くなっていくだろう。

VRMを流れる電流はCPU電圧が1.3Vとして、155Wの時で119.2Aくらい。Z390-S01の8フェーズのVRMでこれを受け止めるわけだから、1フェーズあたり14.9Aくらい。MOSFETの損傷を心配するレベルではないけど、どうせOEMマザーボードなので壊れたところでそれほど惜しくはない。

CPUクーラーの取り外し

CPUクーラー本体の取り外し

何はともあれ、CPUクーラーの本体を取り外す。スプリング・スクリューにはなっていたけど、トップフローのCPUクーラーによくあるような取り付け方法で、4点留めになっている。グリスが固着しているようなこともなかったので簡単に取り外せた。

CPUクーラーを取り外した直後のCPU。ソケットのカバーでCPUのヒートスプレッダを押さえているのでクーラーを取り外したと同時にCPUも一緒に外れてしまうようなことはない。
CPUクーラーの受熱ベース側。銅色のヒートパイプと銀色の受熱ベースの間に溝があって、そこに集中してグリスが入り込んでいるのがわかる。


CPUグリスにはダイヤモンドグリスが使われているはずだけど、見た目ではわからない。ヒートスプレッダを若干はみ出しているものの、厚すぎずもなく、少なすぎもせず、お手本のような塗り方だった。さすがにBTOパソコンを長く作っているマウスだけあって、組み立て作業者の技能は高いようだ。CPUに残っているグリスに縦縞が入っているように見えるのは、CPUクーラーの受熱ベース側に凹凸があって、その溝の部分だけグリスが厚くなっているため。

まだ購入してから7ヶ月くらいしか経っていないので、まだグリスが乾燥するまでにはなっていなかった。実際のところ、グリスが乾燥すると冷却性能が極端に低下するというのは一種の民間信仰みたいなもので、CPU側のヒートスプレッダとクーラー側の受熱ベースプレートの目に見えないくらいの凹凸を埋め合わせられていれば十分なものらしい。もともとシリコンを基剤にした普通のグリスは金属に比べれば熱伝導率が極めて悪いもので、シリコンが乾いてしまったくらいならそれほど性能に影響が出るものではないそうだ。もちろん、オーバークロック用の特殊なグリスなら短期間での冷却性能の悪化というのは起こりえるのかもしれないけど。

CPUグリスの拭き取り

リムーバーをあらかじめ買っておいたので、ウェスに適量含ませてグリスを拭き取る。グリスを綺麗に拭き取り終わるとi9-9900Kのヒートスプレッダが見えてくる。そんなに頻繁にお目にかかれるものでもないし、すぐにまたグリスを塗って塞いでしまうので、記念撮影しておく。R0ステッピングはまだ出ていなかった頃のものなので、S-Specは当然「SRELS」(P0ステッピング)になっている。

ちなみに、リムーバーはできれば電子機器用のものがいいけど、無水エタノールでも代用できる。無水エタノールは一般の薬局でも売っているので入手しやすいのが特徴。ただ、茶色の薬瓶に入った500mlの大瓶しかなくて小瓶がなかったりするので、まともに買うと結構な出費になる。油性マジックで書いてしまったラクガキも消せるので清掃用品としても役に立つんだけどね。

バックプレートの取り外し

次に、CPUクーラーのバックプレートを取り外す。DAIVのケースは設計があまり新しくなく、CPUのバックプレートにあたる位置のメンテナンスホールのカットアウトの面積が小さい。バックプレートがほんのわずかだけどカットアウトの裏側に回り込んでしまっているので、マザーボードを一度取り外してからでないとCPUクーラーの換装はできない。

BTOパソコンはパーツの交換を前提としていないので、ケースの設計を改善する必要なんてないと考えているんだろうけど、とにかく作業性が悪い。マウスのBTOパソコンを二度と買いたくなくなるくらい中途半端な設計だと思った。

このバックプレートがまた取り外しにくくて、組み立て時の作業性を良くするために両面テープでマザーボードの裏に貼り付けられていた。トップフローのCPUクーラーなど軽量級のヒートシンクを使う製品の場合は作業性を良くするためにバックプレートを両面テープで仮止めしてからクーラー本体を取り付けるようになっているものも多い。ただ、自分で取り付けたものではないので両面テープの位置を把握していないため、とにかく力任せに引き剥がすしか方法がない。

忍者五への換装

現用のCPUクーラーの部品を全部取り外し終われば忍者五の取り付けにかかれる。まずはバックプレートを取り付けるわけだけど、できるだけ手間を減らしたかったので、マザーボードのネジを8本すべて外した上で基板を少し浮かせた状態で作業しようとした。

忍者五のバックプレートにはマウンティング・プレートを取り付けるためのネジと、そのネジをCPUソケットの規格に合わせた位置に固定し、バックプレートがマザーボードの裏面を傷つけないようにするためのゴム製のクリップがあらかじめ組み付けられている。ところが、このクリップがとても外れやすく、そのうちひとつが作業中に脱落してケース内で一時行方不明になった。ケースを立てたままでのCPUクーラー換装作業は難易度が高いと言われる理由をようやく理解した。脱落したクリップは5.25インチベイの中に落ちていたのをすぐに発見できたのでまだ良かったけど、紛失したり、簡単に拾えないところに落ちていたら面倒なことになっていた。

バックプレートの取り付けさえできてしまえば後は楽勝だろうと思ってマザーボードを再度ネジ留めしてしまったのが良くなかった。忍者五はとにかくヒートシンクが大きく、取り付けにひと苦労した。マウンティング・プレートのネジ穴がヒートシンクのフィンが邪魔でほとんど見えないので、ドライバーでスクリューを回した時の手の感触だけを頼りに手探り状態でヒートシンクを固定するのはなかなか難易度が高かった。少し締め過ぎた感もある。

マザーボードを裸の状態で組み立てられれば苦労はしないんだろうけど、今回はすでに組んであるBTOパソコンの換装なので、作業領域がとにかく狭かった。ScytheのCPUクーラーはヒートシンクにワイヤークリップでファンを取り付けるのが伝統だけど、ヒートシンクを先に取り付けてしまうと天板側のワイヤークリップの取り付け、取り外しが困難になる。ヒートシンクに先にファンを取り付けてからCPU上に設置することになるので、ファンを交換したくなったらヒートシンクごと取り外してからでないと作業できない。

忍者五のヒートシンクとケースのトップの間にはほとんど隙間がない。指を入れてもワイヤークリップには届かないし、細い工具を差し入れたとしてもワイヤークリップを引っかけるのに必要なテンションはかけられない。

そんなわけで、標準装備の800rpmのファンでの冷却性能もせっかくだから調べてみようと思ってたんだけど、ファンを交換するたびにヒートシンクを取り外さないといけないので面倒くさくなった。重量級のヒートシンクを何度もグリグリやっているうちにCPUソケットのピンを曲げてしまうのではないかと心配になったのもある。

ファンの換装

NF-P12 redux – 1700 PWMのパッケージ。ケースファンにここまでしなくてもいいのでは、と思うくらい格好いいデザインの豪華な箱に入っている。

忍者五は標準構成では800rpmの低速回転のファンを2個使うようになっているんだけど、さすがにi9-9900Kを冷やすのに800rpmでは心もとなく感じた。忍者五のパッケージに書いてあった800rpmファンの仕様を参照すると43.03CFMなのでケースファンとしての風量はそこそこだけど、CPUクーラーの冷却ファンとして使うには物足りない。静音性を重視して800rpmにしたのだろうし、同回転数でPWMファンというのもScytheの製品の中でもレアなんだけど、素直に1200rpmのファンでも良かったような気もする。

そこで、吸気側のファンを自作PCユーザーに定評のあるオーストリアのNoctua製ファンに換装した。Noctuaのケースファンはおおまかに風量重視型と静圧重視型の2種類に分類できるんだけど、回転数の高いものを選べば風量はある程度稼げるので、静圧重視型にした。

Noctuaのケースファンというと、NF-A12x25が有名だけど、ケースファンとは思えないほどの価格なので、廉価版の「NF-P12 redux – 1700 PWM」を選んだ。四隅の防振ラバーパッドがついていなかったり、回転数を調整するLNA(Low-Noise Adapter)と呼ばれる変換ケーブルがついていなかったりしてコストダウンしてある。Amazonで買うと高いけど、PCパーツ・ショップから購入すれば1700円くらいで買える。日本国内の輸入販売はScytheが担当している。

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排気側のファンはKazeFlex120 RGB PWM 1200rpmを使った。RGBである必要はまったくないんだけど、無限五 TUFで使わなかったファンがあったので、それを単に流用しただけ。写真に写っているファンの四隅が黄色なのはTUFゲーミングのブランドカラーであるため。どうせサイドパネルで塞いでしまうので、色はどうでもよかったのでそのままにしてしまったんだけど、忍者五に付属していたファンの防振ラバーパッドと交換しても良かったかな、と後になって思った。

吸気側のファンと排気側のファンの回転数が異なるので、忍者五に付属していたY字分岐ケーブルは使用しなかった。個別に制御できたほうが何か問題があった時に対処しやすい。そもそも、マザーボードのファン・コネクタは余り気味なので、NF-P12 redux – 1700 PWMを「CPU_FAN1」に、KazeFlex120 RGB PWM 1200rpmを「PUMP_FAN1」に接続した。

二重反転ファン

NF-P12 redux – 1700 PWMが反時計回り、KazeFlex120 RGB PWMが時計回りに回転するので、二重反転ファンを構成できる。ファンから出る風は、回転するプロペラから出るものである以上、完全に直進するものではなく、多少は捻れている。風が捻れていると風速のベクトルのうち、ヒートシンクのフィンに垂直方向に当たる成分があることになるので、フィンの間で乱流が起こって渦を巻き、排気方向へのエアーの抜けが悪くなる。そこで、吸気側のファンで反対方向の捻りを加えてやることで風の直進性を良くする効果を狙う。また、同じ方向に回るファンを二重に設置すると共振して騒音が大きくなる傾向にあるので、騒音対策にもなる。

一般的な製品では反時計回りのファンがほとんどなんだけど、Scytheの製品は伝統的に時計回りだった。最近、スリムタイプの15mm厚のケースファンが発売されたんだけど、風魔弐で使った薄型プロペラの金型を転用しているようで、スリムタイプは反時計回りに変わっている。

品名 回転数 風量 静圧
吸気側 Noctua NF-P12 redux – 1700 PWM 1,700 rpm 70.74 CFM
(120.2 m3/h)
2.83 mmH2O
排気側 Scythe KazeFlex120 RGB PWM 1,200 rpm 51.17 CFM
(86.9 m3/h)
1.05 mmH2O

忍者五の性能

取り付けが終わったのでとりあえずサイドパネルを閉じる前に電源を入れてみた。NF-P12 redux – 1700 PWMには防振ラバーパッドがついていないのでどうなるか少し心配だったけど、防振しないといけないほどNoctuaの加工精度は悪くなかった。ベアリングも良い物を使っているようで、軸がぶれているような感じはまったく見受けられなかった。

冷却性能(電力制限95W)

まずは、短期電力制限(Short Duration Power Limit)を200W、長期電力制限(Long Duration Power Limit)を95W、つまり定格運用の設定にしてLightWave 2015のレンダリングで負荷試験をしてみる。室温は30℃前後でほぼ同じ。

忍者五に換装後のCPU温度は95Wの電力制限がかかっている間は63℃くらいで推移している。取り外したCPUクーラーに比べて12℃ほど下がった。

冷却性能(電力制限200W)

次に、本丸である定格最大の4.7GHzでの冷却性能を測る。短期電力制限(Short Duration Power Limit)を200W、長期電力制限(Long Duration Power Limit)も200Wの設定でLightWave 2015のレンダリングで負荷試験をしてみる。他の条件は同じ。

忍者五に換装後のCPU温度は8コア16スレッドでのレンダリングが始まったあたりから約80℃くらいに抑えられている。当然ながらサーマル・スロットリングも働かず、8コアすべてのコアクロックが4.7GHzに張り付き、ほぼ完全に平坦化している。室温が30℃くらいあったことを考えると、真冬はもう少し余裕が出るのではないかと期待してしまう。

少し意外だったのが、8コア16スレッドでのレンダリングが始まった後、消費電力が145W前後で推移していて150Wを超えなくなったこと。コアクロックは4.7GHzになっているので処理速度に差が生じるとは考えられないし、消費電力が高いほどCPUの能力が良くなるわけでもない。

試しに、ロード・ライン・キャリブレーション(Load Line Calibration、LLC)を「Auto」からもっともアグレッシブな設定で下がろうとする電圧をむしろ上げようとする「Mode 1」に変更したみたらレンダリング中に画面が真っ黒になってPCがダウンしてしまった。そこで、電圧が一定になるように維持する「Mode 4」では消費電力が170Wを超えるようにはなったものの、CPUの発熱が尋常ではなくなり、忍者五でもCPU温度が100℃近くになってしまった。LLCは「Auto」にしておくのが無難なようだ。

冷却性能まとめ

上記の結果からCPU温度の推移だけ抜き出したのが次のグラフ。2:00~3:00あたりがCPUにフルロードがかかっている部分。

何はともあれ、大型のヒートシンクと大口径のファンを使ったことで17℃もの改善がみられ、余裕をもって4.7GHz常用ができるようになった。発熱の問題が解消されたことで心配事がなくなり、スッキリした。4.7GHzで回せない鬱憤も晴らせたので精神衛生的にも好ましい効果と言え、結果的には換装してよかった。

定格最大4.7GHzのパフォーマンス

LightWave 2015でのレンダリング時間は約10秒ほど短縮できた。率にして9%くらいの改善。2分切りも期待したけど、あとわずがのところで1分台には届かなかった。ただし、これは一番結果が良かった時のスクリーンショット。原因は不明なものの、ある試験では条件によってはレンダリング時間があまり変わらないという結果もあった。メモリがDDR4-2666なのも影響しているかもしれないけど、忍者五はメモリとの干渉クリアランスが厳しく、背の高いヒートスプレッダを装備したオーバークロックメモリを搭載して試験するのは難しい。

LightWave 2015
CPU 総レンダリング時間 パフォーマンス 備考
Core i7-860 685.2秒(11分25秒) 1.00倍 DDR3-1333
Core i7-9700K 148.9秒(2分28秒) 4.60倍 DDR4-3600
Core i9-9900K(95W) 132.4秒(2分12秒) 5.17倍 DDR4-2666
Core i9-9900K(200W) 121.1秒(2分1秒) 5.66倍 DDR4-2666

換装後

忍者五に換装した後のDAIVケースの内部の全体写真。マザーボードがZ390-S01ならとりあえず取り付けることは可能なので、ヒートシンクの大きさが気になって躊躇している人には参考になるかもしれない。CPUソケットの位置があと1cm左だったらリア側のケースファンと干渉してしまうところだったので、ほっとしているところ。

CPUまわりの設計がほぼ同じのMSI「MPG Z390 GAMING PLUS」や「Z390-A PRO」でも問題なく設置できるだろう。

付属品の不備

忍者五に付属していたワイヤークリップ。上のものが本来使うべきワイヤークリップで、下のものが間違って入っていたと思われるワイヤークリップ。よく見ると、縦方向のワイヤーの長さが違う。

付属品を袋詰めした時のミスだと思うんだけど、ワイヤークリップが1本だけサイズの異なるものが入っていた。ファンを取り付ける時にかなりの強さで引っ張ってもクリップが一向にヒートシンクのフィンに引っかからないのでおかしいと思って確認したら、他のクリップと長さが異なっていた。

おそらく、風魔弐の15mm厚ファン用のワイヤークリップか、改良前の旧仕様のものだと思うんだけど、長さが少し違うだけで片方だけ見た時に判別が困難な上、型番を書くところもないただの針金なので、仕様が違うものが紛れ込んでいるのに気が付かずに袋に入れてしまったのだろう。機能上必要なくても判別のためにクリップの形をわざと変えるとか、もう少し工夫が必要ではないかと思った。

たまたま無限五をデュアルファンにするために予備でついていたワイヤークリップを持っていたのでなんとか事なきを得たけど、忍者五が初めて購入したScythe製のCPUクーラーだったらファンの取り付けができずに詰んでいたところだった。付属品はよく確認したほうがいいようだ。

Scytheに連絡すればワイヤークリップくらいなら郵送で交換してくれそうな気はするけど、余計な手間はできるだけ避けたいのはお互い様なので、風魔弐などの25mm厚のファンを使わないラインナップを増やした時やクリップの設計を変更した時にパーツの管理方法も併せて考えて欲しかったところだ。

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旧メインPCのリフレッシュ (1)

最終更新:2020/04/25

いよいよ旧メインPCをリフレッシュして性能の底上げをはかり、サブPCでありながら優れた演算能力をLAN経由で提供させることで、ネットワーク・レンダリングの実現への第一歩を踏み出す。

要は、パーツをかき集めてPCを自作するわけだけど、感想から先に述べると、パーツの選定や組み立て作業が非常に楽しかった。学生の頃に1円でも安く、Windowsが動くPCを手に入れたくて自作PCに手を出したわけだけど、その経験が今になって役に立った。その当時に比べれば自作用のPCパーツも手頃で高性能なものが手に入りやすくなった。昔はケースファンもサイズさえ合っていれば回転数や静音性なんてのは二の次で選択肢も少なかった。今ではPCケースやケースファンだけでも数え切れないほどの種類があって希望のものを絞り込むのも大変なくらい。

BTOパソコンの場合は、完成品ゆえに自分はお金を出しただけで何も苦労していないために、長所よりも欠点ばかりが気になってしまうけど、自作PCなら欠点を最初から承知のうえで組んでいるので欠点も含めて愛着すら感じるようになる。目的のために思い切って削ってしまう性能も選択できるためコストの調整も容易で、後に強化したくなったら当初は備えていなかったパーツを追加すればいいのでまだ楽しみも残る。

電源仕様

PCを自作する上で根幹となるATX電源は旧PCから流用する。新しい電源を買ってもいいんだけど、旧電源を流用してもどの程度までまともなPCを組めるのか試してみたかったのもある。流用する電源は古いBTOパソコンに搭載されていたHEC-500TE-2WXという、今では値段もつかないような年代物。

電源の仕様は次の表のとおり。規格はATX12V Ver.2.3。Haswell世代以降のC6/C7ステート(12V 0.05A)には対応していないけど、TDP 95WくらいのCPUで過度なオーバークロックをしなければまだ使える電源。C6/C7ステートをBIOSで無効にしてスリープ機能を使わなければいいだけの話。ただ、12Vが2系統あるため、1枚で消費電力が200Wを超えるようなハイエンド・クラスのグラフィックス・カードを搭載すると容量不足に陥る可能性がある。搭載するとしても、せいぜい150Wが限度だろうし、グラフィックス・カードを搭載したいなら12V 1系統の新しい電源を買ってしまった方が無難。

電源仕様
モデル +3.3V +5V +12V1 +12V2 -12V +5Vsb 定格出力
HEC-500TE-2WX 24A 15A 25A 18A 0.3A 2.5A 500W
120W 444W 3.6W 12.5W

当初の予定構成

最初はCPUにオーバークロックができない代わりにTDPが65Wと控え目のCore i7-9700を選び、B365チップセット搭載のMicroATXマザーボードに載せ、メモリもバリューモデルにして2×8GBで1万円もしないものにして使う予定だった。当初予算は7万円程度。

旧メインPCのマザーボードはMSIのH55M-P33というモデルだったんだけど、旧PCケースはミニタワーで奥行きがあまりないタイプで、シャドウベイに3.5インチHDDを搭載するとマザーボードのATX電源コネクタやDIMMスロットの上に被さってしまっていた。また、92mmサイズのトップフローCPUクーラーとの干渉マージンもギリギリだった。寸法がかなりシビアだったので、旧マザーボードの部品配置を参考に、PCケースを買い換えないと仮定して、MOSFETのヒートシンクが小規模でCPUソケットがPCI Express x16スロットの右端と並ぶものを探していたら、ASUSのPRIME B365M-Aが該当する唯一の機種だった。

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Intel Core i7 9700 デスクトッププロセッサ 8コア 4.7GHz LGA1151 300シリーズ 65W
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Intel (2019-05-15)

ところが、いざi7-9700が発売されてみると、以前から指摘されていたIntel CPUの脆弱性を緩和することを目的として最初からR0ステッピングで製造されていて、既存のシステムに導入しようとするとOSの再インストールが必要になることが判明した。脆弱性への対策なので仕方ないと言えば仕方ないけど、中途半端な時期に中途半端なものを投入してくれたものだ。

問題とされている脆弱性も、それを悪用するには相当に高度な技術が必要で、一般消費者が不特定多数の攻撃者からサイドチャネル攻撃を受けて損害を被る可能性は限りなくゼロに近い。心配すべきなのは、例えばVPNのパスワードを生成するワンタイム・パスワード・ジェネレータを持っているなど事業所のファイヤーウォールを通過する権利がある組織内部の人間が攻撃者になった場合で、ファイヤーウォールを突破する手立てもなく無作為にあらゆるIntel CPUのシステムに侵入できるわけではない。P0を選ぶかR0を選ぶかはユーザーの任意として、無印型番のCPUもとりあえずP0ステッピングでリリースして欲しかったものだ。

旧PCのシステムもだいぶ使い込んで不必要に大量のデータを抱え込んでいてパフォーマンスが落ちていると言えばそうなんだけど、喪失すると困る重大な情報がシステム・ドライブの普段意識していない領域に格納されていることもあるのでOSのクリーン・インストールだけはどうしても避けたい。

もちろん、システム・ドライブのクローンをとっておいて、重要なデータがあることが判明したらそこからサルベージすればいいんだけど、レジストリに保存されている設定などの復元にはそれなりに手間がかかるので、そこまでしてB365を前提としたPCを組む必要があるのだろうか、と意欲が喪失してしまった。

また、8コアのCPUでなければ所期のパフォーマンスを発揮できないことが予想されたので、i7-9700の代わりにCore i5 や i3 を採用することはできず、B365チップセットを採用した安価なシステム構築は諦めざるを得なくなった。安上がりに組み上げることだけが今回のPCリフレッシュの目的ではないというのもある。

構成変更

P0ステッピングで製造されている8コアCPUは、i7-9700K  か i9-9900K しかなく、コストパフォーマンスを考慮してi7-9700Kを選ぶことにした。K型番を選ぶということは、Z370かZ390のマザーボードにしないと十分な性能を発揮できないということ。

旧PCケースの流用にはCPUソケットの位置が重要であったため、唯一の選択肢だったPRIME B365M-Aを使えなくなったことでMicroATXである必要性もなくなってしまった。

そこで、次のような要求を再設定してパーツ選定をやり直した。どうせ最初からやり直すなら、年甲斐もなく「光り物PC」にもチャレンジしてみることにした。

  1. マザーボード
    • CPUの消費電力制限を解除しても不安定にならない堅牢な電源回路を持つこと。
    • Intel LANコントローラ・チップを搭載していること。
    • Wi-FiやBluetoothを最初から内蔵している必要はなく、後の拡張性のためにCNViスロットが備えられていればいい。
    • 高音質オーディオ・コントローラ・チップを搭載していること。
    • PCIe 3.0 x4接続のM.2 NVMe SSDを1基以上搭載できること。
    • SATAドライブを最低4基接続できること。
    • フロントUSBポートをUSB 2.0/3.0それぞれ2ポート分以上搭載していること。
    • 可能ならばUSB Type CのフロントUSBポートを搭載していること。
    • 可能ならばThunderbolt AICコネクタを搭載していること。
    • パラレル・ポートやシリアル・ポートは必要ない。
    • イルミネーションも楽しんでみたいのでRGB LEDを制御可能であること。
  2. CPUクーラー
    • i7-9700Kを最大定格4.6GHzで動作させても冷やしきれる空冷CPUクーラー。
    • ファンだけでなく、ヒートシンクにもRGB LEDを内蔵していること。
  3. メモリ
    • メモリ・クロックは2666MHz以上。容量は16GB以上。
    • RGB LEDのライトバーを内蔵したヒートスプレッダ付きメモリ・モジュールであること。
    • RGB LEDヘッダからではなく、DIMMスロットからSMBus経由でLED制御できること。
  4. PCケース
    • 組み立てやすく、メンテナンス性に優れていること。
    • 搭載コンポーネントに重なりが少なくアクセスしやすいこと(特定のパーツにアクセスするために他のコンポーネントを取り外したりしなくていいこと)。
    • HDDの厚さの違いのようなちょっとした規格違いに影響を受けるようなことがなく、パーツを選ばず汎用性が高いこと。
    • 剛性や工作精度に優れ、長く使えること。スチールが主材料であること。
    • フロントUSB 2.0/3.0ポートをそれぞれ2ポート搭載していること。
    • 可能ならばUSB Type CのフロントUSBポートを搭載していること。
    • 3.5インチHDDを2基以上搭載できること。
    • 一般的なサイズの内蔵5.25インチ光学ドライブを搭載できること。
    • 中型~大型の空冷用CPUヒートシンクが収まること。
    • 内部のRGB LEDが見えるようにアクリル又は強化ガラス製のサイドパネルであること。

パーツ選定

CPU

CPUはi7-9700Kと決まっているけど、R0ステッピングのものが既に出回っているので、P0ステッピングのものを選ばなければならない。実店舗を持っているPCパーツ・ショップの場合はこだわり派向けにP0とR0を別の箱に区別して販売してくれていることもあるけど、通販などでは一般的にはステッピングを指定して注文することはできない。大手ほどその傾向が強く、P0が送られてくるかR0が送られてくるかは運任せになる。

そういった場合、価格は大手ほど安くはないけど、あえて小規模な店舗を選ぶと、ある程度融通をきかせてくれて発送する前にステッピングを確認してから送ってくれるところがある。もちろん、P0の在庫が尽きている場合は確認してもR0だけど、問答無用でR0を送りつけてくるようなことはないので、特定のステッピングを入手したい場合は小規模店舗や中古販売店を狙ってみるのもありだ。

INTEL インテル CPU Corei7-9700K INTEL300シリーズ Chipsetマザーボード対応 BX80684I79700K【BOX】【日本正規流通品】
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参考価格: ¥ 47,990 (2019-08-10)
インテル (2018-11-02)

マザーボード

最近はMSIが続いていたけど、ASRockも気になっていたので、ASRockのZ390チップセット搭載マザーボードから選定することにした。

ASUS、MSI、GIGABYTEも含めればいくつか選択肢はあったけど、すべての要求を満たすようなマザーボードはハイグレードのミドルレンジかハイエンド・クラスになってしまう中、ASRockではミドルレンジ・クラスにも要求に合致するものがあった。「Z390 Extreme4」か「Z390 Phantom Gaming 6」の二者択一になった。

Z390 Phantom Gaming 6は7セグメントLED(古典的なデジタル時計方式の数字表示器)を採用したデバッグ機能やオンボードに電源ボタンとリセットボタンを備えているなど、PCケースに不具合があった場合やベンチ板での検証にも便利な装備があることが魅力。しかし、そんなに頻繁にパーツを組み換える予定がなかったことと、コンシューマ向けのルーターやハブには対応製品がほぼないこともあり、2.5ギガビットLANは必要ないと思われたので、Z390 Extreme4に決定した。

ASRock Intel Z390 チップセット搭載 ATX マザーボード Z390 Extreme4
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参考価格: ¥ 19,712 (2019-08-10)
ASROCK (2018-10-09)

CPUクーラー

海外製のCPUクーラーではヒートシンクにもRGB LEDを内蔵しているものが結構見受けられたけど、LED制御に専用のコントローラ(リモコン)やソフトウェアを使用したり、肝心の冷却性能が日本のPC自作派ユーザーにとって一定以上の評価や人気を得られていないといった問題があったため、決めきれなかった。日本設計のCPUクーラーは冷却性能重視のものが多く、通常のラインナップでヒートシンクにLEDを内蔵しているものはなかった。

幸い、ASUSのTUFゲーミングとのコラボレーションでScytheの人気空冷クーラー「無限五 Rev.B」の限定生産版としてヒートシンクにRGB LEDを追加したものがあった。LED制御は12V RGB LEDヘッダにケーブルを接続するだけのシンプルなものなので専用ソフトウェアが必要ないのもポイントが高かった。ただ、限定生産なので流通在庫がそもそも少なく、私が購入した後、日本国内では取り扱い店舗はひとつもなくなった。どうやら最後の1個だったらしい。海外に輸出したものを逆輸入するという手もなくはないけど、国内での価格を知っていると手が出せるような価格ではない。

イルミネーションを楽しみたい層には一定の需要があると思われるので、RGB LED内蔵のヒートシンクを採用した空冷CPUクーラーも通常のラインナップに加えて欲しいところだ。

結局、2019年中にはRGB LEDを内蔵した無限五は再販されることはなかったけれど、2020年1月にアドレサブルRGB LEDを搭載したモデルとして復刻した。

邪推かもしれないけど、ASUSとのRGB LED内蔵CPUクーラーの再販に関する取り決めには「アドレサブルRGB LEDを含む」とはどこにも書いてなかったということを根拠にしているのではないかと勝手に思っている。

アルミニウム色の味気ないヒートシンクの無限五ではないラインナップも改めて増えて、ライトアップにこだわりたい人にとっては朗報になったんじゃないかと思う。売り出し価格が1万円弱と通常版の無限五に比べると無視できないくらいの高めの価格設定なので、アドレサブルRGB LEDにどれだけ価値を見いだせるかどうかの商品ではあるんだけれども。

サイズの新型CPUクーラー「無限伍 ARGB PLUS」が発売、120mmファン×2基搭載

メモリ

RGB LEDをヒートスプレッダに内蔵したメモリは、Team、Corsair、Kingston、G.SKILL、GIGABYTEなど主要なメーカーに数多くラインナップがあるけど、大抵大型のヒートスプレッダが取り付けられていて、空冷のCPUクーラーとの干渉は避けられないものが多数見受けられた。特に、Corsairのメモリは高さが50mmを超えるため、空冷とは相性が悪い。Corsairはイルミネーションの見栄えを良くするにはDIMMスロットを全部埋めたほうがいいことを理解していて、RGB LEDのライトバーを内蔵しただけのためだけのダミーメモリを用意している。この発想は素晴らしいんだけど、メモリをオーバークロックするようなユーザーは水冷クーラーを利用しているという想定のようだ。ダミーメモリは意外と作っているところがなく、Corsair以外だとGIGABYTEくらいしかない。

G.SKILLのTrident Z RGBとTeamのXCALIBURが最終候補に残ったけど、XCALIBURが独特の斜めデザインで最大高48mmと高めだったため、44mmと控え目なTrident Z RGBを選択した。最初は高価だったハイクロック・メモリが最近は手頃な価格になってきたため、定格2666MHzでも2933MHz以上の選別メモリでも容量が同じなら価格に大差がなくなってきた。

IntelのCPUを採用しているシステムではハイクロック・メモリの恩恵を体感として感じにくいと言われているけど、高負荷ゲームや画像処理、暗号化/複合化処理、3DCGレンダリング、動画エンコードなどCPUとメモリ間で大量のデータをやりとりする用途では威力を発揮するようで、どの程度違いが生じるものなのか試してみたくなったので、3600MHzの製品を選んだ。CASレイテンシがCL16など短いものは万単位で価格が跳ね上がるので、バランスのいいところでCL19のものにした。JEDEC準拠のDDR4-3200メモリがCL22なので、3600MHzでCL19は十分速いと思う。

なお、Trident Z RGBの後継になるTrident Z Neoが発売されたので、ヒートスプレッダが両面黒のTrident Z RGBは入手しにくくなっていくと思う。DDR4 SDRAMは作れば作るほど赤字になっていくというほど価格の下落が続いていたため、半導体メーカー各社SDRAMチップを減産する傾向にあり、選別メモリは更に入手困難になるか、価格高騰の可能性がある。今後は付加価値が高く、利益の見込めるDDR5の開発、商品化を加速していくことになるのだろう。

PCケース

あまりにも安いPCケースを選んでしまうと、ドリルで穴をあけたり、ネジ穴を切ったりなんてのは当たり前くらいのよほどDIYに慣れている人でない限り、基本中の基本である組み立てで問題が起こる可能性が高くなる。マザーボードを設置する場所以外は特に規格がなく、各社の特徴が出やすいので、PCケースの選定が一番大変だった気がする。

要求を満たすようなPCケースはFractal DesignのDEFINE R6くらいしかない。というか、新しくPCケースを買うならFractal Designしかないと思っていた。安くはないけど、今後PCケースは買い換えないつもりで汎用性の高い製品を選んだ。USB Type Cをフロント・パネルに搭載していないものでもよかったんだけど、後からUSB-Cを搭載したオプションのフロント・パネルを購入するよりも若干安上がりだったのでDEFINE R6 USB-Cにした。こうして予算が徐々にオーバーしていくのである。

DEFINE R6は光学ドライブを搭載できる点でも貴重。オールインワン型水冷CPUクーラーの流行で、内部に場所をとり、ラジエータと干渉しやすい5.25インチ・オープン・ベイが嫌われ、最初から搭載していないPCケースが増えた。

USBで外付けするDVD/Blu-rayドライブが省電力化され、バスパワーでも駆動できるなど電源の心配がなくなったこともあり、5.25インチ・ベイを1基でも搭載しているPCケースのほうが珍しくなってしまった。実際、ほとんどのソフトウェアはダウンロード販売で、OSでさえUSBメモリからインストールするようになってしまったので、光学ドライブの出番は急激に減った。

サイドパネルが透明の、いわゆる「魅せるPC用ケース」はデザインが奇抜なものが多く、日本人の感覚や住宅事情に馴染まないために人気のケースというのは少ないんだけど、その数少ない中でFractal DesignのDEFINEシリーズは人気がある。シリーズ一貫してフロント・パネルが垂直、平面で潔く、奇抜な見た目よりも機能美を重視した主張しない設計が人気の理由のようだ。

最終構成

当初は旧PCの性能底上げのためのリフレッシュ程度の軽微な改修の予定だったけど、CPUをi7-9700Kに切り換えたために、結局ハイスペックを追求した構成になってしまった。総額13万円ほどで予算をかなりオーバーした。もっとも、これだけのスペックを持ったPCをBTOなどで購入しようとしたら13万円ではとても買えないので、相対的なコストパフォーマンスはいいほうだと思う。

BTOパソコン・ショップでどれだけパーツの選択肢を増やしていたとしても、自分で吟味して選ぶ自由度の高さには敵わない。もちろん、相性問題といったリスクもあるけれど、それをも楽しむのがPC自作の醍醐味というものだ。

新構成一覧
項目 メーカー 品名 仕様 備考
マザーボード ASRock Z390 Extreme4 Z390チップセット
Intel I219V GbE
Realtek ALC1220
NCT6791D
 
CPU Intel Core i7-9700K SRELT (P0)  
CPUクーラー Scythe Mugen 5 TUF SCMG-5100TUF 無限五 Rev.B
RGB LED仕様
 
メモリ G.SKILL Trident Z RGB
F4-3600C19Q-32GTZRB
DDR4-3600 UDIMM
19-20-20-40
SK Hynix C-die (18 nm)
 
グラフィックス Intel Intel UHD Graphics 630 DisplayPort×1
HDMI×1
VGA×1
 
SSD crucial BX200
CT240BX200SSD1
2.5″ 240GB SATA3 旧PCから移設
HDD1 Western Digital WD5000AAKS 500GB SATA2 7,200rpm 旧PCから移設
HDD2 HGST HDT725025VLA380 250GB SATA 3Gbps 7,200rpm 旧PCから移設
光学ドライブ LG HL-DT-ST GH24NS50 SATA
DVDスーパーマルチ
旧PCから移設
電源 HEC HEC-500TE-2WX 500W 80PLUS Standard
ATX Ver.2.3
EPS Ver.2.92
旧PCから移設
PCケース Fractal Design DEFINE R6 USB-C BKO TG    

性能

例によってLightWave2015でレンダリング時間を計測した。無限五の冷却性能に期待して、長期間電力制限を200Wに設定してコアクロックが4.6GHzで張り付くように設定してみたところ、サーマル・スロットリングも発生することなく、70℃台で完走した。

ハイパー・スレッディングはないものの、物理8コアの性能をいかんなく発揮していて、旧PCでは11分25秒かかっていたものが2分28秒で終わった。なんと、i9-9900Kを搭載したマウスのBTOパソコンの2分12秒にあと16秒まで迫る性能を示した。

LightWave 2015
CPU 総レンダリング時間 ラジオシティ時間 パフォーマンス 備考
Core i7-860 685.2秒(11分25秒) 91.2秒(1分31秒) 1.00倍 DDR3-1333
Core i9-9900K 132.4秒(2分12秒) 21.7秒 5.17倍 DDR4-2666
Core i7-9700K 148.9秒(2分28秒) 21.9秒 4.60倍 DDR4-3600

i9-9900Kは定格95Wで計測したもので、コアクロックは4.2GHzまでしか上がらなかった。マウスのBTOパソコンはCPUクーラーが非力で、コアクロックが4.7GHzになるように設定するとあっという間に90℃を超えてしまい、サーマル・スロットリングが働いてしまうので本来の性能を発揮できていないことが予想される。

BTOパソコンはパーツ交換を前提としていないので、CPUクーラーひとつ交換するにもマザーボードを取り外さなければならなかったり、分解するのは少々面倒だけど、CPUクーラーを風魔弐あたりに換装しようと心に誓った。

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