VAIO type T (VGN-TT50B) をSSD化

最終更新:2020/05/29

前回の記事ではVAIO type T (VGN-TT50B) にWindows 10がインストールできることを確認した。HDDからのOS起動の遅さも再認識した。

しばらく運用してみたけど、OSの起動の遅さだけはどうにも許容できない。

分解・換装は自分には敷居が高いように思えたので、ネットでSSD搭載のノートPCを探してみたけど、中古でも3~4万円はする。調べた限りではLenovoのThinkPadシリーズがメンテナンス性が高い構造のうえ、分解や部品交換の手順を記したサービス・マニュアルが公開されているため、メモリやストレージの増設や故障時の延命がしやすいらしい。

絶対価格としては決して高額ではないけど、3~4万円でも支払う効果や必要性が十分にあるのか悩んでしまった。要は使う場所を選ばない「可搬端末(コンソール)」が欲しいわけで、高い処理能力や何でもこなせる汎用性を求めているわけではない。

ノートPCの分解にはやや不安があるけれども、10年以上前のPCということで、もし壊してしまってもそれほど惜しくはないし、このまま放置していてもゴミになるだけのものだ。うまくいけばそれはそれで自分の苦手を克服してスキルも上がるというわけで、予算1万円でVAIO type TをSSD化することに決めた。

mSATA SSD

VAIO type Tのストレージは1.8インチのフォーム・ファクタなので、できるだけ小型の規格である必要がある。M.2 SSDでもいいんだけど、Type 2280(22×80 mm)がもっとも普及しているので、Type 2230 / 2242 / 2260といった小型のものは最新規格の割には入手性が良くなく、容量に対して割高なこともある。

そこで、mSATA規格のSSDから選ぶことにした。大きさもおよそ30×50mmと1.8インチHDDよりも十分小さい。メーカーの選択の余地はほとんどなく、メジャーなところではKingstonかTranscendしかない。Amazonの商品検索では聞いたことのないブランドの製品も見つかったけど、価格が安い代わりに性能や既存機器との相性に問題があるようで、選択肢にはなりそうになかった。

Kingstonは無難な製品を作っているという印象があったので、価格が手頃だったこともあり、当初はKingstonで考えていたけど、レビューなどを読むといまひとつ評判が良くない。

TranscendはSDRAMなどでよく聞くブランドではあるんだけど、たまたま使う機会がなかったため自分の中で実績がなく、積極的に選ぶ理由がなかった。ところが、Transcend製のmSATA SSDは非常に評判が良く、Kingstonで問題があった人がTranscendに替えてみたところ問題が解消したため、Transcendを推奨すると断言している記事もあった。

Transcend mSATA SSD 256GB SATA-III 6Gb/s DDR3キャッシュ搭載 3D TLC 採用 TS256GMSA230S
posted with AmaQuick at 2020.04.09
参考価格: ¥6,980 (2020-04-09)
トランセンドジャパン (2019-06-28)
キングストンテクノロジー SSD 240GB mSATA SATA3 3D NAND搭載 UV500 SUV500MS/240G
posted with AmaQuick at 2020.04.10
参考価格: ¥5,920 (2020-04-10)
キングストンテクノロジー (2019-06-28)

現在は後継のM.2に取って代わられてしまったため、mSATAソケットを標準搭載しているマザーボードも見かけなくなった。主な需要は修理用部品くらいしかないマイナーなジャンルの商品になってしまったのでおのずと通販になる。

Amazonから注文したところ、こんな感じのパッケージに入ったmSATA SSDが届いた。内容物が損傷しない程度の強度を持ちながらも簡易的な包装で、裏面にミシン目をつけてあって開封もしやすいように工夫されている。

TranscendのmSATA SSDのパッケージ。日本のPC関連パーツは大きすぎる樹脂製のパッケージをシールで封印したり、ホチキスのような硬い針で固定されていたりして厳重すぎるうえに開封がしにくい傾向があるので、このような工夫を施したパッケージを作っていくといいんじゃないかと思った。使い捨てのプラスチック包装は世界的に削減する方向にもあるわけだし。

mSATA – MicroSATA変換アダプタ

通常、1.8インチ・フォーム・ファクタのHDDやSSDはMicroSATA(μSATA)を採用しているため、mSATAをMicroSATAに変換する基板が必要になる。この種の変換基板は意外に需要があるため数多く出回っているけど、粗悪品が多いのも事実。

この種のパーツは主に中国製で、「Made in China」と書かれているだけで敬遠されてしまう傾向があるけど、有名ブランドのマザーボードやグラフィックス・カードなども今や中国で製造されているものがほとんどなので、ブランド品であるかノーブランド品であるかを問わず、中国製を避けるのはほぼ不可能。要は、品質管理をちゃんとやっているかどうかが重要なわけで、Amazon以外で販売されているところの情報も調べると効果的だ。

いくつかあった変換基板の中で、「NFHK」という聞いたことのないブランドが目に付いた。中国版Amazonとも言えるアリババ社のAliExpress.comで調べてみたところ、インターフェース規格を変換する製品で著名なブランドらしく、かなり手広く手掛けているようだった。

US $1.5 |MSATA ssd 1.8 インチマイクロ SATA mSATA ssd 1.8

ただ、本家では本体が1.5~2.0ドルで売られているもので、日本への配送料は5.0ドルとなっているので、Amazonでの価格の500円分くらいは送料だと考えていいようだ。

mSATA(Mini SATA)→1.8インチmicro SATA変換アダプタ
posted with AmaQuick at 2020.04.10
参考価格: ¥785 (2020-04-10)
mind pc parts

MicroSATAには5 Vの電源入力があるけど、mSATAには3.3 Vの電源入力しかない。mSATAには次の表に示すMini PCIeと共通の52ピンの端子があるけど、フルサイズのSATAでも22ピン(データ 7ピン+電源 15ピン)しか必要としないため、未接続の「NC(Not Connected)」が目立つ。

mSATA及びmini PCIe Cardのピンアサイン
Pin mSATA mini PCIe Card Pin mSATA mini PCIe Card
P1 NC WAKE# P2 +3.3V +3.3V
P3 NC Reserved P4 GND GND
P5 NC Reserved P6 NC +1.5V
P7 NC CLKREQ# P8 NC UIM_PWR
P9 GND GND P10 NC UIM_DATA
P11 NC REFCLK- P12 NC UIM_CLK
P13 NC REFCLK+ P14 NC UIM_RESET
P15 GND GND P16 NC UIM_VPP
P17 NC UIM_C8 P18 GND GND
P19 NC UIM_C4 P20 NC Reserved
P21 GND GND P22 NC PERST#
P23 SATA Differential TX+
based on SSD
PERn0 (RX-) P24 +3.3V +3.3Vaux
P25 SATA Differential TX-
based on SSD
PERp0 (RX+) P26 GND GND
P27 GND GND P28 NC +1.5V
P29 GND GND P30 NC SMB_CLK
P31 SATA Differential RX-
based on SSD
PETn0 (TX-) P32 NC SMB_DATA
P33 SATA Differential RX+
based on SSD
PETp0 (TX+) P34 GND GND
P35 GND GND P36 NC USB_D-
P37 GND Reserved P38 NC USB_D+
P39 +3.3V Reserved P40 GND GND
P41 +3.3V Reserved P42 NC LED_WWAN#
P43 GND Reserved P44 NC LED_WLAN#
P45 Vendor Reserved P46 NC LED_WPAN#
P47 Vendor Reserved P48 NC +1.5V
P49 DAS/DSS Reserved P50 GND GND
P51 Presence Detection Reserved P52 +3.3V +3.3V

このような電源仕様の相違のため、変換基板には降圧用のレギュレータが実装されている。このレギュレータが基板の表に実装されていたり、裏に実装されていたり特に決まりがない。そのうえ、商品写真では表に実装されているように見えるのに、送付されてきた変換基板には裏にレギュレータが実装されていて購入者の不評を買うことも日常茶飯事だ。レギュレータが裏に配置されていても機能上は問題ないけれど、レギュレータの高さの分だけスペースをとるため、設置場所によっては致命的な問題になる。

そのへん、NFHKは誠実なメーカーらしく、届いた変換基板は商品写真とまったく同じものが届いた。基板の端に書かれている型式番号が「N-1831V1」か「N-1831V2」となっていれば、NFHKの製品と見て間違いないようだ。もちろん、基板の印刷もすべて巧妙にコピーしている模倣品がないとも言い切れないんだけど。

基板右上に見える黒い素子が降圧用レギュレータ。mSATAのソケットやMicroSATAのコネクタがそれなりに高さのあるものなので、表側にあったほうが何かと有利。どういった理由かはわからないけど、裏面にレギュレータを設置している変換基板も多い。

次の画像は変換基板にmSATA SSDを組み付けたところ。M.2と似ていて、斜め上から押し込んでSSDのネジ穴のあるほうの端を押し、コネクタをソケットの奥まで挿入させてからネジ留めする。ネジはとても小さいので、+0か+00の細軸のドライバーがあると便利。

分解・換装

分解は基本的に、次のブログの記事を参考にすればそれほど苦労しない。

キーボードを外す時に無理なテンションがかかっているな、と感じる時はほぼ100%ネジの外し忘れが原因。外し忘れを防ぐコツとしては、ネジは分解の解説画像をよく見ながら端から順序よく数を数えつつすべて外してからキーボードを取り外すようにする。おそらく分解が初めてでも30分くらいで分解できる。

ただ、ひとつだけどうやって分解したらいいのかわかりにくかったところがあったので、記録しておく。次の写真はキーボード・ユニット(緑色の部分)を取り外して手前に裏返したところだけど、本体と切り離す方法で悩んでしまった。

青色の矢印で示した透明の板の下にあるコネクタに木製か樹脂製のヘラを差し込んでテコの原理で剥がしてやれば簡単に外れるんだけど、そんなところにコネクタがあるとは知らなかったので、キーボード・ユニット側をいじってしまった。

キーボード・ユニット側のコネクタはZIF(Zero Insertion Force)といって、ケーブルを差し込む力が必要なく、カバー(レバー)を押し下げることで固定する一種の圧着端子になっている。ただ、ちゃんとケーブルがささっているのか見た目でわかりにくいのが欠点。VAIOのZIFはフリップロック方式で、カバーを回転させるタイプのもの。挿入確認のためにケーブルを引っ張ったりしてしまうとカバーが回転軸から外れたりしてコネクタを損傷させてしまうこともあるため、非常に苦手なコネクタのひとつ。

次の画像は取り外した1.8インチHDD。HDD本体に衝撃が伝わりにくいようにラバー製のクッションが両側(画像では上下)に取り付けられていた。

取り外した1.8インチHDD。当時は小型HDDで業界最高水準の技術を持っていた東芝の製品だった。現在ではタブレットPCというジャンルが登場したことで光学ドライブが必須ではなくなったり、M.2をはじめとするSSDが一般化したこともあり、ノートPCの内部に余裕ができた。そのため、2.5インチHDDでも実用上問題なくなり、無理にHDDを小型化する必要性も薄れたため、一般用途では1.8インチHDDの出番はほぼなくなった。

効果

VAIO Type Tが発売された頃のSATA規格はSATA 2だったので、転送速度は3Gbps。SATAは8b/10bエンコードでデータをシリアル転送するため、1バイト(= 8ビット)の論理データを送るために10ビットの物理データを送る必要がある。なので、物理転送速度が3Gbpsの場合、送れる論理データの理論上の最高転送速度は300MB/sとなる。

CrystalDiskMark 7.0.0で計測してみたところ、シーケンシャル・リードで284MB/sと十分な性能を引き出せた。mSATA – MicroSATA変換アダプタも問題なく動作しているようだ。OSの起動も目に見えて速くなり、CPUやメモリが同じ物を使っているとは思えないくらいになった。

換装する前のHDDの計測を忘れてしまったので今から比較するのは難しいけど、そもそもHDDとSSDを比較する意味があるのかどうかはかなり微妙。

HDDが遅いのは単にデータの転送速度だけの問題ではなく、ファイルの先頭を頭出しする時間である平均シーク・タイムが無視できないくらいに長いからだ。それに対し、SSDはシーク・タイムをHDDの1000分の1以下のオーダー、つまりほぼ無視できるくらいに短くできることに最大のメリットがある。

5,400 rpmのHDDの場合、平均シーク・タイムは約5 msになる。5 msは1秒の200分の1なので人間にとっては十分短いけど、1.0 GHzで動作するCPUにとっては500万回のクロックを刻めるだけの時間であり、最短のマシン・サイクルを持つ命令であれば500万の命令を処理できる時間。最近は4.0GHz以上で動作するCPUも珍しくないので、CPUの尺度からするとHDDのシーク・タイムは気が遠くなるほど遅い。特にファイルへのアクセスが集中するOS起動時は絶望的な遅さになる。

何はともあれ、当初の目的であったSSD化には無事に成功したので、あと1年くらいは可搬端末として使えるだろう。その間に可搬端末の有用性はいかほどのものか判断がつくだろう。また、今の仕様では不満な点が出てくれば、その時こそ、より新しい型の高性能ノートPCを購入すべきか考える時だろう。

トラブル発生

2020年5月19日、何気なくVAIOを起動しようとしたら、Windows 10が起動しなくなった。ログイン画面のままフリーズしてしまい、キーボードやタッチパッドの操作も一切受け付けない。BIOS設定画面を呼び出すとキーボードなどはちゃんと動作するので、ハードウェアの故障の可能性は低い。

仕方ないので、Windowsをもう一度クリーンインストールしてみたら、異様にインストールが遅い。CPUがCore2 Duoだからだろうかと軽く考えて辛抱強く待ってみたけど、1時間以上かかった。初期設定も普通は失敗なんて起こりそうにないところで設定失敗が多くなり、異常なまでに時間がかかる。さすがにおかしいと思い始めた。

そこで、CrystalDiskMarkでSSDの速度を測定してみた。

遅い。異常なほど遅い。読み込みは150MB/sあるので百歩譲ってよしとしても、書き込みが0.42MB/sというのはちょっとありえない。HDDと比べても遥かに遅い。

ネットで調べてみたら、原因としては次のようなものが見つかった。どこも同じようなことしか書いてないのであまり参考にならなかった。

  1. BIOSの設定がAHCIモードではなく、IDEモードになっている。
  2. 4Kアライメントがずれている。
  3. SATA3ポートではなく、SATA2ポートに接続している。
  4. サードパーティ製のSATAコントローラに接続している。
  5. SATAケーブルの破損
  6. SSDの故障

1つ目は、そもそもBIOSにそのような設定項目がないので、自動的にAHCIモードが選ばれる。デバイス・マネージャで調べてみても、「SATA AHCI Controller」と表示されるので疑いようの余地がない。仮にIDEモードだとしてもSSDの書き込みが0.42MB/sというのはありえない。

2つ目は、パーティションの開始がSSDの読み書きの単位である4,096バイト(4KB)からずれているという問題のこと。今時のWindowsのインストーラがそんな初歩的なミスをするとは思えないし、実際調べてみたら、4Kアライメントからずれているということはなかった。

3つ目は、そもそもSATA2規格のマザーボードなのでSATA3として使えるコネクタは存在しない。SATA2規格だとしても遅すぎるレベル。

4つ目は、ノートPCなのでサードパーティ製のSATAコントローラを積む余地がないし、積む必要もない。念のため調べてみたけど、Intel製のSATAコントローラとして認識されていた。

5つ目は、可能性としてはなくはないけど、ノートPCなので交換用パーツがなく、リボン・ケーブルのため汎用品がない。修理するためには同型のVAIOのジャンク品でも購入してくるしかなく、現実的でない。

最後に残るのが6つ目のSSDの故障だけど、わざわざ新品のSSDを買い直してまでパフォーマンスを改善したいとは思わない。そもそも、実用レベルとは言いにくいノートPCの再生なので、Core2 Duoで頑張らなければならない理由も特にない。

このような低速状態だと、ちょっとしたユーティリティ・ソフトウェアやWindows Updateをインストールするにしても気が遠くなるような時間がかかるのので、実用に堪えない。

再分解・復旧

SSDが突然低速化してしまったので、ガッカリして、なかば捨て鉢になっていたけれど、凝り性な性分なので、どうにも諦めがつかない。まず、イベントビューアで何かエラーが出ていないか確認する。すると、「ソース」が「disk」の蘭に「イベントID」が「153」の警告が山ほど出ている。それこそ、毎秒から数秒に1回の割合で。これは、I/Oがうまくいかなかったのでやり直しをしているイベントらしい。これは怪しい。

ソース名とイベントIDをもとにしてネットを調べてみる。あまり期待はしていなかったけど、まぁ、大体Windowsの設定の問題とか、SSDに換装した後にレジストリをいじる必要があるとか、SSDやHDDの寿命とか、故障(初期不良)とか、どうも腑に落ちない結論ばかり。ついこの間まで280MB/sの読み込み速度が出ていた新品のSSDが急に遅くなったのだから、設定とかレジストリをいじったところでどうにかなる問題とは思えない。

いくつか記事を拾っていったら、面白い記事に行き当たった。SSDではなくてHDDの話だったけど、同時期に買った2基のHDDのうちの片方が、やはり153のイベントIDの警告を吐き続けていて、データの書き込みが一向に進まないというものだった。で、どう解決したかというと、SATAコネクタに「接点復活スプレー」なる薬剤を塗ってHDDそのものは交換せずに見事に復旧したというのだ。

これは試してみる価値がある。そのスプレーも数百円で買える一般的なものだ。潤滑剤や錆取り剤などで有名な呉工業が作っているというのだから、眉唾物ではなさそうだ。Amazonだと少し高いけど、家電量販店やホームセンターなどなら安く入手できる。

接点復活スプレーを買ってきたので、早速VAIOを再び分解してみたら…。なんと、次の画像のようにSATAコネクタが外れかかっているではないか(青い矢印のところ)。

こんな事態になっているのであれば、書き込みが異常に遅くなるのも無理はない。SATAは全二重通信で、送信(読み込み/リード)と受信(書き込み/ライト)が独立している。考えてみれば当たり前の話で、書き込みだけ極端に遅いという時点で気付くべきだった。むしろ、コネクタが斜め差しの状態になっていながら、隣のピン同士が短絡してSSDが本格的に故障するような事態にならなかったのが奇跡なくらいだ。こんな状態で、よくWindows 10をインストールできたものだ。

思った以上にMicroSATAのコネクタは嵌合が弱く、2.5インチや3.5インチのSATAコネクタと同じと思ってはいけないようだ。接点復活剤を使うまでもなく、コネクタをちゃんと嵌め、今度はSSDがPCの内部で動いてコネクタが緩まないように緩衝材を詰めるのがメインの作業に変わった。

本当はクッション・テープなどを貼って綺麗に作るのがいいんだろうけど、本体のカバーを開けてみるまでこういう事態とは思っていなかったので手持ちがない。そこで応急処置として、梱包に使われていた段ボールをドライブのケージの大きさに合わせて短冊状に切り、5枚ほど重ねてテープで巻いたものを詰めた。5枚も重ねると意外に弾力があって、即席の板バネのようなものになった。

もちろん、応急処置なので、段ボールを使うのはおすすめしない。一般的なハサミやカッターナイフで切れるため、加工が簡単で大きさを調節しやすいのが最大の長所。練習もかねてどのくらいの大きさの緩衝材を用意すればいいのかの目安にする分にはいいと思う。ノートPCの中はかなり熱くなるので、難燃性の緩衝材を使ったほうが無難だろう。紙でも、それも段ボールとなればそう簡単には燃えないんだけど、火災などの原因になっても責任は持てない。

せっかく買ってきたし、接点の防錆効果などもあるので、接点復活スプレーの薬剤も綿棒の先につけてコネクタに塗っておく。どういう理屈かはいまひとつ理解できなかったんだけど、接点復活剤は導電体ではなく、接点の汚れを落とし、人間の目には見えない微細な凹凸がある接点の面積を増やして通電できる場所を増やすというもののようだ。なので、絶縁体をまたいでコネクタのピンにべったり塗ってしまっても薬剤を通じて短絡してしまうといった問題は起こらないそうだ。

カバーを閉じ、バッテリーを接続して起動してみる。CrystalDiskMarkで計測してみると、SSD換装当初と同じくらいまでリード/ライトの速度が回復した。一度悔しい気持ちを味わっているせいか、換装に成功した時よりも、トラブルを解決できた時のほうが気分がいい。

ノートPCというのは、思った以上に過酷な環境で使われているものだということが身に沁みて理解できた。そんなに乱暴に扱ったつもりはないけど、動かして使っていると通常の運用でも内部の部品に相当な衝撃や力がかかっていると今なら想像できる。ましてや、もともと1.8インチHDDが入っていたところに設計よりも遥かに小さい物を入れて詰め物もちゃんとしなかったのだから想定外の事態は当然起こりうる。

何はともあれ、SSDは本来の性能を取り戻した。SSDが故障していないか確認するために、mSATAを9.5mm厚の2.5インチSSDサイズのSATAに変換するアダプタも買ってきたんだけど、無駄になってしまった。むしろ、こちらのほうが高くついてしまった。本当にVAIOを退役させる時にSSDを救出するのに役に立つ、かもしれない(忘れなければ)。

関連記事

参考記事

VAIO type T (VGN-TT50B) にWindows10をインストール

最終更新:2020/06/02

2008年か2009年頃に買ったWindows Vista搭載のVAIOが長い間使われずに自宅の隅でホコリを被っていた。最初は旅行先でデジタル一眼レフカメラを使って撮影した写真データをコンパクト・フラッシュから移して一時保管しておくために使っていた。当時はフラッシュ・メモリの容量は多くても数GB程度で、RAW画質で撮影するとあっという間に一杯になってしまったからだ。それでも数千枚の写真を撮りためたのだから、当時の自分のバイタリティを褒めたくなる。

懐かしいVAIO type Tの画面。Windows Vistaなので表示要素が立体的デザインで、古めかしさすら感じる。フラットデザインが主流になるのはiPhoneの登場でAppleがMicrosoftを脅かすほどの復権を果たしてからのことだ。

今ではモバイル・ノートPCは数万円程度で手に入るものになっているけど、まだ「モバイル・ノート」というコンセプト自体が目新しかったもので、当時は小型化に高い技術力を必要としたためスタンダード・ノートPCとそれほど変わらない20万円ほどもした。

CPUはCore2 Duo U9300@1.20GHzで、メモリはDDR3-800の3GBしかない。32ビット オペレーティング・システムというのも時代を感じる。

CPUは今では懐かしいCore2 Duoで、ストレージは当然HDDだった。WindowsをはじめとするソフトウェアはDVDメディアからインストールするものだったため、どんなに小さくしても幅と奥行きが12cm以上になってしまう光学ドライブも搭載しなければならず、ストレージを搭載するスペースは限られていた。SSDそのものは既に存在していたけど、「SSD」という言葉はまだなく、「HDDの代わりにフラッシュ・メモリを搭載」と言われていた。安価なTLCが登場する前のMLCタイプだったこともあり高嶺の花で、SSD搭載オプションを選ぶと価格が跳ね上がった。少しでも安くあげるにはHDDを選ぶしかなかったのだ。

ところが、一生懸命使っていたのは最初の1年間くらいなもので、Windows 7の登場でWindows Vistaが廃れてしまうとまったく使わなくなってしまった。普段使いのために購入したデスクトップPCにSSDを導入してからはHDDから起動するVAIOは動作がひどく遅く感じられるようになってしまい、一眼レフのロートル化に伴い出番も減り、これといった使い道もないままVistaのサポートも終わってしまった。

今では結局Core i9-9900Kを搭載したデスクトップPCをメインに使っているわけだけど、モニタとキーボードやマウスの場所に拘束される作業スタイルが楽ではないと感じることもある。ブログの記事を書くくらいならノートPCで楽な姿勢でやれたらいいのにな、と自堕落な考えを起こしていた。それならばいっそのこと、リモート・デスクトップを使って無線LAN経由でメインPCに接続して有り余るリソースを使えばいいのではないかと思いついた。

ところが、新品のノートPCを買おうとすると、CPUをモバイル向けCeleronまで妥協しても5~6万円はする。小さくてもフルHDの液晶モニタを搭載していて、最新アーキテクチャのCPU、DDR4メモリ、システム用SSD、IEEE 802.11acクラスの無線LAN、Bluetooth 5など必要なものはひととおり揃っているので当然といえば当然の話。数年前の型落ちCore i5を搭載しているスタンダード・ノートPCの中古品を買ったほうが安いくらい。

そこで、Core2 Duoでも画面表示出力とキーボードやマウス入力のデータをやりとりするだけのリモート・デスクトップくらいなら動かせるんじゃないかと考えて、再び候補にのぼってきたのがVistaのまま放置されていたVAIOというわけだ。

調べてみると、古いVAIOのストレージをSSDに換装したりしながら大事に使っている人が結構いる。当時としては先進的だったアイソレーション・キーボードを採用していたり、妙な空白地帯を作ってしまって野暮ったくなりがちだった内蔵バッテリーセルを独特な曲面筐体の一部に組み込んでいたりなど、今見ても古さを感じないほどデザインは優れている。iPhoneをはじめとするスマートフォンのおかげで今では当たり前になったBluetooth接続のワイヤレス・マウスを標準装備しているなど未来を先取りしていた。当時はPCの周辺機器は有線接続が当たり前だったので、「Bluetoothのような近距離無線通信なんて一体何のために存在するの?」という感覚だったのだ。

VAIOには時代を超えて愛される要素は確かにたくさんある。今のモバイル・ノートが価格や重量を抑えるために金属の部品を使わなくなっているのに対し、ヒンジなど最も負荷がかかる部分にはケチらずに金属部品を使っていて単純に丈夫だという理由もあるだろう。使用頻度は低かったとはいえ、10年前のPCがまだどこも故障していないのだ。

パソコンの修理や近代化改修を請け負う仕事をしている人のブログを読むと、VAIO type TにもWindows 10がインストールできると書かれている。

VAIOノート VGN-TT50Bにwindows10をインストール 不明なドライバー情報 – パソコンりかばり堂本舗

これは面白い。10年以上前のモバイル・ノート黎明期のノートPCが最新OSをインストールできてちゃんと動作するというのだ。そんなに古いCPUでさえサポートしているMicrosoftがすごいのか、拡張命令を追加しながらも64ビット命令セットがちゃんと動く設計を頑なに守り続けてきたIntelが偉いのか、どっちかはわからないけど、とにかく古くても64ビット命令セットを処理できるCPUならばWindows 10は動くのだ。

Windows Vistaをバックアップする

Windows Vistaの頃にはパソコンを買ってもリカバリ・メディアが付属してこなくなった。付属していた製品もあったかもしれないけど、少なくともVAIO type Tには付属してこなかった。Windows 10を試すこと自体は無償でできるけど、色々不都合がわかってシステムをWindows Vistaに戻したいとなると話がややこしくなってくる。何せサポートの終了したOSなので、Vistaのメディアを入手する正規の手段はもうない。仮にあったとしても今更Vistaに投資はしたくない。

面倒ではあるけど、他に手段もないので、はやる気持ちを抑えつつ、VAIOにインストールされているVistaのリカバリ・メディアを作成する。本当は購入してすぐ作成するものなんだけど、10年以上を経て初めてリカバリ・メディアを作成することになった。

リカバリ・メディアを作成するためのソフトウェアはプリインストールされており、手順は非常に簡単。画面の指示に従ってブランクDVD-Rを入れていくだけ。

リカバリ・メディアがなんたるかを説明する文章。恥ずかしながら、10年以上経って初めて目にした。おそらく、もう目にすることはないと思うので、スクリーンショットを撮っておく。

Windows Vistaの時代でも、リカバリ・メディアの作成にはDVD-R(1層)が2枚必要になる。光ディスクによるソフトウェアの販売にはもう限界が見えてきた頃だったのだ。

最初は念のためベリファイを指示しておいたけど、ベリファイに失敗してDVD-Rを1枚無駄にしたので、2回目はベリファイを指示しなかった。リカバリ・メディアは念のため作成しているだけであって、Windows 10へのアップグレードが失敗したら、このVAIOももう日の目を見ることはないので最悪のケースの保険でしかない。

Windows 10をインストールする

Windows 10のインストール・メディアを用意する

VAIO以外のインターネットに接続できるPCでWindows 10のインストール・メディアを用意する。この種の手引きはネットに溢れているので今更説明するまでもないだろうけど、VAIO type Tにインストールする場合限定で記録を残しておく。

言わずと知れたWindows 10のダウンロード・ページ。

https://www.microsoft.com/ja-jp/software-download/windows10

ここでMediaCreationTool1909.exeをダウンロードする。実行するとどのPCにWindows 10をインストールしたいか選ぶことになる。今回はVAIOにインストールしたいので、「別のPCのインストール・メディアを作成する」を選ぶ。

くどいようだけど、Core2 Duoは64ビットCPUなので、Windows 10は64ビット版を選択する。32ビット版を選んでしまうとメモリが4GBまでに制限されてしまうので、後のメモリ増設のためにも64ビット版を選んでおくのには意義がある。

インストール・メディアを作成する媒体を選ぶ。ここでちょっと迷うかもしれない。新しいPCならUSBメモリからインストーラをブートできることはよく知られているけど、10年以上前のPCとなるとちょっと微妙になってくる。PCのBIOSがUSBにネイティブに対応しているかどうかにかかっているからだ。OSが起動してからUSB汎用ドライバを読み込んでいるようでは間に合わない。

USBブートができないPCの場合、DVDを選ぶしかないけど、DVD-Rがもったいないし、USBブートができれば越したことはないので、まずはUSBメモリでチャレンジ。

使用可能なUSBメモリの一覧が表示される。ストレージの配置の都合でEドライブになっているけど、メディア・クリエイション・ツールが使用可能であると判断しているのであればドライブ・レターは何でも良い。ただし、複数のUSBメモリを同時に使っている場合、間違ってデータを消したくないUSBメモリを選んでしまうとすべてのデータが消えてしまうので、不要なUSBメモリは外しておくか、間違えないようなわかりやすいボリューム名をつけておく。

VAIOをいったんシャットダウンし、できあがったインストール・メディアをVAIOのUSB端子に挿入して電源を入れる。VAIOのロゴが表示されているうちに「F2」キーを押してBIOS設定画面を呼び出す。

非常にシンプルな設定画面なので、設定項目は必要最低限しかない。当然ながら、近年のマザーボードのようなオーバークロック関連の項目などは一切ない。

「Boot」メニューの「Boot Configuration」を変更する。「External Device Boot」を「Enabled」に変更し、「Boot Priority」にカーソルを移動させてブートの優先順位を変更する。「External Device」にカーソルを合わせ、「F5」キーを押して最優先(一番上)に移動する。「Exit」タブを選択し、「Exit Setup」で変更した設定を保存し、再起動する。

BIOS設定の変更がうまくいっていれば、USBメモリからブートされ、Windows 10のセットアップが開始される。あとは画面の指示に従って進めていくだけだけど、今までVistaが入っていたパーティションを一度解放しないとインストールできないので、ここでVistaと別れを告げる。

実はVistaのリカバリ領域がHDDの一部に残っているんだけど、消してしまってもいいし、残しておいてもいい。リカバリ領域を削除することは後でもできるので、HDDの容量が逼迫していないのであれば、とりあえず残しておくことをおすすめする。

動作確認

Windows 10のインストール中の画面は省略するけど、VAIO type Tに無事にWindows 10をインストールできた。UIがモダンになるだけで、CPUがCore2 Duoであることを忘れてしまうくらい普通に動いている。

ドライバ不明のデバイス問題

正常に入力デバイスの操作に反応しているし、画面も正常に表示されているので、ぱっと見でも、CPUは期待どおりに動いているし、チップセット内蔵グラフィックのドライバは正しくインストールされている。タッチパッド、キーボード、無線LAN、Bluetooth、HDD、光学ドライブ等、必要最低限のドライバは正常に適用されている。

他の記事を読んで予想できていたことではあるけれど、デバイス・マネージャを起動すると、いくつかのデバイスで正常にドライバがあたっていないことがわかる。

VAIOに実装されているハードウェアには64ビット版OS用のドライバが非公式に用意されていて、SONYのサポート・サイトからダウンロードできる。

32ビットOSから64ビットOSへの本格移行が始まりかけていた時期だったのでこういったドライバを用意しているのだろう。でも、とっくに生産も修理対応も終息してしまっている製品のドライバをいまだに配布し続けているということは、Vistaがとっくに廃れた10年以上先の2020年現在もVAIOを使い続けて欲しいとSONYが願っていたと考えることもできる。もしそうならば、SONYのVAIOへの思いやりの深さには頭が下がる。

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Sony Firmware Extension Parser Device

デバイス・マネージャではACPI¥SNY5001で始まる「不明なデバイス」となっているのはSony Firmware Extension Parser Deviceというものらしい。具体的に何をするものなのかは不明。

Memory Card Reader/Writer (Ricoh(MS))

PCI¥VEN_1180&DEV_0592&SUBSYS_9047104D&REV_11で始まる「基本システムデバイス」というデバイスは、SONYが独自規格路線を邁進していた頃の代表的デバイスだったメモリー・スティック(MS)用リーダー/ライター。

SONYはまだメモリー・スティック規格の製品を販売しているけれど、SDカード等のメモリ・カードに比べると大容量化は進んでおらず、主要な規格とは言い難くなってしまった。Windows 10の標準ドライバも現在では用意されていない。

1seg Tuner (Sony)

USB¥VID_054C&PID_0279¥5で始まる「CXD9192 Controller」というデバイスは、地上波デジタル放送のいわゆるワンセグ用チューナー。日本語の地上波デジタル放送は日本ローカルなので、Microsoftが標準ドライバを用意していないのも当然だろう。

Memory Card Reader/Writer (Ricoh(SD))

PCI¥VEN_1180&DEV_0822&SUBSYS_9047104D&REV_21で始まるデバイスは、「SDA標準準拠SDカード・ホスト・コントローラー」ということになっているけど、上のメモリー・スティック・リーダー/ライターのすぐ隣りに実装されているSDカード・リーダー。SDカード・リーダーであることは認識できているようだけど、Windows標準ドライバでは正常に動作しないようだ。

Windows 10のバージョンやVAIOの構成によっては警告が表示されない(標準ドライバでなんとかなる)こともあるけど、メモリー・スティック・リーダー/ライターのドライバをあてると警告が表示されるようになることもある。

Alps Pointing-device for VAIO

キーボード・ユニットに実装されているタッチパッド式ポインティング・デバイスは、Windows 10をインストールすると汎用PS/2ポインティング・デバイスとして自動的にドライバが設定されるけど、タッチパッドの右端や下端をなぞるとウィンドウを上下及び左右にスクロールできる機能はなくなってしまう。

デバイス・マネージャでポインティング・デバイスのデバイス番号を調べてみるとACPI¥SNY9001だと判った。それで検索して調べてみると、Alpsのポインティング・デバイスだと判ったので、「EP0000155342 : Pointing(Alps)」のドライバを解凍してインストールするとタッチパッドのスクロール機能を使えるようになる。リストにはVGN-TT50Bはないけど、問題なく動作する。

VAIO type TのWindows 10化の効果

ひとまずVAIO type TをWindows 10にすることには成功した。リモート・デスクトップによるメインPCへの接続も成功した。リモート・デスクトップを起動できてしまえば、VAIOにかかる負荷は高くなく、メインPCの高い処理能力とM.2 PCIe NVMe SSDからのアプリケーション高速起動、大容量HDDやNASなどの保存資源を存分に使うことができる。VAIOの処理能力が最新型クラスに上がったのではないかと錯覚してしまうくらいだ。

ただ、問題点がまったくないわけでもない。初回起動はHDDからWindows 10を起動しなければならないため、電源投入から起動までは相当待たされることになる。起動に時間がかかると起動する気が起こらなくなるため、結構致命的。

ある程度予想はしていたことだけど、タブレットPCが市民権を得ている現在ではHDDからのOS起動が現実的でなくなっているということを改めて痛感する。それでも、Vistaより起動が遅いとは感じにくいのは64ビットOSだからだろう。

有利なこと

  • Core2 Duoは64ビット命令セットを処理できるので64ビット版Windowsを使える。
  • 64ビットOSが使えれば、CPUが非力でもそこそこ使えるものにできる。
  • Windows PC同士なら標準機能のリモート・デスクトップが使える。
  • 画面解像度がメインPCと異なっていても自動的に縮小して再配置するため、Chromeリモートデスクトップのように画面がスクロールしてしまって煩わしいということがない。
  • リモート・デスクトップを使っている限りアプリケーションのインストールが不要。
  • アプリケーションのライセンスも不要なため、経済的。
  • 特別な環境を構築する必要がないためシステム・バックアップが不要で、ストレージが故障しても気軽にクリーン・インストールして元に戻せる。

不利なこと

  • 画面の大きさが11.1インチで解像度がWXGA(1,366×768)に制限されるため、作業領域が広くないのはいかんともしがたい。
  • マルチ・ディスプレイ環境を構築するのは「動かせる」というノートPCの根本的利益を減じてしまうため、サブ・ディスプレイに表示した情報を参照しながら操作するクリエイティブ作業には不向き。
  • HDDのアクセスの遅さは致命的で、iPadのように気軽に起動できない。
  • HDDが遅いため、VAIOに何らかのアプリケーションをインストールするのも得策ではない。

SSD化は要検討

快適に使用するにはSSDへの換装がほぼ必須になったわけだけど、いくつか検討しなければならない事項がある。

1.8インチ・フォーム・ファクタ

VAIO type Tのストレージは1.8インチのフォーム・ファクタで、今では珍しくなってしまった。接続方式も3.5インチや2.5インチのストレージのSATAよりもひとまわり小さいMicroSATAを使用していて、これまた現在ではほぼ廃れてしまった。

1.8インチSSDの入手自体が現在極めて困難で、売っていたとしても、ほぼ希少価値だけで性能や容量に見合わない価格がつけられている。現実的な方法としては、まだかろうじてまともな価格で販売されているmSATA(MiniSATA)接続のSSDをMicroSATA接続に変換する基板を使って換装する。

1.8インチのフォーム・ファクタのネジ位置には合わせられないので、クッション・テープなどを詰めて隙間を埋めてやることになる。段ボールを詰めているという強者もいて、入手や加工の容易さや、ある程度の弾力もあるという意味では悪くない発想だ。

SATA SSDなので発熱は高くないと予想されるし、常温で使用する限り、詰め物が溶けたり発火したりすることはないとは思うけど、ノートPCの中で発熱するのはSSDだけではない。難燃性の材料を使った詰め物を使うのが無難だし、目を離す時は必ず電源を切り離しておくなど発熱・発火対策をしておく必要があるだろう。

要分解

問題は、外部からストレージにアクセスするのが不可能で、本体を一度分解しなければならないということ。ネジを外してカバーを取り外せばいいというくらいならやってみてもいいんだけど、ことはそう簡単ではない。強度が心配なくらい極めて薄いリボン・ケーブルで接続されたキーボード等の入出力装置を切り離したり、同様のリボン・ケーブルで接続されたストレージを取り外したりしなければならない。

中古の古いVAIOを手に入れてきては分解し、その進化の過程を観察するのが趣味な人も世の中にはいて、詳細な解説記事を書いてくれているんだけど、真似できるような気がしない。

金属の端子が極力露出しないように作られているケーブルで接続するデスクトップPCなんて比べものにならないほど繊細な作業が要求される。デスクトップ用マザーボードのピンヘッダで一般的な2.54mmピッチなんてノートPCの世界からすればザルのような粗さだ。

金属部品を使って重くなってしまった分は樹脂カバーのツメを固定する方法を工夫したり、長さの異なるネジを複数種類使用したりすることで剛性を維持している。PC用のネジなんて大体共通なのに、複数のネジを使い分けるというのは組み立て作業者にとっては負担でしかない。奥まで入りきらないネジがあったり、ネジの長さが足りずに空転してしまったりといった組み立て不良が起こりやすくなるからだ。

でも、SONYは結構こういうことを平気でやる。PlayStation3の分解解説のページを見たことがあるけど、分解手順が複雑すぎてはっきり言って正気の沙汰ではない。それに比べればVAIOの分解の難易度は易しいほうなのかもしれない。

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